イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異修羅:第7話『交戦開始』感想

 燎原に放たれた炎の如く、戦争が燃え広がる。
 遂に状況が熱く動いた、話の半分顔見世と足場整理に使ったアニメの第7話である。
 原作からしてそういう話なんだと思うが、エンタメの速度がとにかく早くなってるこの時代に、こういう構成でブッこもうと考え実際そうした蛮勇、俺は嫌いじゃない。
 チート野郎がバンバンド派手なことブチ込んで、絵面的には派手派手……ってわけでもなく、それぞれ政治的立場と思惑抱えた群雄が雁首揃えて、色々やってる地道な話でもあるからな……。

 前回エノアお姉さん危機一髪! をやって、実際の戦力がぶつかり会う直前でバランスを取っているようにも思えたが、新公国側から戦端を開く形で一気に情勢が動いた。
 謀略と暗殺で、発火する前に状況を終わらせたかった黄都の意表をついた形だが、大義と布告なき開戦はずいぶん新公国に旗色悪く感じられ、それでも勝ち切る算段が、魔王のレッテルを貼り付けられた女にはあるのか。
 ナレーションが『恐怖による支配を求めた』とか、聞き捨てならないこともほざいていたけども、一見国と民を思う人格者に思えたタレンも、表にはまだでていない思惑と業を抱えている感じか。
 黄都中枢に座ってた彼女が既存の秩序から離反した理由、そこに掲げられてる大義と本音がどこにあるかはまだ解んないし、こんだけ政治的な物語において戦争を扱うのなら、キレイな名分のあるなしはかなり大事だろう。
 ”真の魔王”亡き後の世界秩序を、硬軟織り交ぜた手管で構築しようとしてる(っぽい)黄都が、取りこぼすものがあるからこそタレンも起ったのだと思うけど、現状修羅個人にフォーカスした物語が単発で連なっている構造なので、世界情勢全体の見取り図が不鮮明なのは、ちと気になる。
 そこら辺は各英雄の生き様をパッチワークして、分断化された情報から絵を描く楽しさを重視した形なのかもしれないが、アニメって媒介だと相当オフィシャルな補助がないと厳しい楽しみ方かなぁ、とは思う。
 難しい物語形態選んだのに、それを噛み砕きやすくする補助線を引く手助けを、物語供給者があんまやってないのは、正直不親切で勝ち筋薄い戦い方って感じするね。
 まー僕は無いなら無いで、点を思い込みで繋いで強引に線にして絵を読むタイプの視聴者なんで、この硬い味は結構好きだけどね。

 

 つーわけで待ちに待った修羅 VS 修羅が、5分ぐらいフラグ立ててた副隊長さんを生贄にボーボー燃え上がり、戦争が始まった。
 ソウジロウ VS シャルクの白兵戦は、お互い戦いにしか興味がない人でなしっぷり、だからこその尋常ではない実力がいい感じに映えて、アクションとしても魂バトルとしてもなかなか良い見応えであった。
 しっかしあのオッサン、ほんっと丁寧に地獄みたいな状況が加速していく下準備してくれてて、ありえんくらい面白かったな……このアニメのウリ(というか味というか趣味というか)である、血みどろグロ死成分も補充してくれたしね。

 一般兵相手なら無双できるけど、白兵特化の修羅を相手取るには足りないヒグアレくんが、ユノちゃんの強者コンプレックスを更に刺激する形でキモく接近してきたのも、またいい感じだった。
 この話多分、行動原理がネバッこくてドス黒い方が勝つので、ユノちゃんには強者に良いようにされる屈辱と悲しみを溜め込み、調子くれた修羅共の背中を刺すためのエネルギーに変えていって欲しい。
 まぁチート野郎が激突した余波に、翻弄される小石視点を担当して作品に奥行きを増す役だとも思うので、早々簡単にスッキリリベンジも出来ねぇとは思うが……。
 何しろキャラが多くて皆濃いので、誰が活躍して誰がアッサリ死ぬか、なかなか読みきれないのは良いところだ。

 

 ソウジロウとシャルクの戦いは決着不明のまま戦塵に飲まれ、国境線の街で余裕ブッこいてたハルゲントとヒドウが、超絶ビームぶっ放す不意打ち開戦に巻き込まれる形に。
 華やかな死に場所求めるハルゲントの名声コンプレックスと、市民が何人死のうが発生してしまった戦闘をベストな形で収めるべくあがくヒドウの対比が、無能と英傑の差を良く際立たせていた。
 星馳せアルスという怪物を地面から見上げて、自分も並び立つ星になりたいと願ったから、ハルゲントも焦って勇み足多いのかな……って感じはある。
 彼が求めて止まないピカピカな看板を、別に抱えなくても生きていけるヒドウは、だからこそ自分なりの思惑を抱えつつ黄都という巨大な装置の一部となり、暴力的に世界を飲み込んで肥大化していく怪物の、生存戦略立案の最前線に立てる。
 好き勝手いい気コいてるように見えて、”個”を殺し国家に奉仕する官僚の存在感がデカいの、無敵のチート野郎メインな話にしては異様……と思わせておいて、群れる動物である人類種最強の武器として、顔のある英雄が死のうが顔のない誰かを代理部品にして機能する、無貌の怪物を描いてる話なんだろう。
 29官それぞれの野望や我欲は確かにありつつ、国家装置としてはイレギュラーも飲み込んで貪欲に機能している黄都が、魔王が死に英雄も勇者も不要になった時代の覇者になるためには、強すぎる”個”は不要。
 戦争をキャンバスに、搾り取った敵と味方の血で”平和な戦後”という絵をかこうという、崇高な志が地獄の籠城戦に透けて見えても来た。

 組織力と政治力を武器にする戦争官僚にとって、たった一員で戦況をひっくり返せる修羅の存在は、首輪つけて自由に使える間は最高に便利で、鎖を外して暴れ出したら潰すしか無い最悪だろう。
 『めざせ、ラッキーハッピー学園生活!』みてーな事ほざきながら、ファンタジー多客思考戦車に全裸ライドンかましてたニヒロであるが、この戦いで大活躍してお役御免……とはならんのだろう。
 つーか「1クールかけて世界最強トーナメントの前座やる!」とは言われているわけで、新公国との戦争自体がより大きな蠱毒への前フリつうか、選抜予選と危険物除去を兼ねた、何かのための道具なのだろう。
 ……そこに貴重なアニメ化チャンス全振りするの、やっぱ凄い賭けよね。
 外野ながら心配しちゃう。

 しかし流れる血は敵味方問わず本物であり、木っ端のように吹き飛ぶ弱きものも、戦火を生み出し生き延びる力を持った強者も、譲れぬ思いを理不尽に砕かれながら、戦場の画材になっていく。
 たいそう悪趣味ながら、『人間とそれが生み出す社会って、そういうもんだよね……』と思える生真面目さは確かにあって、遂に開かれてしまった戦端の先、各々の業と願いをどう書いてくれるか、なかなかに楽しみである。
 黄都主導で展開しているように思えた情勢が、新公国から火種を蒔いたことで画角が変わって、余裕ぶった超大国様をビビらせる良い不意打ちが、なかなかに面白く突き刺さった。
 この衝撃をテコにして、チート野郎の本領発揮大暴れとか、その余波でぶっ飛ばされる人生の切なさとか、他人の命絵の具にしなきゃ描けない大層な悪夢とか、色んなものを見てみたい気持ちだ。
 折り返しを過ぎて後半戦……長い前フリを経ての戦争本番に、一体何が見れるのか。
 次回も楽しみです!