イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ウマ娘 プリティーダービー Season3:第10話『お祭り』感想

 一つの決着を超えて、祭りは続く。
 キタサンブラックサトノダイヤモンド、幼馴染であり親友でありライバルでもある二人の物語、そのピークとなる天皇賞を終えた後のウマ娘アニメ三期第10話である。 地域密着のお祭りにたっぷりのファンサービスを交え、遠く凱旋門を睨みながら挑んだ宝塚記念の惨敗。
 ダイヤちゃんが順等に自分が進むべき未来を見据え挑む中で、どっかピントのズレたキタちゃんの新たな一歩を描くエピソードとなった。

 前半のお祭りはメチャクチャいっぱいウマ娘が出てきて、メチャクチャいっぱいウマ娘ファンにウィンクしまくる、ファンサービスドカ盛りな展開。
 アニメに出た連中も俺は知らないウマ娘も、すンゴイ量の耳付き美少女がモリモリ画面を埋めて、大型コンテンツ特有のみっしり感というか、『これをやっておかないとボリュームゾーンが満足しないんですッ!』という叫びが、妙に楽しい。
 僕はアプリやっていないので、画面に乱打されるウマ娘ちゃん全員に反応できるわけではないのだが、ワチャワチャ色んな連中が好きなことをやっていて、賑やかで明るい祭の雰囲気は大変良かった。
 ここの手触りが暖かくないと、日本一のお祭り娘として場を盛り上げていくキタちゃんのこれからにも説得力がないわけで、地域の人とのふれあい含めて和気あいあいと楽しい、祭の景色を描いてくれたのは良かった。

 バババッと手早く描かれる様々な描写にはおそらく、アプリに三年弱積み上げてきた文脈が眩しく反射していて、その全部を受け取れない微かな寂しさは、アニメ限定でコンテンツに触れてるにわかいつもの光景というか、必然の置いていかれ感というか。
 しかしウマ娘ちゃんで溢れるトレセンの景色それ自体が、やっぱり見ていて楽しくしみじみ『好きだなぁ……』と思える景色だったし、一期メンツが久々に画面に映るのは良かったな……ウンスとか。

 

 後半は宝塚記念の惨敗に向けてレールを敷いて、後半を惑わせる不調の影がキタちゃんに長く伸びる展開。
 あそこでの負けは既に歴史に刻まれた結果なわけで、そこに前回大きな物語的ピークを乗り越えたG1五勝のスーパーウマ娘をどう放り込んでいくか、なかなか話運びが難しいとは思う。
 ふわっと視線が遠い凱旋門賞に向いてる感じとか、それに引っ張らて一意専心のひたむきさが消えてる感じとか、具体的に大きな故障はしないんだけど負けるべくして負けていく雰囲気の漂わせ方は、ただ起こった現実に理由づけし物語化していく”ウマ娘”だからこその手応えだった。
 テイオーみたいに頂点から足ぶっ壊れてどん底に落ちたりしない分、大河ドラマの起伏付は難しいところだと思うが、負けに明確な理由が薄い今回の敗北からどう筋道立てて、最終盤を描くかは気になる。
 明確な勝利が描かれないまま必死に頑張ってきた、サトノクラウンお姉ちゃんが国内初の栄冠を掴んだこと、最終盤までレースを支配する実力(それでも勝ちきれない敗者の宿命)をシュヴァルグランが見せたのも良かった。
 三期の同年代の描き方、俺は結構好きなんだよな。

 こっから凱旋門挑戦の夢も潰え、長い泥まみれロードが始まると思うのだが、そこで誰がキタサンブラックを引っ張るのか。
 トレーナーが理由なき暗雲に気づいている描写があったのは、終盤の切り札として彼の出番がある布石に思えて、ちょっと期待してしまう。
 一期でスポ根ど真ん中の二人三脚成り上がり物語、二期でファンとしてスーパーホースに憧れる物語をやり切ってしまっていて、スピカが物語内で積み上げた実績も、伝説のチームに相応しい分厚さになった。
 トレーナーさんが何かを成し遂げるのもなかなか難しい状況だとは思うが、それでも俺は彼が好きだし、”トレーナー”としてウマ娘が苦境を乗り越える決定的な助けを、どっかで果たしてほしいなと思っている。
 あの有馬で引退を決めたゴルシが、羊のきぐるみでハシャイでいた時とは真逆の鋭い視線を向けていたのも気になるところで、運命のゴールとなる三度目の有馬に向けて、こっからどう道を組み上げていくのか、ウマ娘アニメ三期の語り口に期待したい。

 

 という感じで、終盤戦序章という手応えのエピソードでした。
 二度目の直対を終えて、戦士であり続けることから解放されたダイヤちゃんが、凄く朗らかな”娘”っぷりを見せていたのが、彼女のファンとしては嬉しかった。
 勝負服のデザイン含め、フェミニンな魅力を極限まで高めお姫様力でぶん殴ってくる彼女が、張り詰めた修羅の顔してるギャップが好きなわけでね……その落差は、ふわっと暖かな自然体を味わうと、更に高まる。

 こっからダイヤちゃんは凱旋門賞挑戦、キタちゃんはこの惨敗を受けての道探しと、幼馴染でありライバルでもある二人の未来は別れていく。
 もはや二度戦うことはない運命を知らぬまま、幸せな永遠にまどろめた最後の瞬間として、この話数を思い返すのか。
 いい塩梅の苦味を交えつつ、ラストスパート熱く激しく、頑張って欲しい。
 次回も楽しみだ。