イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ぶっちぎり?!:第3話『なぐり愛!世界に一つだけのウズラ』感想

 シグマ名物地獄の”あっち向いてホイ”に、ドン引きしたりビンタされたり。
 主役がフラフラ恋に迷う中、黒い陰謀が衝突を引き起こし、二大チームがきな臭い。
 三話にして状況が動き出した、ぶっちぎり?! 第3話である。

 相変わらず荒仁くんは芯がないままフラフラ流され、主役が強い欲望を見せないまま各チームの情勢は発火しだした。
 ”本気”を描くために、荒仁くんは徹底して本気じゃないキャラクターとして設計されていて、だから入ったシグマの野蛮な風習に馴染めないまま流され、ビビっているのに抜けることも出来ず、唯一本気そうなまほろちゃんへの恋もどっかズレてて、なかなか難しい主人公(と、彼を中心にする物語)である。
 白ラン智謀キャラという、生まれる時代を明らかに間違えてるけどこのアニメ自体が昭和の遺物なのでしっくり来る、ライバル校のエンペラーが色々画策した結果、状況自体は二大チームの対立を煽る形で加熱しているが、そこに荒仁くんの意思や存在が全然噛んでない、浮っついた状況。
 一生ヘラヘラ軽い感じだった摩利人お兄ちゃんが、仲間的にかけられてマジギレしてる様子は『おっ!』と思ったわけで、やっぱり軽薄野郎がマジになるカッコよさってのは確かにある。
 主役にも早いとこ、譲れないなにかに熱くなる瞬間を与えて、彼に体重預けて見てる視聴者を安心させて欲しいところだが……どんくらいまで、荒仁くんはマジになれないのか。
 今後の主役の取り扱いに、注目が集まる回でもあった。

 

 話としてはシグマの荒々しい雰囲気をドつきあい交流会で見せて、ビビった主役が降りようとしたところでヒロインビンタが軌道に戻し、エンペラーの策略に二大チームが良いように踊らされる感じ。
 上納金ノルマで配下を縛り、他人にゃ見えない誰かと相談しながら悪事を企むエンペラーの孤独が、身内との結束が強い魅那斗会&シグマと対比され、だからこそ翻弄されているのはなかなか面白い。
 一般人に拳を振るうことはなく、不良だけでバシバシやっとる一線は良いんだが、身内の結束を確かめあう暴力ゲームにしても、敵対チームに襲いかかる牙の鋭さにしても、バイオレンスが思いの外容赦なくて、若干引く。
 でもここで『キレイな暴力』でホモソーシャル飾られても気味悪いので、暴力は暴力としてザラついた手触りがちゃんと在る描き方なのは、結構好きだ。
 生々しく痛そうで、ロクでもないモノとして描かれているからこそ、アラジンくんのドン引き加減にもある程度シンクロできるしね。

 とは言うものの、主役は基本流されるばかりでシグマから逃げることもせず、惚れた相手の策略ビンタで一念発起、適度に適当に暴力に馴染んでも行く。
 本能の叫びは『まほろちゃんと付き合いたい』ではなく、『童貞捨てたい』。
 鍛える時も『強くなりたい』ではなく『合体係数を上げたい』。
 目指す場所も『勝ちたい』ではなく『お兄ちゃんの跡を継いで、まほろちゃんに未t眼られたい』。
 荒仁くんが自分の願いとして差し出しているものは、何もかもが屈折した代用だ。
 そこが彼の現在地であり、物語が今後”本気”を追うための立脚点なんだとは思う。

 

 かつて経験した挫折の痛みに耐えかねて、何もかも誤魔化し逃げ出し、あるいは誰かの何かを代わりにする。
 美味しく結果だけ欲しがる軟派野郎にしても、今の荒仁くんはマジクソダサボーイ過ぎるわけだが、そんな彼がマジになる瞬間こそがお話の見せ場だということは解る。
 解るんだが……正直しょっぱいハンチク野郎に肩入れして話を見続けるのも難しいわけで、本気の本気が燃え上がる前にどっか、『ああ、コイツにもゴツい芯があるんだな……』と思える場面は欲しい。
 不良社会で一目置かれる原因になってる、千夜と合体できる唯一性も、どーも便利に使われてる代償っぽい匂い漂ってるしなぁ……なんか、桃尻に淫紋刻まれてるしさ。
 『童貞捨ててぇ!』が彼の”芯”だっていうんなら、血みどろになってもスケベであり続ける狂いっぷりをちゃんと描写してほしいし、現状主役が何もかんも半端で、流されるばかりなのは勿体ないなぁ、という印象。

