イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異修羅:第4話『濫回凌轢ニヒロと世界詞のキア』感想

 黄都と新公国の間を、殺戮と謀略が行き来する。
 迫りくる戦雲を知らぬままに、世界の全てを書き換えうる魔才の少女は、己の幼年期に別れを告げた。
 まだまだ続くぜ顔見世フェイズ! 大丈夫なのかこのアニメ……面白いから良いけども!! な、異修羅アニメ第4話である。
 というわけでまーた名前が覚えにくい新キャラが顔見せて、ドンドン風呂敷が広がっていく感じである。
 まーこの流れで振り落とされる人たちは、初っ端ノー説明大量の血しぶきでドロップしとるだろうから、ジリジリと地獄の開戦に向けて状況が転がり、異能達が運命に惹かれて集いつつあるこの状況を、飲める人しか残ってない気もするが。
 こんだけ激ヤバヒューマンを、新公国という鍋に投げ込んで何が出来上がるのか、高めた期待感を裏切らないケレンと血しぶき、炸裂する関係性と燃え上がる感情を楽しんでいきたいところだ。

 

 つうわけで前回、ダカイさんが間諜ぶっ殺した結果が黄都に押し寄せ、一人で方面軍ぶっ殺せる最悪の生体兵器が開放された。
 こっちは相変わらず血腥いんだが、後半のキアサイドがサービス力高い肌色お風呂シーンはぶっこまれるわ、ツンデレツインテールエルフがツンツンするわ、今まで慣れ親しんだ異修羅味が蒸発してて、結構びっくり。
 まぁこういう世界では純白は血と憎悪に染まるために白いと思うので、すげー普通の精神してるキアちゃんはとんでもない目にあって、瞳からハイライト消えていくんだろうけども。
 優しい先生ッ面してたエレアからして、スパイの大元締めとして自身の野望を叶える大駒を抑えにかかり、平和なエルフの里を黄都が焼く未来に加担し、それを子どもたちに教えない、最悪人間だしなぁ……。
 スパイが暗躍して得た情報を元に、効率化された官僚組織のバックアップを受けて近代的軍隊が未開地を蹂躙していく手付き、かーなりいい塩梅の植民地主義全盛期の匂いがして、黄都全体がどういう史的発達段階にあるのか、自分的に納得が深まる回でもあった。
 現代的倫理なんぞ薬にしたくても出てこない、むしろこれからむき出しの力と力が衝突する中、何もかも更地になって倫理の鎖で自分を縛るようになる前の、建前を横に退けた獣達の庭。
 多分この話、そういう場所が舞台よね。

 モブをどんだけ送り込んだところで、新公国を切り崩せないと踏んだ黄都側は、リスク承知で激ヤバ案件に手をかけて、修羅に修羅をぶつける算段を付ける。
 禁じ手なしの生っぽい政治が牢獄に踊るAパートだが、辞令と連絡が重視されて策謀が動く様子は、黄都が強国である足場がどこにあるのかを、ひっそり教えてくれているように思えた。
 人殺すにも、ロクでもない暗殺企てるにも、とにかく書類が役所の間を飛び交う、精密な官僚制度。
 弱い人間が霊長として荒野に君臨するために、選んだ群れとしてのルールを突き詰めているからこそ、多分黄都は強い。
 感情や本能に任せての虐殺ではなく、極端にシステム化され冷静に非道をなしうる機構が整っているからこそ、反逆者を”魔王”と定め、その反動で自分たちが世界に冠たる”勇者”であると知らしめるような、プロパガンダ戦でも優位に立てるのだろう。

 殺しも騙しもなんでもあり、ルール無用のデスマッチこそが国際政治の本質であるが、それをあたかも人道と倫理の結晶であるかのように装う、面の皮の厚さもまた、欠かせない化粧だ。
 スパイが表立って活動せず、動きやすいカバーで謀略を覆い隠すのも、衆愚に反感を抱かれない道化芝居が、なんとか成立するための工夫である。
 人外の技を持つ修羅たちも、そういう芝居のコマとしてしか盤面に存在を許されず、盤面それ自体をひっくり返すほどの問答無用を備えていなければ、多分都合の良い首輪に絞め殺されていくだろう。
 逆にいうと、そういう算段を付けずに怪物を解き放つ愚行を、許さない程度には黄都の政治は高度だ。
 直接暴力がぶつかり合い、血が流れる場所から遠く離れた書類の山にこそ、政治的行為としての戦争の手綱を握る、得体のしれない誰かが眠っている。
 そんな人間社会の当たり前を、規格外の怪物たちはどんだけ食い破れるのか。
 徐々に温度が上がってきている新公国との戦争は、血潮と苦鳴の絵の具でもって、イヤってほどそれを描いてくれるのだろう。

 

