イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

花野井くんと恋の病:第3話『初めてのクリスマス』感想ツイートまとめ

 私だけを特別なお姫様にしてくる魔法が、最高のクリスマスプレゼント。
 花野井くんと恋の病 第3話を見る。
 ロマンティック山盛りの第一章完ッ! で、大変良かった。

 話としては衝撃の獣欲ゼロ距離戦闘開始ッ! …を上手くスカして、冷却期間を経てスーパー紳士に戻った花野井くんが、試験期間ラストにぶっちぎりのトキメキ体験をぶち込む感じ。
 パトス強すぎて時折溢れるけども、真摯に目の前の人間と向き合うべく必死にブレーキをかけて、傷つけぬよう思いが伝わるよう素敵な体験を沢山手渡してくれる、コンセンサス重点なスーパーダーリン、花野井くん。
 その魅力がみっしり伝わって、恋愛試験期間延長にもめっちゃ納得。
 二人共どんどん恋して、どんどん幸せになっていくんだよ~~~~。

 

 ほたるちゃんは優しい家庭に守られ、極めて正しい倫理観と人格を育んだ、とても素敵な女の子だ。
 自分ひとりの特別な日であるはずの誕生日が、家族のクリスマスと重なってしまっている状況にも、妬みより幸せを感じて問題視しない。
 恋を知る前の彼女を包む、日生家という繭の中においてはそれは当然のことであったが、花野井くんという異物と触れ合ったことで、家族=私だった幼い時間にも変化が訪れる。

 貴方が貴方だからこそ、私と出会って特別に思える。
 エゴと我欲の泥水から、理想と救済を救い出した恋心の一番ピュアな部分が、自分ひとりを特別だと思えない正しく清い少女の価値を、別角度から照らしていくのだ。

 花野井くんはその優れた顔面に引っ張られて、一足先に恋のヤベー部分、それで顕になる人間性の泥を思い切りひっかぶってきた。
 ほたるちゃんの無防備に獣欲を煽られても、すんでのところで庇い手付いて傷つけないよう頑張る誠実さは、他人を尊重できない凡人との恋愛に汚されてなお、彼を眩しく輝かせている。
 どれだけ重たい気持ちを抱えていても、それを一方的にぶつけたら暴力にしかならないと、恋に傷つけられた経験から彼は学んでいるし、それを自分を律する枷として有効活用できてもいる。
 それは日生家という繭の中、幼さに微睡んでいては見えてこない、世界のもう一つの形だ。

 多分ほたるちゃんは、恋を通じてそれを知る。
 今回過剰な正しさで既に誰かを傷つけ、それをフォローしきれなかった過去が描かれることで、ほたるちゃんもまた未熟な存在であることが解っても来るけど。
 何かを間違えたのなら新たな出会いの中でそれを改めていける、幸せな可能性が二人の前には拓けている。

 

 自分の中に溢れる愛を上手く受け止めてもらえなかった花野井くんは、常人離れした正しさを自然と体現できてしまう特別な少女と出会うことで、そのパトスを愛へと昇華していく。
 花野井くんの情熱を抱きとめ方向づける中で、ほたるちゃんは自分の正しさに何が出来るのか、その特別さを知っていく。
 お互い、全くもって普通じゃない事実を知っていく。

 それが傲慢な思い上がりにならず、極めて謙虚に誠実に、眼の前の誰かを尊重しながら幸せを探していく旅になれる期待が、トキメキいっぱいのクリスマスデートに豊かに映えていた。
 幸せだけど、自分を特別な一人として選び取ってはくれないいつもの家族行事から、高校生らしいハンディな手応えがありつつ、素敵な特別感に満ちてもいるお試しデートへ。
 屋台食べ比べにイルミネーション、スケート体験と続く二人のスケッチが、そこで何が生まれているかを適切に削り出していって、大変いい。

 触れ合わなければ転んでしまう、同意と必然に満ちた身体接触
 やりたかったけど出来なかったスケートは、二人の恋の現在地を適切に示す。
 お試しで付き合って、ノートにしたいことを書いて。
 清く正しい…おままごとみたいな恋の先にある、魂と肉体の強い触れ合い。
 花野井くんはそれを強く望んでいて、ほたるちゃんはそれが良く解らなくて、二人の欲望のギャップはときに激しく衝突しかけるが、極めて善良な子ども達の魂が、恋心をお互いを傷つけない適正距離へと豊かに導いていく。

 どれだけ情熱が背中を押しても、ほたるちゃんのいちばん大事な所有物であるその体に触れる時は、『触っても良い?』と確かめてから。
 NOと言われるのなら欲望を抑え、YESと言われる時を待つ。
 理性と倫理の口枷をはめることで、恋の獣は人間の形を保っていく。

 このコンセンサス重視のダーリンっぷり、なかなか現代的で面白いなぁと思いつつ、ほたるちゃんが手渡してくれる彼女の強み…”正しさ”を花野井くんが学んでいく様子は大変に喜ばしい。
 正しすぎるがゆえに、他人の情熱を理解しきれないほたるちゃんが、花野井くんの溢れるLOVEを受け止める中、だんだん”それ”を理解していく様子とも重なるし。
 資質も性格も異なる二人が、お互いの凸凹を噛み合わせ混ぜ合わせて、違うからこそ互いの鏡となって真実の自分を見つけていく間柄を、幸せに作っていく。
 やっぱそういう、釣り合いのある恋を描いてくれると爽やかで良い。
 二人の関係すげーフェアだし、フェアになろうと頑張ってる。

