イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ!:第1話『はじまりは『わんだふる!』』感想

 21作目のプリキュアは、ケモノが変身おどろいた!
 動物さんといっぱい触れ合うあったかストーリー、わんぷり堂々のスタートである。
 大変良かったです。

 タイトルをひらがなにして、やや対象年齢下げた感じなのかな~と思えるふんわり柔らかい手応えの中に、色んな動物が生きてる街の風景とか、必殺技も拳の応酬もないメッチャ挑戦的なアクションとか、かなり攻めた作りが元気だった。
 話の主柱には主人公であるこむぎちゃんがどんだけ、飼い主であるいろはちゃんにリードを引かれるのではなく対等に手をつなぎたいのか、強く願っている姿がぶっとくあった。
 二足歩行と四足歩行、形は違えど家族の一員として一緒に暮らす時間の暖かさがゆったり丁寧に積み重なって、物言わぬからこそよく伝わる獣の純朴が色濃く、かなり好みの味付けでした。
 そもそもアニメの中の動物さんに弱い上に、元気いっぱい過ぎて物分りが悪い所もあるけど、とにっかくいろはちゃん大好きエネルギー満点なこむぎちゃんの純粋さがビシバシ殴ってきて、秒で好きになってしまった……。

 第1話は敵さんの事情とか一旦横に退けて、犬飼家がどういう日々を送り、舞台となるアニマルタウンにどういう空気が満ちているか、リッチに届けてくれました。
 光眩しく風光明媚な街に、満ちる幸せな命との触れ合い。
 『プリキュアが動物を描くならこう書いて欲しい……』と願っていた通りの、あるいはそれ以上の麗しさと多幸感で、家と街を包んでくれていたのは大変良かったです。
 やっぱ新しいプリキュアが始まる時、新たな舞台がキラキラお目見えする瞬間には特別な嬉しさがあると、思い出せる仕上がりで良かった。
 そんな街に暮らす動物代表として、人化の奇跡にあやかったこむぎちゃんだけがパートナーを守るわけではなく、ガルガルに迫られた幼い子供をセントバーナードが体張って守ってたのも、凄く良かったな。
 偉いヤツだよあの犬は……。
 今後話しが転がる中でどんな塩梅になっていくのか、何しろ一年の長丁場なんで読みきれないんですが、可能なら今回色んな動物たちを幸せに照らした横幅広い光で、時折街を照らしてくれると嬉しい。

 

 動物を話しの真ん中に据える以上、否応なくそれは”命”の話になってくるわけで、犬であるこむぎちゃんの独自性をどう描いてくるかは結構気になっていました。
 蓋を開けてみると生活を共にする朋友としての距離感、それ以上にグイグイ来る溢れる愛情、小さな命故に目の前の暴力に怯えてしまう様子、思い出に背中を押されて奇跡へ踏み込む姿などなど、元気に可愛らしく、誇り高く書いてくれた感じ。
 デケー怪物相手に二の足踏んじゃう姿を、ちゃんと書いていたのは凄く良かったです。
 自分より何倍もデカい相手が、暗いオーラむき出しで睨みつけてきたら、そらー怖い。
 怖いんだけども、弱者を見捨ててはおけないいろはちゃんと共に暮らした日々、そこで育まれた溢れんばかりの愛に背中を押されて、勇気が奇跡を呼び人の形を得ていく流れは、とても良いヒーロー誕生でした。

 肉球バリアもぽわんと柔らかなガルガルとの闘いは、拳を交えないめっちゃ柔らかな手応えで描かれていて、凄く挑戦的だと感じました。
 プリキュアとしては異例なんだけども、動物を扱う話としては納得の行く挑戦でもあって、楽しく置いかけっこして優しく抱きしめて、羊さんを怪物にして苦しめてたやべーオーラが癒やされるふんわりバトル、俺はスゲェ好きだぜ……。
 今後どういう塩梅でバトル要素を扱っていくか分かんないんですけど、個人的にはこの優しく楽しい救済を続けて行ってほしい気持ちが強い。
 殴り合いはしないけど、プリキュアに変身したことでどんだけ身体能力が上がっているのか、飛んで走って楽しく教えてくれる手際とかも良かったです。
 通年に比べてフィジカル描写がやや抑えめで、過剰戦力をふれあいバトルには持ち込まないぞ! という感じがあったのは好みだ。
 抱きしめることで苦しさをかき消し、怪物を動物に戻すキュアワンダフルの闘い方は、遊びに夢中に成りつつもいちばん大事なものを見落とさない、こむぎちゃんの強さと優しさがよく分かる、良いバトルだったな。
 これをずっと大事に話を作ってくれると、作品の独自性にも繋がって面白いかと思います。

