イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ぶっちぎり?!:第1話『合体!?恋するフォーチュンバンバンジー!』感想

 内海紘子×MAPPAの最新作は、アラビアンヤンキーファンタジー青春群像劇?!
 本気になれないヘナチョコ主人公が、治安最悪の激ヤバ環境に投げ込まれて魔神と合体!!
 やりたいことをやりたいだけ詰め込んで、ゲップが出るほどスタイリッシュ&チャーミングにお送りする、テンポと勢いの良い第1話となった。
 基本フレームとしてはどヘタレが不良共が跋扈する荒らくれた環境でのし上がっていくという、”カメレオン”とか”破壊王ノリタカ”あたりから始まり”東京卍リベンジャーズ”にも継承されているヤンキーファンタジーのど真ん中ではあるのだが、内海紘子らしいセンスとリビドーがたっぷり注入され、非常に独特で魅力的な仕上がりとなっている。
 ヘタレ主人公と彼が投げ込まれる舞台の現状、キャラクターの距離感、作品の雰囲気とリズム、何を目指して物語が突っ走っていくか。
 24分で”第1話”に必要なもの全部混ぜ込んで、噛み合うはずのない要素を磨き上げたセンスで強引に繋ぐことで生まれる、独自のグルーブに飲み込んで生まれるパワー。
 それを初手から浴びることが出来て、大変いい感じです。
 Free!一期ED”SPLASH FREE”の頃からバリバリだった、アラビアン男子への紘子の執着がヤンキーの皮突き破って溢れちゃってる気配が、今後どんだけ暴走してくれるかも楽しみだ……(厄介な古参ッ面)

 

 

画像は”ぶっちぎり?!”第1話より引用

 ヘナチョコ主人公によるヤンキー社会成り上がり物語と、内陸を入江に変える超お条パワー魔神との共生物語。
 アラビアンモチーフも合わさって、水と油混じり合わなそうな要素を楽しく飲めてしまっているのは、やっぱ圧倒的なヴィジュアルの良さと、それを贅沢に作品世界に溢れさせることで、特別なものと感じさせない非凡な見せ方だと思う。
 とにもかくにもカラーリングと美術が良く、狙いすまされた猥雑がごちゃまぜ世界に心地よく溢れ出していて、見ていてとにかく気持ちが良い。
 南国風味とアラビアンテイスト、治安の悪いヤンキー文化をごたまぜにした上で、一つのカルチャーとしてしっかり立たせているビジュアルの強さが、何でもかんでもごたまぜにしている欲張りを、多国籍で無国籍な面白さへと変えている。
 最先端を追走するよりもうちょい先、トレンドをしっかり踏まえた上で『私たちは”コレ”だ!』と主張してくる押しの強さが、しかし過剰に身を乗り出してこないでアクの強いドラマの受け皿として機能しているのは、見事な調律だと思う。

 まだまだ物語は始まったばっかりなんだが、とにかくこの世界観を浴びているだけでなんだか気持ちが良く、元気が出てくるのはとても素晴らしい。
 現実にあるはずの要素を組み合わせて、何処にもない面白さを生み出す。
 ”本気人”が祠に封印されてるトンチキ世界観……それよりも大嘘なヤンキー大暴れな治安最悪ドンパチ学園を、ワクワクと初手から飲み干せるのは、魅力的なファンタジーとして作品世界を、しっかり作れているからだと思う。
 ここら辺の『行ってみたい身近な異世界』の構築能力は、監督の前作である”SK∞ エスケーエイト”でも大変元気だったところで、今作でも混沌として魅力的なヤンキーアラビアンに誘ってくれたのは、大変ありがたい。

 

 さてそんな舞台を駆け抜けていく主人公、灯荒仁くん。
 惚れた相手に即手掘りのLOVEはんこ手渡しちゃうような、甘っちょろくてヤバい少年であるが、そんな彼が投げ捨てたはずの”本気”を拾い上げ、拳渦巻く激ヤバ領域をのし上がっていく物語であると、手際よくこの第一話は教えてくれた。
 僕は主役がどんな問題を抱え、どういう風に突破していくかを手際よく見せてくれるアニメが好きなのだが、本気すぎて地形変えちゃう魔人を横に置くことで、荒仁くんが超えるべき壁が”本気”にあることはクドいほど良く見えてくる。

 テキトーに高校デビューして可愛い子と付き合って、テキトーに幸せな高校生活を送る。
 差し込まれる回想シーン、大型犬オーラ全開で自分を買いかぶってくるドデカヤンキー幼馴染との距離感をみるだに、荒仁くんはかつて熱く燃える”本気”を抱えていたが、現実とぶつかってそれを捨て去り、しかしまだ消えない炎を胸に宿す……ヤンキー成り上がり物語の主役としては、大変オーソドックスでポテンシャルの高い造形をしている。
 立ち位置からも立ち回りからも『押忍、熱い男の燃え盛る友情を滾らせるための、可愛い薪です!』と主張してる、激ヤバブラコン女まほろちゃんとのラブコメ(?)がどうなっていくかは先の話として、殴り合うからこそ解りあう、ヤンキーファンタジー自己実現を果たすキャラとしての背筋は、初手からピンと立ってる感じだ。
 青くてデカい幼馴染クンが、荒仁くんに過剰にべた惚れしてるのが、ここ足場にボーボー何かが燃えそうな不穏さチリチリ言わせてて、かなりいい感じなんだよなぁ……。

 

 

 

