イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ!:第7話『ふたりのフレンドリベラーレ!』感想

 すれ違いぶつかって、涙雨に濡れた後に差し出された思いやり。
 二人だけで間違ってしまうのなら、色んな人と話せばいい!
 誰かが隣りにいて、自分じゃ見えない何かを手助けしてくれることの意味を描く、わんぷり第7話である。
 大変良かった。

 まさかまさかの前後編、ケンカの辛さは前回で終わらせて、開幕から晴れ模様が広がり即座に悟くんがこむぎ回収! なスタートから、迷いつつも前向きに、むしろ迷ったからこそ新しい答えが見つかり奇跡が応える展開となった。
 スタートからして涙雨は去り、たんこぶモリモリのコミカルな描写で上手くストレスコントロールしてくれたが、大福さんの仰るとおり、生きてればぶつかることくらいは普通にあって、そこでくじけず立ち上がって顔を上げることが大事なのだ。
 しかしこむぎもいろはちゃんも、人生のありふれた難しさを全部受け止めきれるほど強くはなく、そんな人間当たり前の弱さに優しい人たちの助けで向き合いながら、自分たちが何を求めているのか、新たに探していくことになる。
 ケンカしない越したことはないけども、間近にベッタリ愛着を張り付かせていては見えなくなってしまうものが、お互い少し離れたからこそ見える回でもあり、いろはLOVE以外なかったこむぎの幼く純粋な世界が、衝突と向き合うことで広がる回でもあった。
 こういう形で、悲しい部分もあるけど人間の必然として起こってしまうものを、前向きに捉えよりよい未来に繋げていくエピソードで、新しい奇跡が形になるのは凄く良い。
 新アイテム販促回としても、とてもいい仕上がりだったと思います。

 

 つーわけで迷えるこむぎが冷たいアニメの中、辛い思いを続けていたらどうしよう……と、マジビビりながら見始めたわけだが。
 そこは作中最強の大人、悟くんがソッコー回収して色々手助けして、道を整え背中を押してくれた。
 持ち前の賢さを優しさと結び合わせ、迷える幼子を優しく抱きとめてくれる男(ひと)、マジありがてぇ……。
 今回の悟くん人間一年生であるこむぎの優しい先生として、こむぎが使い慣れていない思考や言葉をどう扱うか、丁寧に導いてくれていた。
 こむぎ自身はその勢いと純粋さに流されて、冷静に俯瞰することが出来ていない自分の感情や行いを、ちょっと離れた所から見定めつつ、暖かく手を伸ばして支えてあげる。
 かなり難しい距離感覚が必要とされる行いだけども、悟くんは他人事の冷たさでも、(いろはとこむぎの距離が近いからこそ溺れた)当事者の近さでもなく、非常にいい間合いで泣きじゃくる子どもに、言葉の力を差し出していた。

 自分が何を感じているのか、言葉でラベリングすることで新たに考え直し、強い思いが湧き上がってくる源泉を探る。
 前回感情の赴くままいろはちゃんと衝突しちゃったこむぎは、悟くんの問いかけと示唆に助けられて、自分の内面を言語化していく。
 それは人の形を得た獣がヒト特有の強さを活かしている場面であり、人間であることに慣れていない幼子が始めて、自分がどんな存在であるかを客観視して制御する、ありふれて大切な心の戦いだ。
 これを未熟な自分一人では戦えないから、色んな人が支え守り導く必要があって、しかし自身いまだ子どもであるいろはちゃんは今回、そういう仕事を果たせない。

 

