イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルマスター ミリオンライブ!:第4話までの感想

 2023アイマスアニメ第二弾が、まさかまさかのニチアサ着弾。
 一体どうなることかとおっかなびっくり様子を見ていたが……大変面白いので感想を書く。
 当方基本アニメでアイマスコンテンツと触れ合い民、なのでミリオンはデレムビくらいしか接点がない人間であります。

 話としてはアイドルスポ根の超王道、何でも出来るがゆえに何者でもない少女が”アイドル”と出会ってしまい、運命の仲間たち(総数50人超!)と輝く未来へレディーゴー! という塩梅。
 名前通り”未来”へ真っ直ぐ突き進むピンク、ドン曇りしまくる現実主義者の蒼、どっか気楽な感じの天才黄色と、アイマスおなじみの信号機ユニットを真ん中に据えて、どンチャかにぎやかな感じに生真面目な芯を添えて、四話まで転がっていった。
 主人公たる未来がスタンダードかつ力強いキャラで、第2話で静香の背中を押した天性の光とアイドル性、第4話で掘り下げられたそればっかりではない陰りと願いと、明暗のバランスが良く人間味がある、物語のダイナモである。
 彼女の溢れる元気が作品全体に行き渡って、能天気でハチャメチャな雰囲気が前向きに漂っているのは、このアニメのとても良いところだと思う。
 同時に多人数を限られた時間の中で捌いていく表現の上手さ、各アイドルのキャラクターと関係性を仕草の中ねじ込んでくる力強さもあって、ただただライトでポップなだけとも少し違う。
 白組の練り上げられた表現力が細やかな表現に対応し、見せ場であるライブシーンのみならず、日常的な芝居と表情の冴えが、上手く記号の奥にある人間味をキャラから引っ張り出していると感じた。

 オーディション合格、劇場お披露目、ミリオンスターズ始動! と、太めの芯をしっかり入れて話を先に進ませつつ、細かいキャラいじりが上手くてチャーミングなのは、とっても良いと思う。
 時間の”端っこ”を使うのが上手い……というか、大人数を切り取る小さなチャンスで『この人はこういう人で、この女たちはこういうくっつき方してます!』とメッセージを入れ込む手腕が、なかなかに鋭い。
 子どもチームの元気な様子(最高)を、ちょっと離れた所で穏やかに見守っている木下ひなたお姉さんとか、ムビマスの経験値でちょっとだけ仲間より先にいってて、関係性も人格も豊かになってる感じのかなしほとか、色々描かれていた。
 映画でキレ散らかしていた人間関係毒ガス発生装置が、生来のトガリはそのまんまちょっと落ち着いて周囲を見渡し助言する立場になってるの、”文脈”活かしてると思った。
 細かい描画なので見落とすときは見落とすのだが、識閾下にガチッと入り込む描き方しているので、なんとなーく『こういう子』ってのは伝わる。
 スポットライトが当たった時するりとキャラが入ってくるのは、ここらへんが上手いからかなと思ったりもする。
 あとまぁ、やや古めの濃い口萌え記号を上手く扱って、ちゃんと可愛く思えるように丁寧に描いているところも良い。
 俺はアニメ美少女が、アニメ美少女っぽい仕草でワイワイやってるのを見るのが好きだから……。

 ”アイドル”と出会ったばかりの三人を軸に展開する話だが、彼女たちの先輩であり同志にもなるミリオンスターズの魅せ方が全体的に良く、短い尺で濃厚なメッセージを上手く作れている。
 例えば第3話における百合子の重責と空回り、トンチキ姫様と思っていたまつりがそこを見事に受け止めさり気なく道を示すところとか、サブプロットを最大活用して『このトンチキ劇場はねぇ……萌えマネキンが空っぽなファンサをやるだけの場所じゃないんですよ!』と、上手く吠えていた。
 これは業界に長くいればこそプロ意識が高く、メンバーで唯一”公演”の意味を真摯に受け止めている桃子が、第4話で悪役になりかけた所で瑞希が戯けた仕草で優しく、強く寄り添う場面にも感じた。
 そこに主役は介在しないのだが、しかし確かに仲間の絆があり、それに縛られればこその失敗と、過ちを乗り越えてもっと強くなれる可能性がある。
 とにかく人数が多いのでどうなることかと身構えていたが、こういう形で横幅広く、人間だからこそ助け合い進んでいく手応えを書く手際があるなら、まぁまぁいい感じなのではないか、と思えた。
 茜ちゃんとか、とにかく動きだけで異様な存在感を発揮し、あっという間に脳髄に潜り込んでくるキャラも居るけどね……。
 ああいうパワー勝負も、テクニカルに絡みで魅せる手管も、色々出来るのが人数を負担ではなく、強みに出来てる足場かなー、と感じた。