画像は”ぶっちぎり?!”第1話より引用

 ヤンキー物語としての”本気”を問うなら、暴力と挫折の重さは結構大事。
 パンツ一丁に剥かれてもギャグで住む、ポップでクールでチャーミングな雰囲気が、超暴力の気配をまとったお兄ちゃんの本気の蹴り、溢れる血潮で一気に潮目が変わって、作品が扱うものの重たさをしっかり見せてくる場面も良かった。
 ここら辺の舵の切り替えが不鮮明なまんま、殴り合うことに否応なく付きまとう痛さとか重さとか、それを跳ね除けるからこそ描かれる”本気”を扱われてもうまくノレないわけだが、そこら辺キッチリ、出だしのクライマックスで説得力出してきたのは大変いい。
 現状荒仁くんは本当の願いに背を向けたヘナチョコであり、しかし真宝くんが見込むように燃え盛る”本気”を秘めたヤンキーエリート候補生。
 そんな彼と合体し、人外のパワーを発揮させる魔人がどう暴れるのか、気合の入ったバトル作画でしっかり見せてくれて、大変良かった。

 『童貞捨ててぇ!』という青春の叫びでもって、魔人が待ち望んでいた本気の継承者たる資格を見せた荒仁くんだが、この段階ではまだまだ借り物の強さ。
 これをどう自分の武器として磨き上げ、身につけ、本当に成りたかった自分へと向き合うかという、凄くオーソドックスな自己探求の物語が、スタート時点で話の軸として見えているのも良い。
 誰がてっぺんかボコスカ殴り合う、野蛮なヤンキー三国志には全然興味ない荒仁くんが、ゴリゴリ闘争の渦に巻き込まれるための因縁も幼馴染やら惚れちゃった激ヤバちゃんやら、そのお兄ちゃんで対抗勢力のヘッドやら、色々伸びてて暴れそうだ。
 人生諦めたナンパ気取ってても、荒仁くんの夢は誰にもアタマを踏まれねぇ真の男だと見えているわけで、巻き込まれたはずのボコスカ不良ウォーズこそが自分の”本気”を照らしてくれる居場所なのだと、気づく瞬間が今から楽しみ。
 やっぱくすぶっている男の魂に、火種が入ってマジになる瞬間ほどおもしれーもんないからな。

 

 こういう中軸のオーソドックスな強さ、真っ直ぐな太さに加えて、ドタバタの中で学校外の対抗勢力がいてヤバいこと、先生は全く頼りにならないこと、真宝クン周辺の人間関係などなど、色々目端の聞いた描写も多かった。
 こういう後に生きてきそうなクスグリが、手際と勢いの良い展開の中随所に配置されていると、『コレはこういう事かな?』『コレはどう効いてくるのかな?』と、アニメを読む脳みそが刺激されて、お話に前のめりになることが出来る。
 これがイカニモなゴツゴツ感で前に出てくるわけじゃなくて、あくまでさり気なく自然に、転がる話の中に混ぜ込められている手際が、やっぱ良かったな。
 物語の構成要素も、キャラクターの人数も多いてんこ盛りなお話なので、それをスムーズにスマートに楽しむためにはそういう、目端と手際が絶対必要になってくる。
 やり過ぎ感満載のパワー勝負な作品と思わせておいて、終わってみると『んー……こういう話か!』とスルッと飲み込めてしまっているのは、やっぱそういう巧さがあるからだと思う。

 あと小ネタの手数と火力よね、やっぱ。
 古臭いヤンキーモノを最先端のファッションとアニメ表現にまとめあげ、古くて新しい独自のグルーヴを生み出している絵力の強さをベースに、矢継ぎ早に情報量上げてグイグイ押し込んでくるの、大変楽しい。
 とりあえず、荒仁くんのママンがめちゃくちゃ可愛いのはありがたいね……メインヒロインのまほろちゃん、激ヤバだからね……。

 今回は本気人の実情とか、キャラの名前に仕込まれた千夜一夜要素とかはあんま彫り込まなかったが、ヤンキー要素の形を整えた後で、触ってくれると嬉しいかな?
 荒仁くんが投げ捨てた”本気”を、魔人に賭ける願いとして際立たせ、夢破れた青年が熱く再起するお話のメインエンジンに据える……てのが、”アラジンと魔法のランプ”をモチーフにした一番の理由だとは思うが。
 やっぱ『問いただす』って行為はキャラとドラマの中心がどこにあるのか、一番鮮明にしてくれると思うので、強大な力を持ちつつ自分ひとりでは何事もなセず、或る意味他人の欲望に寄生する形で奇跡を生み出す”魔人”がメインにいるの、かなり面白い。
 今回はボッコにされた反動で火が付いた荒仁くんの、本当の願いは何処にあるのか。
 千夜がメインにいるってことは、それを探っていく王道青春ストーリーをやるってことだろうし、あからさまに蒼い魔人にデカい感情持ってる千夜自身も、本気の願いを問いただされていくんだろう。
 俺そういう、真っ直ぐな話好きだよ……。

 

 というわけで、魅力的な混沌が初手から元気な、大変面白いスタートでした。
 ヤンキー成り上がり物語、魔人ファンタジー、暴力的ラブコメ
 色んな要素がミッシリ詰まっているのですが、それらが殺し合うのではなく魅力的に混じり合う、多国籍で無国籍な面白さを第一話から感じられました。
 そういう野放図な力強さだけでなく、泥に塗れた”本気”をもう一度取り戻していくオーソドックスな芯が、お話に通ってる手応えも十分。
 この何でもアリなカオスの中で、こっからどんな物語が弾けていくのか。
 次回もとっても楽しみです。