 『なら他人がやりゃーいいだろうがッ! なんのための”社会”だッ!!』ということで、悟くんがこむぎを引き受けることでクールダウンする時間も取れ、賢いお兄ちゃんに色々教えてもらい、本当の願いを見つけ直したこむぎはタクトの奇跡を自分のものにしていく。
 『心のあり方が伴わない限り、変身アイテムは力を貸してくれない』つうのはプリキュア定番の物語類型ではあるが、前後編どっしり使ってこむぎの今がどんな感じなのか、その幼さと成長にしっかり付き合う話を作ったことで、フレンドリータクトがどういうアイテムなのか、鮮烈に描かれもした。
 いろはの役に立つ自分でいることと、タクトを使って新しい可能性を開くことが=で結ばれ、願いと力が一体となって奇跡を呼び込む、変身ヒロインの基本構図がしっかり形になっていたのが、力強くてよかった。
 この奇跡に力を貸してくれた悟お兄ちゃんが、与えるだけで終わらず『大福の言葉を通訳してもらう』というリターンがあったのも、こむぎがただ守られるだけの子どもではなく、ちゃんと恩を返し何かに報いることが出来る、パワフルな存在だと感じれた。
 悟くんはマジ賢いので、動物≒他者との根本的な交流不可能性をしっかり見据えていて、それでも大福の声を聞きたい自分の気持ちを大事にもしている。
 理性と情念がいいバランスで保たれている青年が、『世の中そういうもんだよな』と飲み込もうとしていた道理を、犬が人になった奇跡の子どもが力強く蹴っ飛ばして、思いがけずシブい人格してたマブダチの声を聞けたのは、凄く良いことだなと思った。

 そしてこむが出てってマジビビリするいろはちゃんの悩みを、突破する仕事は猫屋敷妹が担当していた。
 脇目も振らず一心不乱、シコシコ針仕事してんな~~と思っていた行いが、知らない町で初めて出来た友達に素敵な贈り物をするものだと分かった時に、猫屋敷まゆのことをもっと好きになっちゃったな……。
 こむぎの姉であるいろはちゃんが、ポジティブでアクティブな積極性、良く拓けて優しい視野を強調される”持ってる”プリキュアなのに対し、まゆちゃんは人見知りで視野が狭い”持ってない”プリキュアとして描かれる。
 しかしそんな彼女にだって震えながらも世界を変えていく意思があり、それを形にした素敵なハーネスがあり、ケンカしたって邪険にされたって大好きな繋がり方を、あらためていろはちゃんに教えることも出来る。
 こむぎ-悟のラインが年長者から教え諭す形になっていたのに対し、いろは-まゆのラインはあくまで対等な友達に、どん詰まりに落ち込んでいた気持ちを持ち上げてもらって、見えていなかった大事なもんを対等に教えてもらう形となった。
 人数増やさずバトルを激化させず、丁寧に時間使って作品世界を編み上げているこのタイミング、色んなやつがいて色んな繋がり方があるからこそ面白いという、多様性の楽しさもまた、ドラマに交えて丁寧に積み上げられているように感じた。
 『次週の初登校回絶対面白くなるだろ~』と思えるのは、こんな風にまゆがどんなキャラクター性を持っていて、それがどういう化学反応を生み出しうるか、メインストーリーの端っこでしっかり描いているからだと思う。

 

 百獣の王を相手取り、敗北からの再挑戦を描く今回のバトルは、序盤の追いかけっこムードが鳴りを潜め、擦り傷まみれのハードなものになった。
 ガルガルを生み出す闇の意思みてーのも顔を出し、いよいよバトル方面にもギアを上げていく感じがあるが、怖いけど、怖いからこそ戦いに踏み出していくワンダフルの決意と尊さを描く意味でも、激しい試練はいい仕事をしていたと思う。
 日常テイストが濃いプリキュアなので、子どもが傷だらけになりながら使命を果たす非日常に、わざわざ首突っ込む意味は結構丁寧に削り出す必要があると思う。
 言葉でモノを考えることになれていない、動物であり子どもでもあるこむぎが抱え込んだ純粋な願いが、一番大事な人と衝突して未来が見えなくなり、悟くんに改めて問い直されることで、自分だけの答えを言葉にしていく。
 『キュアワンダフルが、何故闘うのか。何故プリキュアなのか』という、作品の根っこを支える大事な問いかけに真正面から答えれるよう、前後編の全部が注ぎ込まれていて、こむぎらしい真っ直ぐな答えへたどり着けていたのは、とても良かった。
 やっぱ強めのクエリーを、しっかり出すのがヒーローの物語では大事だ。