 

 主題である”アイドル”の魅力に関しては、もはやレジェントとなった765オールスターズの貫禄の出し方が良く、未来が夢と出会う第1話ステージの描き方にも、キラキラした説得力があった。
 立派になったもんだ……あのおバカドンガラピンクが……。
 家庭環境も良好(お父さんが可愛い)な未来のミライは順風満帆に思えるが、隣り合う静香の家庭事情は先代”蒼”から引き続き劣悪で、重たい鎖に縛られながらそれでも憧れ続けた”アイドル”に、必死に手を伸ばす様子が思わず応援したくなる。
 この牽引力が”アイドル”のアイドルたる理由なので、少女たちがアイドル見習いになるまでの2話がすごくいい仕上がりだったのは、作品全体に説得力を与えていたと思う。
 プレッシャーに押しつぶされ、未来に進めないと諦めかけていた背中を、力強く押してくれる仲間の存在。
 オーディションでの静香の描き方は彼女個人の奮戦だけでなく、未来と翼が持っているアイドル・ポテンシャルの高さを雄弁に描いていて、三人が生み出すアンサンブル(主役として、作品を支えるもの)を信じたくもなった。
 アイドルをアニメの中で描くときには、存在し得ない身体性をどう出すかが大事だと個人的には思っているのだが、音響と演者が最高のハーモニーを奏でたかすれ声からの奮起は、そういうモノを見事に活写していた。
 既にぶっとい絆で結ばれたピンクと蒼に、小悪魔キュートな黄色い天才児が上手く映えて、主役ユニットの三角形がいいバランスなんだとこの段階で解るのは大変いい。
 翼はこしゃまっくれたおませ感と、それを空回りさせない天才っぷり、第4話でマイクのスイッチ入れた周辺視野と、”バランス取りの三人目”で終わらない存在感を既に魅せてるのがスゲー好き。

 その結果イマジナリー空間がドガンと炸裂し、あきらか広すぎる舞台に輝く仲間たちが踊りだすのは、『まぁニチアサだしな! こんぐらいのアクセルベタ踏みで行こう!』と、作品のリアリティラインを提示された感じもあってありがたかった。
 OK大体わかった、ってなったねあの時。
 食い慣れた飯だ……。

 いきなり超人数のデカプロジェクトを任されたPちゃんが、異常固有結界展開にビビる隣で、ワンダーモモから”アイドル”に向き合ってる社長が『君も見たのか……』とか言い出すのは、不思議な面白さあったな。
 第4話でワイワイ祭りの機運が高まる中、不安定な状況を見事に具体化したロコアートがぶっ飛ばされて、未来ちゃんの気持ちをちゃんと受け止める場面とか、ミリアニPは状況が転がるに任せる部分と、大人として仕事仲間として〆る部分のバランスがいい感じがした。
 才能と可能性にあふれる未来ちゃんだって、ようやくであった夢に浮かれる中学生でしかねーんだから、そういう不安定で柔らかな部分にちゃんと寄り添って、手綱を握りつつも願いを殺しはしないあの真摯な向き合い方、俺は好きだな。
 とにかく問題児が多くて落ち着きのない現場だってのは、第4話のハチャメチャ加減からも見て取れたので、責任者であるPちゃんは色々大変だと思うが、あんま無茶な都合を押し付けすぎず、時折カッコいいパーフェクトコミュニケーションもキメて、いい感じにみんなを導いてあげて欲しい。
 あそこで桃子が『お兄ちゃんが悪いんだからね!』じゃなく『お兄ちゃんが悪いってことになっちゃうんだからね!』ってなるの、桃子自身は”悪役”を作って憂さ晴らししたいわけじゃない、むしろそういう歪みから仲間を守りたい気持ちが出てて好き。

 

 というわけで先行放送映画第一弾と同じく、第4話まで見たミリアニ感想でした。
 人数もキャラの濃さもモリモリながら、それを上手く制御し楽しい強さに変えていってる筆先が、なかなか元気で楽しいです。
 ”アイドル”に向き合う時生まれる重たい雰囲気も、それを乗り越えて前に進んでいく力強さも、傑作回である第2話が見事に教えてくれていて、ただただ賑やかなだけでは終わらない骨の太さに、期待も高まります。
 まー主役である未来ちゃんが、可愛くて眩しくてパワフルな、主役力がとにかく高い主役なので、色々安心できるわね。
 こっから先どんな物語が展開されるか、次回もとっても楽しみです!