 その裏側で、麻美子声の女スパイが暗躍していた。
 な~んも知らねぇエルフ少女が、肌色サービス展開しながら魔法絡みの設定開示してくれる裏で、毒物と智謀に長けたクソカスが最強の手駒を引き取り、里焼く算段付けてる生臭さは、なかなかに良かった。
 ああいう無邪気な未開をしゃぶりつくし、黄都は世界の覇者としてますます肥え太っていくのだろう。
 優秀な官僚組織に支えられ、全てを平定し制圧するまで止まることがない……大陸を喰らい尽くしてなお進むだろう黄都自体が、最もおぞましく人間らしい修羅なのかもしれない。
 ここら辺、規格外の強者にフォーカスしているようでいて、群れとしてそれらを飲み込む貪欲と非道をむしろ当然と繰り返せる、顔のない人間集団をその後ろに置いた構図なんだな。
 知恵も魔法も武力も、あらゆる強さを集結してもっと豊かで善い場所に突き進もうとする、ヒトという種族の業。
 そこに混じれないからこそ異界に追放された”客人”が、結構デカい存在感はなっているのは、なかなか興味深い対比ではある。

 そんな怪物の牙の一つ、赤い紙箋のエレアに見初めれられた超絶インチキ魔術少女、世界詞のキアChang。
 四系統に分割され、この世界を駆動させる理として学術化された魔法のルールを、全部破って問答無用、言霊パンクの申し子ここに見参……である。
 死ねと言われれば死に、晴れろと言われれば晴れ、何もかもが思い通りになる魔術の極限を、エレアは後に来る勇者決定戦に送り込み必勝態勢……だけども、フツー過ぎてメンタル攻められたら脆そうよね、キアちゃん。
 敵対者が『お前の先生はクソみて~なスパイの親玉で、何もかも騙してお前を便利に使ってるんだよ!』という”事実”を突きつけられただけで、コマとして機能しなさそうな危うさがある。
 あと発声し命令しないと世界が味方してくれないなら、認識すらさせない暗殺者系に弱そう。
 ここら辺、既に心ぶっ壊れててマトモな揺らし方では傷ひとつ負わないだろう、ぶっ壊れ人間達(特にソウジロウ)とは面白い違いだ。

 

 そこら辺のメタ読みはさておき、花の黄都に留学したキアちゃんは新公国との戦争にどう絡んでくるのか。
 四話まで見てこの塩梅だと、本命だろう異修羅最大トーナメント、開催される前に1クール終わるだろぶっちゃけ!!
 キャラにせよテーマにせよ、色んな種を随所に巻き散らかしている話なんだが、それが全部発芽する前にアニメの尺が付きそうなオーラはムンムン漂っている。
 そこら辺は覚悟の上でこのクセが強い語り口を選んでいるという、ある種の覚悟に感じ入ったから、ここまで楽しくも見ているのだけどね。
 接点がなかなか見えない個別の要素を、一つにまとめて炸裂させる舞台が新公国との戦争って話なんだろうけど、導火線がチリチリ言ってる様子を丁寧に積み上げていて、一向に花火が上がる感じが薄いのは正直気になる。
 ここら辺のじっくりした煮込み方を成立させるべく、規格外のド厨房がド派手に大暴れする顔見世を、積み重ねて進んでいる感じ……なのかなぁ?

 自分のリズムでページをめくれる紙媒体に対し、アニメが定めた画角とテンポで物語を追うしかなく、”続く”が出たら一週間待つTVアニメシリーズと、物語の形式が一部噛み合っていない気は、少しする。
 ここら辺、”続く”で待たされている間に周辺情報とか頭ん中パンパンになった考え過ぎとかを、ガツガツ食って書いて隙間を埋めたくなる、自分の気質とは噛み合っている感じだ。
 今回で言えば、第4話にして初めて血しぶき飛ばない、穏やかエルフの里平和日記を展開しているようでいて、黄都が覇権国家でいられる足場を整えているスパイたちの暗躍と非道、それを制御し躍動させる書類の山が、透けて見えたりしているのはとても面白い。
 異能の超人が俺ツエーぶっこむだけでは終わらず、そんな怪物すら制御する”群れ”の強さと怖さにも、切り込んでいくんだなって手応えがあった。
 やり過ぎ感全開のド派手な作風に見えて、政治や戦争、人間の地金がどうなっているのか、派手な火薬で表層を引っ剥がせばこそ描けるものに、挑もうとしている感じは自分の好みともあっていて、大変いい。

 だからこそ、そろっそろ”本筋”を先に進めてくれても良いんじゃねぇかなぁ……とか、丁寧に個別の要素を積み上げたからこそ湧き上がる、群像のドラマを見てぇな……とか、そういう気持ちも強くなってきた。
 ド厨房が好き勝手絶頂に暴れまわる面白さの、一歩先。
 どう殺すか見えないような怪物が死力を尽くして殺し合う、武力知力策謀異能、何でもありの地獄バトルを……そういう血腥い全力のぶつかり合いにこそ映える、ドラマとキャラクターの根っこを、そろそろ見たい。
 『そろっそろ、戦争始まんねーかな!』という、最悪の期待を未来に投げつけつつ、次回を待つ。

 

 しかし、つくづく思い切った構成だよなぁ……。
 原作未読なれど、作品の魅力を損なうことなくアニメにするには、この作り以外なかったんだろうな……とは感じてる。
 どう考えてもポピュラーにはなり得ないけど、アニメバブルが置き去りにした深夜アニメの好きな味が、ギュギュッと襲いかかってくる感じで、俺キライじゃないぜ……。