イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ミギとダリ:第5話『ミジンコの歌』感想

 遂に開いた過去への扉は、果てしない闇へと繋がっていた。
 街中に伸びる監視の目、謎めいた秘密と狂った日常。
 一条家に踏み込んだミギとダリがみっちゃんをツレに、本格サスペンスに踏み込んでいく第5話である。

 いやー、”おべべのポッチ”とか赤ちゃん教育とか、笑える絵面はいつも通りなんだが、ガポッと蓋を開けた一条家の闇があんまりにも深すぎて、作品全体がシリアスな深みにドボンとハマり込んだ感じがある。
 ここまではまだ半笑いというか、双子が追いかけるおぞましい過去が本当か嘘か分かりきらない手応えだったが、息子も母も激ヤバな一条家の内情が描かれることで、一気にマジな方角に舵を切った。
 ダリの苦境を救ってくれるように思えたみっちゃんも、明らかヤバい感じで退場し、なかなかに洒落にならない状況が加速してきているが……さてはてどうなるか。
 双子が謎を追う鍵だった『ミジンコ柄の壁』が見つかって、逆に危機と謎が深くなっているのが、なかなかサイコサスペンスとして上手い話運びである。

 

 というわけで、ココまではトンチキな入れ替え策略が毎回うまく行って、復讐のヒントを二人で掴み取ってきたミギダリちゃん。
 しかしおりこう作戦で食らいついた一条家は、不気味な双子よりも策略に長け、ヤバさも尋常ではない。
 ここまでのお話でミギダリちゃんは復讐に呪われつつもお互い支え合い、愛に飢え情に篤い部分も持っている、人間らしい子どもなのだと描かれてきた。
 しかし笑顔の仮面を貼り付けて、明らかに異常な家庭内事情を他人に明かさない一条家の人々には、そういう親しみやすさがない。
 少年を罠にはめて半裸に剥いた挙げ句監禁し、イカれたバブバブ教育ぶっ込んでくる裏にどんな狂気が、どんな事情があるのか見えない濁りが、これまでとは少し違った手応えを教えてくる。

 ここまでミギダリちゃんのスタイリッシュ入れ替わりは、笑いの剛腕で困難をぶっ飛ばす万能の切り札だったわけだが、今回は通用しない。
 秘密は暴かれないまでもなんとか片割れが苦境を脱する程度で、神通力が薄れた感じがある。
 同時に異様な状況に引き裂かれたことで双子の人間味がググッと前に出てきた感じもあり、ミジンコ迷路に刻まれた母の筆跡に、身も世もなく泣きじゃくるミギちゃんの痛ましさには、思わず俺ももらい泣きしてしまった……。
 母の復讐を果たし真実に至るために、色々押し殺して怪童を演じてきたミギちゃんだけども、根本にあるのは母恋しさであり、愛すればこそ理不尽に奪われた痛みを忘れず、兄と二人必死に戦ってもこれた。
 しかしずっと探し求めていた愛の証が、幻ではなかったと目の当たりにすれば仮面は剥がれ、奪われた母の愛を求め孤独に苦しむ少年の素顔が、切なく迫ってくる。
 ミギちゃんの泣き声が悲痛であるほど、それにバブバブ哺乳瓶咥えさせて、赤子教育ぶっ込んでくる一条母のイカれ加減も際立つわけで、一つの謎が解けてより深い闇が口を開けた感じがある。

 

 そんな弟と離れ離れ、頭脳派ダリちゃんは一条家の秘密を探ったり、思わぬ助っ人とタッグを組んだり、少年探偵として大忙し。
 ここまではトンチキな空振りが目立ったが、おりこうさん作戦を鍵に飛び込んだ一条家はドンピシャ過去に繋がる謎があり、母と一条家の繋がりを確認したり、ドールハウスで村を監視している狂気を目の当たりにしたり、物語が一段階先へ進んだ手応えがあった。
 名犬フェデリテとの微笑ましい触れ合いとか、みっちゃんとのいい感じの凸凹コンビっぷりなど、冷徹に思えたダリちゃんも暖かな部分があるのだと思える演出も多かったが、とにかく状況がヤバくて、あんまホッコリしている場合でもない。
 不気味人形の壊れた絵面と、みっちゃんの顛末がまーったく洒落になっていなくて、一見平和に思える村と家に秘められた、狂気と惨劇がガチなんだと理解らせてくる。

 母が一条家の家政婦であったというのなら、なぜ双子は異様な状況で育成されてきたのか?
 八年前失われたボタンを、ずっと探し求めていた瑛二は母の死といかなる関わりがあるのか?
 つーかミギちゃんバブバブさせておいて『早く瑛二にな~れ』って、一条母はどういう壊れ方しておるのか?
 ここにたどり着きさえすれば真相がわかるのだと、双子も視聴者も一つのゴールと思い込んでいたミジンコ柄の壁にたどり着いて、謎は一気に膨らみヤバさは増した。
 『二人で一人』の異常な生き方を武器に、母を奪った怪事件に挑まんとする少年たちが対峙していたものが、想像以上の怪物だったと分かったわけだが、さてここから話がどう転がっていくか。
 地獄に仏サスペンスにオバちゃん、みっちゃん登場で一瞬ホッと一息つかせて、彼女がいなくなることで激ヤバ感が増して次回に続くのは、なかなかいい感じのヒキであろう。

 

 というわけで、序盤を牽引してきた一つの謎が暴かれ、さらなる無明が大きく広がる回でした。
 シュールギャグとファミリードラマとサイコサスペンスを複雑に混ぜた、なんともいい難い味わいが魅力のアニメですが、一条家の謎めいた闇に踏み込むことで、狂気と謎に挑む物語という側面が強くなってきました。
 しかしここまで描かれた真顔のトンチキも、復讐者の仮面を被りつつフツーの子どもなミギダリちゃんの未来も、めっちゃ面白かった視聴者としては、これからも大事にして欲しい。 なかなか洒落にならない状況の中で、どんだけボケてどんだけマジなのか、精妙なさじ加減とバランスでこの後のお話を描いてくれるか、楽しみにもなってきます。

 監禁や詐術、人死なんかがポンポン出てくる闇の深さだけが、作品の”本当”だってしてしまうと、せっかく作り上げた絶妙なバランス、独自の奥行きがのっぺりまとまってしまう感じもあって、この衝撃の展開にもう一捻り、笑える暖かさで横殴りキメて欲しい気持ちがあります。
 全く笑えない復讐を背負い、それでも思わず笑っちゃう人間味、愛を求め不器用にもがく様子を見ていると、僕らが思わず笑っちゃったそれが”嘘”ってことにまとまっちゃうと、やっぱり寂しい。
 笑いあり狂気あり、半裸あり監禁ありの愉快で恐ろしい狂騒から、一体何が飛び出してくるのか。
 少なくとも兄弟の絆と母の愛、どんなにイカレてても……イカレてるほど笑えてしまう人生の不思議さは、嘘じゃない……はずだ。
 ここからどんな物語が描かれるのか、次回も大変楽しみですね!