イマワノキワ

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ブルーアーカイブ The Animation:第8話『秘密』感想ツイートまとめ

 ブルーアーカイブ The Animation 第8話を見る。

 便利屋とゲヘナを巻き込んだひと騒動も落ち着いて、どっしり腰を落としてアビドスの五人…特にシロコとホシノに向き合う回。
 絞った分濃厚に感情や関係性を楽しい水族館巡りに焼き付ける作りになっていて、大変良かった。
 戯けたフリが上手いアビドスの重力源に、引っ張られる形でガンガン沈んでいく本筋をノンキに無視して、一年生コンビがメチャクチャイチャイチャしてたのが印象的だった。
 後輩にああいう、気楽で楽しい時間を過ごしてもらうために、ホシノは身売りまで考えてんだろうなぁ…どーにかしようぜマジでよー!!

 

 今回対外的な”お話すごろく”としては全然進んでいないんだけども、物語としての充実感、意味あるものが描かれている手応えは非常に濃厚で、やっぱキャラ絞って描写を積み上げる意義は大きいんだなと、今更ながら思う。
 ノンキにピュアピュアする一年コンビ、おっとり後方からみんなを見守るノノミ、感情薄いようでホシノを良く見てるシロコ。
 そんなみんなが大好きだから、笑顔の仮面で遠ざけ危険から守ろうとしてるホシノ。
 子どもだけだとどう考えても悲惨なことにしかならない危ういバランスの外に、頼りない保護者として立っているように見えた”先生”が、大人としての責務を果たそうと覚め続けている現状が、よく描かれていた。

 一見みんなが水族館で楽しくはしゃぐ楽しいエピソードなんだけども、そんな日々を心から楽しく思いつつも、どっかで年長者の責任を肩に食い込ませて必死に堪えてる、ホシノの健気が痛ましかった。
 そこにシロコが気付いていて、でもなかなか踏み込みきれないもどかしさと合わせて、”先生”という助力者がテコ入れないとどんな不幸が訪れるか、予感させる手際も良い。
 いや、このまんま想定される最悪にホシノが飲み込まれちゃったら、俺絶対許せないから先生マジ頑張れよって話ではあるんですが…今回はちゃんと、頑張ってくれる姿勢を感じ取れたので良かったです。

 自分を子どものままでいさせてくれる大人がいないから、ホシノはアビドス唯一の”先輩”として、子どもでしか無い自分を押し殺して生きているように見える。
 ”ユメ先輩”なる人に多分守られ、その生き方をトレースして戯けながらみんなを守っているように思える彼女が、フラフラ漂うクラゲじゃないことに、過去同じように守られただろうシロコは既に気付いている。
 大きな体でのんびり泳ぐクジラが、自分たちをその影に隠して庇ってくれている申し訳無さが、性急で切実なしがみつき方に現れていて、大変良かった。
 感情表現が巧くはないシロコが、ずーっとホシノ先輩好きなのは、このお話を好きになれる大事な足場だなー、自分的に。

 

画像は”ブルーアーカイブ The Animation”第8話より引用

 海の生物にまぶたはないので、ネているのか起きているのかは分かりにくい。
 海洋生物を愛するホシノのトーテムが何なのか、様々に意見はあるが、シロコは泳ぎながらでしか眠れないクジラをこそ、ホシノの本質と感じ取る。
 そんな彼女がたくさん遊んで疲れ果てて、まるで子どものように心からネれる瞬間が、美しい光の中で愛しい。
 そして”先生”は、子どもたちが無防備に眠るときでも起きている。
 それが一番無防備で、何もかもが壊れてしまう決定的瞬間になりかねないことを、解っているから…だと思いたい。

 そんな”先生”がみんなに買ってくれた、高く飛ぶイルカのオブジェ。
 皆が眩しい光の中、凄く近い場所に友情の証を置いているのに、ホシノだけは暗い場所で遠く見つめて、手を伸ばさない。
 それは愛すればこそ遠ざける、大事だからこそ距離を取る、戯けた態度の奥に隠されたホシノの不器用を、良く語っている絵だと思う。
 逆に言えばホシノがこの距離に立ち続けたからこそ、後輩たちはノンキに楽しい時間に没頭する子どもでいられる…ということなのだろう。
 でもそれは、ホシノ自身が魚にはしゃぐガキだって事実を押し流しはしない。
 押し流してはいけないのに、現状そうなりつつある。