 昭和に良くいた軟派野郎を、令和のフィクションにおいて調整なしのガチンコでお出しされると、なかなかキツい……という話かもしれない。
 千夜が第1話で言っていた『最近の若いもんは……』は、選び取ったオールドスクールな味付けとキャラの視点を重ねたセリフなんだと思うけど、ぶっちゃけ世情と景気的には、長い前髪プープーフイてりゃどうにかなった時代より、暗くてキツイもんな。
 マジになってなお未来が拓けない時代に、顔を上げたくても上げられない人たちでひしめいている時代に、『お前らマジじゃねぇ!』はあんま、刺さらない叫びかなとは感じる。
 ここら辺、作中一番マジじゃない荒仁くんがどう軽薄さを蹴っ飛ばして、ダサさ極まる自分含め、目の前にあるものをしっかり見据えて歩き出すかで、重さが変わってくる部分かなぁ、とも思う。

 

 とまれ、シグマの超暴力歓迎会で不良チームのロクでもない空気、ロクでもないからこそ身内に生まれる結束の湿り気は、良く感じられる回だった。
 身内にとことん甘く、敵対存在に容赦がない群れの空気は褒められたもんじゃないが、そういうモン醸成してこそのはみ出しものだろうし、器用に身内と敵を分別できる賢さ在るなら、不良少年なんぞやっていないのだろう。
 ポップで気楽に見えて、ここら辺のべっとり重たい臭気がしっかりあるからこそ、ただボコボコにするのでは終わらず、裸にひん剥いてふんどしで縛り、侠気を辱める抗争のヤダ味も濃い。
 硬派だ本気だ粋がっていても、一皮むけば他人ぶん殴るのにためらいがないクソカスではあるからな……そこら辺のヤダ味を積み重ねた上で、それでも不良たちに宿る輝きを特別に削り出せると、面白くなってくる気がする。

 そういうギラついた輝きが、身内傷つけられて戯けた仮面を剥がすお兄ちゃんにはあって、ぜーんぜん喋んないもう一方のヘッドにも、彼なりの”本気”を見せて欲しくなる。
 良いように踊らされての激突寸前だが、熱くぶつかりあえばこそ見えてくるものが次回以降ボーボー燃えて、可能ならそこに荒仁くんも投げ込んでくれると、自分の好みに合ってて嬉しいかな?
 そういう意味では、終始むき出しの獣臭垂れ流しながら、『お兄ちゃん♡LOVE☠』という自分だけの本気を譲らないまほろちゃんは、ずっと好感度高い。
 激ヤバイカレ人間なのはこの話全員そうだし、ロクでもないクズなりに譲れない何かがあるのだと見せてくれれば、全然心を寄せることは出来るからな。
 そういう意味では、今回ロマンスの予感を微かに漂わせた荒ちゃん大好き大型犬、真宝くんもツルンとした美丈夫の顔の奥から、燃える炎を滾らせて欲しいもんだ。
 エンペラーに憑いてるだろう蒼い本気人が表に出てくれば、豪傑ぶってる割になーんかコソコソ企んでる千夜の地金も見えてくるだろうし、ばらまかれた火種をちゃんと燃やして、キャラとドラマの温度を上げてくれることを期待する。

 

 つうわけで、ドラマ自体はいい塩梅にグツグツいってきて、主役が生煮えのまんまな回でした。
 ぶっちゃけ見てる僕が辿って欲しいコースと、作品が実際に描いている軌跡が微妙にズレてきてる感じはあるけども、不良少年たちが狭苦しいサークルのなかでキャッキャ殴り合う、湿度高い気持ちよさから早めに出て、風通しの良い芯を感じさせて欲しいところではある。
 でもまーなぁ……現状マジで意味薄い割に徹底されているアラビアンな造形といい、マニアックな執着を燃料にして”強さ”出してる作風ではあるからなぁ……。
 せっかく灯った抗争の火で、色んなマジをあぶり出すことを期待しつつ、次回を楽しみに待ちます。