イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第3話『聖女』感想

 遂に始まった実地研修!
 人生三回目パワーを思う存分回して、良い声した指導教官の横っ面を実績ではたく!!
 研修医エリーゼ転生無双、病院の衛生状況を適正化しつつガンガン行くぜ! な、愉快な第3話である。

 遂にチート無双本番! ってぇことで、主人公をナメてかかってくる実力者と乗り越えるべき厄介な状況がポップアップしてきたが、”医学”というテーマもあってか迫りくるピンチは大変具体的かつ落ち着いていて、ドレスを汚しながら病床を掃除し、単独での褥瘡治療を敢行してたら、見る目のあるナイスガイが素直に認めてくれた。
 過去生に後悔を、医術の未来に使命感を持つ主人公として、エリーゼはごくごく自然に医者やってるだけなのだが、何しろ体に溜め込んだ知識と技術がホンマモンなので、そのスケールは医者見習いには収まらない。
 ナメた新人を押し付けられ、大層疲弊してきただろうグレアム先生が偏見抱えて向かってくるのも無理ないことだが、その思い込みと心中するヤな人ではなく、エリーゼが一人勝手に何を成し遂げたか、それが医者として為すべきことだったかをちゃんと見つめて、素直に向き合ってくれたのはありがたい。
 ここら辺引っかかりなくスルッと進んで、イヤ悶着で無駄足踏まない話作りなのは見やすくていいわな。

 

 主役がいないところで、皇帝陛下の御侍医(この人も研究熱心で誠実)が延々エリーゼわっしょいしてるのも面白かったが、するーっと自意識低くやるべきことをやってる主人公が、反感や偏見抱えて突っかかってくる人をギャフンと言わせるのは、スカッと転生モノの基本構図……なのだろう。
 ただこのお話扱ってるのが医術なので、決闘で相手ボコしたり蛮族を虐殺して武勲立てたりはせず、病院の衛生レベルを引き上げ、危機的状況にあった患者に適切な処置を施すことで、主役が認められていく。
 衛生も施術も、疑いようもない”良いこと”なわけで、それやってたら主役を取り巻く人間関係が良くなっていくって構図は、自分的には飲み込みやすい。
 この作品独特のチート無双がどんなもんか、それによって変化していく関係性のテストケースとして、グレアム先生に頭下げさせるまでのアレソレはなかなか良かった。

 んで、作品の軸になる医術だけども。
 フローレンス・ナイチンゲールのエピソードをなぞりそうな気配も含め、技術・社会的水準は19世紀半ばくらいかと思う。
 クセフ半島の情勢、良く見てみるともろにクリミアだしな……。
 しかし『デブリードマン』『ドレッシング』という用語・施術がすんなり共有され、荒れた病院の看護師レベルでも『なんすかそれ!? やって大丈夫な術式なんすか!!』とか言ってこないあたり、医療技術はかなり歪な発展している感じ。
 まーいちいち未来技術に突っかかってこられても、お話停滞して面白くねぇだろうから異世界人がこのレベルなのは納得するんだが、このアンバランスを成り立たせる設定が、裏に一個あると更に飲み込みやすい……かなぁ。
 まぁ主役が無双ぶっこむお膳立てがモリモリ整っていくのは、『そういうもん』と飲み込むべきジャンルだとは思うので、そのうちなんかフォローあるのを期待しつつ、『そういうもん』で見ることにする。

 やった事自体は掃除して手術して、医療従事者としての知見に従いドレスが汚れるのも気にせず、自分のできることを精一杯……という感じ。
 僕はエリーゼがニ度の死を通じて改悛を済ませ、強い後悔と使命感を抱えて生きてる……医療という神に帰依したような人格なのが、結構好きなのだが。
 家柄ブーストを活用しつつも、自分の出来る範囲で人と衝突すること少なく、黙々と患者の助けになれるよう過ごしている様子は、見ていて爽やかで気持ちが良い。
 我欲のまま振る舞った挙げ句家も国も自分も破滅した経験値が、転生した先で焼き付いた医療技術と同じくらい、彼女の支えになってる印象だ。
 『人生三回目』つう要素が看板で終わらず、肥大化したエゴを適切に処置しないとどう破裂するのか、身を持って知った上で老成した立ち回りの支えになってるのは、”転生者”を描く上で結構面白いと感じた。
 同時に清廉潔白な聖女が過ぎる感じも少しあるので、もうちょいエリーゼ個人としての願いやワガママが漏れてくると、もっと好きになれるかな。
 そこら辺はリンデン殿下との、ロマンスの拗れ方に期待だ。

 

 というわけで、転生由来のチート力、見事にほそやん上司の頭を下げさせる! の回でした。
 思い込みでナメてくる相手をギャフンと言わせるスカッと展開なんですが、エリーゼがするーっとやるべきことやってるだけで、患者も同僚もいい気分になっていく転がし方が心地よく、素直に楽しめました。
 今後もこの善因善果な透明度で進めていくのか、それともちょっと違った味を足していくのか。
 楽しみに、お話の行方を見守っていきたいです。
 次回も楽しみですね。