イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

豚のレバーは加熱しろ:第6話『想いは素直に叫ぶべし』感想

 ツンデレ戦士を共に連れ、進む旅路と深まる謎。
 なぜなぜ坊やと化した豚さんの質問が、異世界の常識と衝突を始める豚レバアニメ第6話である。
 ノットさんのプライドと意地を上手くひっかける形で仲間に引き込み、危険極まりない旅に進みだした豚とジェス。
 心模様が時折すれ違いつつ、歩を進めるほどに異世界の謎はどんどん深くなって……というエピソードである。
 ノットさんの過去が夢枕に描かれ、彼がジェスを守り得なかった主人公のシャドウである事が解ったり、誠実であろうとするあまり豚さんがジェスとの関係を互いの本意とは違う所に引っ張っていったり、謎の提示以外にも色々起きる回だった。
 豚がジェスに命を救われた状況と、イースが幼いノットさんを癒やした過去がしっかり重なってて、豚がジェスを王都に送り届ける旅は、ノットさんにとっては過去のリベンジになんだなー、って感じ。

 自称どおり恋愛経験値が少ない豚さんは、異邦人でありケダモノでもある自分の今を鑑みて、心を押し殺し誠実な騎士として心優しい兄として、ジェスを守り通す距離感を選ぶ。
 それは未だ夢にうなされるノットさんの後悔とも交錯する、イェスマにも読めない本音を押し殺した生き方だ。
 時折欲望まみれの豚シャウトをあげはするが、なんだかんだこのお話の主役はストイックな男なので、そんな選択も分からいではないが……既にノットさんとイースの簡勁が死別で終わって、癒せない傷がノットさんに刻まれているところを見ると、色々素直になったほうが良いんじゃ……と思わされる。
 サブタイトルはツンツン尖った態度を維持して本心を見せないノットさんと、恋心を押し殺し騎士であろうとする豚の、両方にかかってる言葉なのだろう。

 

 そんな騎士たちが想いを捧げるイェスマには、色々理不尽で不自然なことが多い。
 古代に起こった魔術師戦争、不透明な魔術師絶滅政策、イェスマに不都合な慣習を維持する謎めいた王家、明らかに厳しすぎるイェスマ関連法。
 この世界で生きて死んできた人々には、もはや当たり前になってしまっているものが、異邦人である豚には預かり知らぬ未知であり、問いただすべき理不尽でもある。
 異世界ミステリとしての色も濃いこのお話、今回あぶり出された疑問点は多分世界設定の深い所に刺さってて、今後旅を続ける中で色々解ってくるのだろう。

 長い旅をするのに乗り物NG、保護しないのに姦淫はNG、死体は利用価値が極めて高い。
 王家がブラックボックスになって維持しているイェスマ政策は、明らかに彼女たちをぶっ殺す方向に傾斜をかけている。
 その出生と育成が王都という不透明な箱の中、奴隷種族として管理された形で行われていること。
 毎年生産され出荷されているのに、女のイェスマしかいない現状は生殖の自然な結果と反していること。
 色んな要素をつなぎ合わせると、イェスマ狩りという民間暴力を野放しにすることで、イェスマの人口調整をやってる感じがある。

 作って殺させて王都に呼んで帰さない、明らかに不自然なイェスマ習俗が人口調整を目的としてるとして、なんのためにイェスマの数を絞りたいのかって疑問は解けない。
 ここら辺は完全に歴史の闇に閉ざされている、皆殺しの魔術師戦争とか変わってそうな匂いだが……まだまだ全然分からねぇな。
 かなり強権的で不自然な政策を浸透させつつ、顔が見えない王家もプンプン臭うし、『都合が良すぎる奴隷種族がなんで生まれ、なんで殺されてるか』つう問いかけは、時間をかけて解いていくことになりそうだ。
 読心能力と残留魔力は、イェスマが魔法に親しい存在であることを示しているが、歴史の表舞台から消された魔術師がイェスマに形を変え、王家に管理されてると仮定すると、まぁまぁ筋道は立つか……。
 まぁここら辺は今後明かされる情報でいくらでもひっくり返るので、仮の推理として置いておこう。
 王都に付いちゃうと旅≒物語の大目的達成しちゃって話が終わるし、世界の真実が明かされるならそのタイミングしかないとは思うので、アニメが旅の終わりまで書いてくれるのを祈る感じね。

 

 イェスマを巡る謎は今後の旅路を見守るとして、話の最後にジェスが受信したSOSが、それを引っ張っていきそうだ。
 イース早見沙織、ブレースが能登麻美子と、イェスマ関係はとにかく透明度高い声の持ち主がキャスティングされていて、浮世離れした純粋さを種族の特徴として出したいんだなー、って印象。
 セックス厳禁即死刑な激ヤバ法にも後押しされて、強制的にプラトニックな間柄に押し込められているイェスマたちだが、彼女たちだって人に恋をし、叶わず死んでいく。
 素直な気持ちを叫べないのは豚や復讐者だけでなく、哀れな読心奴隷達も同じなのだろう。

 それがおかしいことだ、と思える異世界人の感受性は、鳴り響く救難信号を前にどうするのか。
 ノットさん仲間に引き入れた時うそぶいていた、ジェスの為なら何でもする精神だと『無視する』が正解なんだが、あのお人好しの豚と傷だらけの復讐者が、イェスマの叫びを無視できるかなぁ……?
 ここで謎めいた弱者の声が届いて、効率重視で旅を進めていくか、人として為すべきことに寄り道するのか問いかけるの、騎士の巡礼物語としてやっとくべきイベントで好きだな。
 俺は古い類型を新しい形にしている物語が、いつでも好きだ。

 闇夜に響く救難信号は、破滅を呼ぶサイレンの声か、手を差し伸べるべき弱者の叫びか。
 次回も楽しみです。