 こむぎの迷いと発見は、特別な奇跡に見初められた”プリキュア”だからこその悩みであり、同時に凄く普遍的で人間的な歩みだと思う。
 自分が本当は何をしたいのか、わからなくなってしまうことは誰にでもあって、そうして塞がれた視界でぶつかりたくもない衝突に傷つき、涙ながら迷うこともある。
 だけどだからこそ問い直せる起源ってのも確かにあって、悟くんやまゆちゃんの助けを借りることで痛みや悩みから距離を取り、自分を苦しませているものが自分の大事なものとも繋がっているような、不思議で面白い真実に目を向けることも出来る。
 この客観性はこむぎといろはの距離感にも結びついていて、いろはと一緒でいることに執着して社会性を失いかけていたこむぎは、今回の戦いを経て、”あの”リードへの執着を乗り越えていく。
 まゆちゃんが心を込めて差し出してくれたハーネスと、その先にいるいろはこそが大事なのであって、愛と独占欲がベッタリ癒着した危うい場所にしがみつくよりも、もっと広くて強くて優しく、そして賢い場所へとこむぎは、自分を押し上げることが出来た。
 それはこむぎ一人で成し遂げたものでも、安楽で痛みがない穏やかさから生まれたものでもなく、ぶつかり傷つけばこそ確かに生まれるものを、肯定して描かれる成長だ。
 優しい誰かの手助けを受けて、人生当たり前の苦しさを乗り越えもっと強くなれる人間の……子どもの可能性を、堂々信じ切ったエピソードだったと思う。
 それは凄く”プリキュア”らしくて、やっぱ良いなと思うのだ。

 こむぎという、人でも動物でもある存在を主人公にすることで、わんぷりは独自の角度から色んなモノを描けていると思う。
 言葉と思考を得たからこそ衝突も起きてし、それを越えて大好きを確かめ前に進む武器になったのも、言葉と思考だ。
 否応なく世界が狭い子どもにとって、身近で間近な最愛は独占して安心したくなるものであり、その執着を自然なものとして描きつつ、それが生み出す難しさをどう飲み干し新しい形にしていけばいいか、細やかに向き合った回だったと思う。
 こういう密度と丁寧さで”成長”を削り出してもらうと、そのド真ん中でどんどん善くなっていく犬飼こむぎがどんどん好きになるし、彼女にそういう体験を手渡してくれているこのアニメのことも、もっと好きになるのだ。

 そして霊長の種族的特色である賢さは、誰かを押しのけ踏みつけるためにあるわけではなく、分かり合い繋がるための優しいメディアとしてあるべき……というメッセージも、人間一年生のこむぎが人間勉強する中で、確かに伝わっている気がする。
 同時にしゃらくさい人間が押し隠してしまう、ド直球で純粋な愛の強さと善さを、幼く真っ直ぐなこむぎを表情豊かに描くことで全面に押し出せるのも、独自の魅力となっている。
 ほんっっっっとこむがいろは好きすぎで、しかしその真っ直ぐなエネルギーは生命全部が本来持っているものであり、特別ではないはずなのに特別に思えて、まったく楽しく不思議なプリキュアで……俺は好きだ、わんだふるぷりきゅあ!

 

 というわけで、雨あがれば虹かかる、無敵の愛のお話でした。
 二人が新しく手に入れた力がFriend Liberale……”友情と自由”なの、マジ良いなと思います。
 人の形を手に入れたこむぎはなにかと、二本の足で進み出せる自由を肯定的に叫ぶわけだが、何でも出来る立場には危うさがつきまとい、愛は賢さあってこそより善い形になりうる。
 人が人であるからこそ生まれ、人が人であることを支えてくれる”自由”とは一体どんなモノなのか、獣と人の間に立つ主人公を通じて、一年かけて描いて行くお話になるかな……と感じています。
 どーも野放図な自由称賛主義というより、そこに付随する尊厳と責務に……人という獣を繋ぐハーネスの意味について、突っ込んだプリキュアになってくれるんじゃねぇかな、という期待感。

 そこは先の話として、値千金の真心を今回手渡した猫屋敷まゆ、次週学校社会に飛び込む!
 職人気質のスーパー陰キャが、見知らぬ人間関係のジャングルにどう踏み込むか。
 既に人生の借り一つ、気弱で優しい友達を全力応援するしかねぇ立場にいる犬飼いろはは、どんな輝きを放つのか。
 色々あるけど犬は犬、社会的立場を適切に得ていないこむぎがどこに突っ走り、何を得るのか。
 次回も楽しみ!!