 

 人間サイドの描写もどっしり積んでいて、いろはちゃんの物怖じしない明るさとか、ビビリの転校生とのドラマへの期待感とか、動物博士ボーイとの交流とか、色々ワクワクする要素がチラ見せされていた。
 来週早速キュアフレンドリィへと変身する、いろはちゃんが明るく楽しいだけでなく、社交的で勇気がある人だと初手から好感持てたのはありがたかったです。
 こういう子の側で暮らしてきたから、こむぎちゃんがああいう強さと優しさを持ち得たんだなと、説明されずとも感じられる奥行きがあったのが、暖かくてよかった。
 あと犬飼パパがあざとすぎて凄かった……。
 ガチムチマッチョがフリフリエプロン! 界隈が黙っちゃいませんな……。

 チラ見せした諸要素は今後膨らましていくと思うんだが、こむぎちゃんが犬力全開全力LOVEな子だったので、猫屋敷さんところの猫さんをどういう感じで描くかが、まず気になる。
 あんま種固有の性格や能力に固執しすぎるのも問題あるかと思うが、確かに動物ごとの特色として性格の傾向はあり、それを上手く”らしさ”として擬人化してくれると、『大好きな家族と、言葉で触れ合いたい!』つう夢を叶えるお話が、より面白くなるかなと思った。
 あと悟クンは穏やかで知的好奇心に溢れた大変チャーミングなキュアボーヤなので、いい具合にいろはちゃんと交流し、絆を深めて行ってほしいね。
 僕はプリキュアに出てくる、素敵な男の子たちが好きだから……。

 

 動物は好きで、自分的に大事にしたい題材でもあるので、見る前に色々ハードルを上げていた部分が正直あります。
 人間に役に立つ、心地よい存在であることを過剰に強調して命を描くと、例えば害獣や猛獣という存在は人間に不都合だから存在しなくて良いのかとか、色々考えてしまう。
 人間社会の営みに動物を取り入れる行為は、人の都合で命を左右する危うさと隣合わせでもあり、そういう難しさに今後、わんぷりが切り込んでいくかもまだ解りません。
 誠実と露悪の区別は時に付きにくいわけで、難しいテーマに踏み込まないこと、あるいは慎重に踏み入ること両方に、決意と意味が必要かとも思います。

 ここらへんは今後の話運びを、絶対にどっかでほころびを生む一年の長丁場を見届けなきゃ判別付かない部分ではあるのですが、しかし第一話は小さいながら意思を持ち、独自の生き方をしているこむぎちゃんを大事にしてくれた、良い書き方だったように思います。
 犬が身を置く世界と人を取り巻く世界は別ですが、重なる部分も大きくあって、そこから豊かにひろがるものがかけがえなく、誰かの人生を彩る奇跡が確かにある。
 そう信じたからこそこのプリキュアは”動物”を話しの真ん中に据えたんでしょうし、言葉なく積み上げられていくこむぎちゃんの思いには、彼女なりの願いや震え、決意や愛を大事にして話を作ろうという、造り手の気持ちを感じることが出来ました。

 異質な誰かとそれでも、お互いを尊びながらそれぞれ住まう世界を混ぜ合わせる難しさと幸せは、思えば人も獣も同じかと思うので、擬人化を絶対の答えにはせず、一つの命がお互いに隣り合い、触れ合っていく様子を今後、一個ずつ描いてくれると嬉しいかな。
 プリキュアは毎回そうだと思いますが、今回は特にコミュニケーションにまつわるお話になりそうで、どういう形で繋がることのままならなさ、繋がる奇跡の眩さを描くのかは、とても気になる。
 そういう意味では、人の形を得たからこそこむぎちゃんが、心の底から臨んでいた『隣り合って手を取る』存在になれたって第1話の描き方、かなり好きだ。

 

 というわけで、大変期待の持てるスタートでした。
 言葉はなくとも繋がっている、暖かな繋がりが不思議な石の奇跡でもって、形を変えてしまったいろはちゃんの当惑も描かれていましたが、人になった愛犬とどう向き合うのか。
 キュアフレンドリィ爆誕への流れも含めて、次回も大変に楽しみです。