 

 ほたるちゃんは世界にたった一人の自分がそこにいる実感を、幸せで清廉であるからこそ得れない人で、自分を求めてくれる眼の前の誰かを『世界にたった一人』と本気で求められる花野井くんと向き合うことで、それを学んでいくのだろう。
 これまで花野井くんの恋を不幸せに終わらせてきた、求められる強さと受け入れる優しさのアンバランスが、同じくらい奇跡の人格持ってる”自称・普通の女の子”と出会う中で是正され、あるべき善さが開花していく。

 手を差し伸べ、妬まず、濁らない。
 花野井くんが挙げたほたるちゃんの善さは、これまで求めて凡人共が返してくれなかった彼の祈りを、そのまま反映しているように思う。

 それはつまり、何でも与えてくれるスーパーダーリンに思える彼が何かを求める幼子な部分を全然残していて、救われなければいけない子どもである証拠だ。
 花野井くんは優しいほほ笑みとジェントルな仕草の奥に、結構深い傷を隠している感じがして、ほたるちゃんの自然な振る舞いがそれを適切に癒やしている手応えが、今回感じ取れて良かった。
 良すぎる顔面が邪魔をして、『あ、この人泣いてる子どもだ…』って気づいてもらえなかった少年が、ツラの良さに誤魔化されない鋭い視力を持った女の子と出会うことで、本当の自分を見つけてもらう。
 そういう話でもあるのだろう。

 とすれば、今回”看病”してたのはかなり大事な描写か。
 無意識に待望していた特別なお姫様抱っこを、自然手渡してくれる花野井くんもまた、ほたるちゃんの満ち足りた幸せの奥にある欠乏を暴き、癒やし、満たす特別な誰かで。
 そういう意味でも、二人はお互いの釣り合いが取れている運命の相手…なのだろう。
 このフェアな感じは、やっぱ好きだ。

 あとスーパーロマンティックを生み出すために都合よく機材トラブル起きて、最高の瞬間に復旧してドラマティックティック止められそうもない展開になるの、俺好みの心理主義で大変良かった。
 俺はプリキュアとか百合アニメとかで唐突に映えてくる、女と女が本音で触れ合うためだけの美しい空間が好き…。

 

 恋するなら花野井くんが良いし、花野井くんならいいな。
 そういう気持ちが自然と沸き上がっている時点で、お試しの”答え”はでてしまっているし、ほたるちゃんの過剰な正しさ、他人が持ってるパッションを感覚できない不全は、適切に丸められている。
 形から入る不自然を越えて、正しさを横に退けて何かを求める欲求が自分の中にもあるのだと、家族で過ごすクリスマスを自分だけの特別に変えた女の子は、だんだん実感していくだろう。
 その隣で、無限の愛と溢れる情熱を誰かに受け止め、返してほしかった少年も満たされ、自分らしさの使い方を見つける。
 すれ違いぶつかる時もあるけど、それすら幸せに触れ合う、恋という癒やし。

 幸福に無限延長を迎えた恋人試験がどこに行くのか、幸せに見取り図を描く第3話でした。
 キャッチーな状況とキャラで転がりだした物語が、その勢いを止めることなく一応の決着まで走って、さらにその先に可能性を広げていく。
 ”第一章”が果たすべき役割を見事に描ききっていて、大変良かったです。

 高校生主役だからこその透明度と幸福感、清廉な純情と豊かなロマンティックがしっかりあって、このお話でなければ感じられない芳香が豊かだった。
 世にラブコメは溢れているが、だからこそこの話じゃなきゃいけない特別さってのに出会えると、幸せな気分になる。
 ここら辺、ほたるちゃんが今回受け取った実感に似てるか。

 

 

 

・補論 顔立ちよりも雄弁に、己の在り方を語る靴たち。

画像は”花野井くんと恋の病”第3話より引用

 別れ際、恋人候補たちの足元を照らすカメラは、二人の装いが釣り合っていない様子をしっかり示す。
 デートするには芋っぽすぎる、ほたるちゃんのスニーカーとデニムに対し、大人びたバイカラーの花野井くん。
 それが多分、二人の現在地を何よりも雄弁に切り取っている。
 この足元の差異は不幸な摩擦ではなく、違っているからこそ照らし会える幸福な対照へと、この靴で進み出していく未来も教えてくれるわけだ。

 身長差のある二人でも、足元は平等に並び合っていて、しかし同じではない。
 同じではないからこそ面白く、無理な背伸びもなく、自然な歪さを隠すことなく晒しながら、ちゃんと向き合っている。
 恋と情熱が良く分からない未熟と、過剰に大人びてしまった痛ましさ。
 二人の足りない部分もお互いの靴選びには示されているが、しかしその欠落よりも、何も隠していないでいられる幸せ、それを見せあって認めあえる繋がりの強さが、より鮮明だ。
 足は未来へ進むための武器であり、そこに二人の現在地を率直に刻むことで、二人三脚で進んでいく未来への期待も自然高まっていく。

 いつかほたるちゃんが、花野井くんの素敵な靴に並び立つオシャレをするようになるかもしれないし、花野井くんが飾らない自分でほたるちゃんの前に立つ時も、必ず来るだろう。
 そんな”いつか”を見届けたくなる、チャーミングな二人の現在地。
 良く魅せてくれる第3話で、とっても良かったです。
 オーソドックスで濁りのない話運びに、こういう勝負をキッチリねじ込む手腕……やはり好きだ。