イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第4話『颯然』感想

 緊張気胸! 脾臓摘出!!
 研修期間なんぞまどろっこしい、そこのけそこのけ転生医術がまかり通る!
 一応免許もらってない見習いの立場を全力でぶん投げ、主人公が圧倒的な”力”で世界を理解らせにかかってきた、外科医エリーゼ第4話である。

 ここまで比較的落ち着いた進み方してきた(ので、自分的にも食べやすかった)このお話、いよいよ転生チートものとしてエンジンかかってきた感じがあり、独特の勢いが大変面白かった。
 前回ぶっ倒したグレアム先生が、エリーゼが身につけた異界医療の凄みに圧倒され、プライド高い設定のはずなのに自称は凡才、一生エリーゼワッショイし続ける存在に変化していたの、猛烈な勢いを感じる。
 気胸脾臓損傷への対応は具体的で、エリーゼの凄みがよく描けていたと思うが、ドレス着ながら近代的ERが機能してたり、担ぎ込まれた患者を前に『心電図持って来い!』が飛び出したり、社会の様相と医療技術のアンバランスは加速の一途。
 まー社会レベルに医療技術を合わすと、現代医術無双ブッ込むだけの前提それ自体が存在しないし、そこにふさわしい医療描写をこねくり回す手間もかかるので、こういう形になっているのだとは思うが。
 どっかでこー、別の異世界転生者が医療技術を二百年進めておいたとか、言い訳があると飲み込みやすい……かな?
 あとかーなりの大手術なのに、麻酔の”ま”の字も出てこないで土手っ腹切られていたの、ちょっと面白かったな!

 

 こんだけの異才が既存の社会秩序と手続きをガン無視し、画期的に過ぎる成果を上げていると嫉妬と妨害が凄そうだが、一番最初に病院で一番つえー医者を倒しておいたので、『グレアム先生がOKじゃから大丈夫じゃ!』になってるのはオモロイ。
 つーかそこら辺のリアリティレベル上げても、恋に出世に命の戦いに忙しいエリーゼの大活躍にはノイズでしかなく、求められているものを濁らせるだけなんだろう。
 手技だけでなく可憐さにおいても、モブ男子を魅了する女としての強みも抜け目なく描かれつつ、あくまでエリーゼは自然体、やりたいこととやるべきことを合致させながら、ガツガツ前に進んでいく。
 この我欲のなさが、都合良すぎる医術無双をスルッと飲み込む大事な仕掛けであり、出世にしても色恋にしても、『か~ッ! 望んでもいねぇのに懐に飛び込んできちまって困るなぁ! 患者をすくいたいだけなのになぁ!!』という、キレイな看板貼って視聴者の欲望を濾すのが大事なのだろう。
 ただ医術で無双快進撃するだけでなく、世の男達が放っておかない異性動物としての価値が主役にあるのだと、モブの対応とかリンデン閣下とのロマンスとかで強調してくるの、王手飛車取りの欲張りで面白い。
 やっぱここら辺の欲望充足に、ブレーキかけて品良く走るレースじゃねぇんだな、転生チート系って。

 そんな今更の学びは横において、腹心の部下を救ったことでエリーゼを見直したリンデン閣下。
 声まで変わる王家秘伝の変装術……ていうか変身魔法がニュッと顔を出してきて、これまた面白かったけども、前世では心通じ合えなかった夫妻が縁を深めていく上で、謎の青年貴族・ロンつう身分は大事なんだろう。
 婚約破棄決め込んだ当人には見せられない、医療の現場で汗流す素顔のエリーゼをロンとして見ていくうちに、リンデンとしても冷えた心に火が灯り、熱い真心を宿した指先を伸ばしていく……といった感じか。
 ここでもエリーゼは無自覚で無垢な、当人の我欲が絡まぬ場所で欲しい物を差し出されるポジションに立っており、徹底してそういうトーンで話が進むのだと、見てる僕の腹が固まっていく回でもあった。
 このエリーゼイノセンスはともすればヤダ味濃くなる要素だと思うが、恋も出世も置いてけぼりに追いかけている”命”は確かに、何もかんも投げ捨てて追いかけるべき重さのあるネタで、そんな救命一直線にギリギリ納得がいく目標設定でもある。
 つまりは”命”から脇目を振った瞬間に作品のバランスが崩れる構成とも感じられ、今後も医療バカ一代の猛烈ラッシュで話を進められるのか、なかなか気になるところでもある。
 読者の求める展開を素直に盛り込む、シンプルでストレートな欲望充足構造を引っ張るエンジンとして、エリーゼが活力あふれる医者バカなのは良いことだと感じているので、今後も周りを見やしねぇ弾丸列車として、医術無双を突っ走って欲しい。

 

 というわけで資格試験を前にして、ゴリッゴリに世界水準飛び越えた超絶医療をブッ込む回でした。
 主役がやってることの凄さを分かりやすく伝えてくれる翻訳者を多数用意し、こっからどこまでぶっちぎっていくのか……なかなか楽しみになる、見習い医師の大爆走であります。
 リンデン閣下の暗い過去なんかもひっそり描写され、周囲との軋轢や難手術とかより王室に伸びる謀略の方と戦っていくのかな? って感じではありますが、さて今後どうなるのか。
 次回も楽しみです!