 大人の責務として眠らないことを己に課していたホシノは、不寝番を引き受けてくれる”先生”が隣りにいるから、一瞬だけ子どもの夢を見る。
 でもそれは完全な信頼ではなく、自室に戻ればまた眠れない日々の中、自分が大人でいられてるかを、上手く笑えているかを”ユメ先輩”に問う。
 死別か離別か、匂わされるだけでアニメでの描写がないのでどうとも言えないが、描かれる重たさからすると二度と会えない大事な存在に、ホシノ自身もかつて子どもな自分を守られ、生き延びたからこそもう、子どもには戻れないのかもしれない。
 誰も守ってくれない厳しい海で、それでも誰かを守りたいなら、眠らない魚になるしかないのだ。

 

 それがオジサン顔の剽軽でもう隠しきれないほど、無理が軋む生き方だということを、シロコも先生も良くわかっている。
 守られるばかりだと思っていたシロコが、自分に近い暗さや重さをちゃんと見れる存在になっていて、隠し通したい影に踏み込んできた時、ホシノは何を思ったのだろうか?
 思わずおちゃらけた態度で誤魔化すくらいに怖かっただろうし、心のどっかで頼もしく安心もした…かもしれない。
 その踏み込みが何にたどり着いてしまうか、学校外で色々やってるホシノは思い知らされてて、後輩だけは守ろうと、自分の本音に踏み込ませない。
 すっかり余裕がなくなってきて、その防衛策が痛ましさを帯びてもいた。

 崖っぷちな対策委員会が、それでも明るいムードで生きていくのに、ホシノの靭やかで軽やかな生き方は大きな仕事をしてきたと思う。
 眼の前の苦しさに押しつぶされて暗い目をしてたら、後輩たちが笑うどころじゃないし、『楽しい方が良い』と思えるような何かをホシノ自身手渡されたから、笑うことを諦めたくないんだと思う。
 でもそんな風に無理して、明るく笑い続けるのって、子どもが受けちゃいけない拷問だろ…。
 そう思わされる、大好きな海洋生物をたっぷり見れて、心の底から楽しめる課外授業であった。
 …今回のエピ、先生が引率して後輩がハシャイで先輩が見守って、すごく”学校”してるのが自分的に良かったんだな多分。

 

 

画像は”ブルーアーカイブ The Animation”第8話より引用

 辛い時は辛いって、先輩だろうが”大人”だろうが言えたほうが絶対良くて、でもホシノはそれを選べなくて/選ばなくて、んじゃあ誰がホシノを闇から引っ張り上げんだよッ! という話ではある。
 ここら辺の構図を後半の鋭い描線はしっかり切り取っていて、ホシノが孤独に冷たい影に飲み込まれていくのと同時に、シロコは”先生”に自分一人では抱えきれない荷物を預け、”先生”はその信頼に応える姿勢を見せた。
 やっぱ”そこ”っすよ。
 ガキが死にそうな顔でしがみついてきたら、大人名乗る側は抱きしめてあげて欲しいの俺はッ!!

 やりすぎなくらい眩しい屋上の光は、ホシノがひとり踏み込む困窮にどう踏み込むか、前向きな希望を暗示もしている。
 胡散臭く頼りない”先生”が、真実アビドスの子ども達を守り導く大人として、それぞれの事情に踏み込み手を差し伸べ、信頼を築くこと。
 シロコ相手にそれが出来ているから、ここで彼女は退学届を見せたのだろうし、同時にホシノ相手にはまだまだ信頼度が足りてない。
 ずーっと後輩の後ろ、共同体に割り込んできた大人を笑顔の奥で睨みつけて、その真意を測っていたからなぁ…。
 気楽な暴力が横行しそれを抑える秩序のないキヴォトスは、そういう態度をホシノに余儀なくさせていたんだと思う。

 一人きりその背中に沈みかけの船を乗せて、ピンク色のクジラは荒波を泳いできた。
 その気高さと、辛さを表に出さない強さは本当に偉い。
 でも一人で泳げる時間は限界が来てて、クジラは気高く我慢強いからこそ、沈むまで誰かに手を伸ばすことはない。
 なら深く暗い海のそこまで潜って、自分が頼るに足りるもう一人のクジラであると……もう独りで泳ぐ必要はないんだと、”先生”はホシノに解ってもらわなきゃいけない。
 『自分ひとりだと出来ないので、お願いします』ってシロコにも言われちゃったからさぁ…人間として”そこ”譲るの、俺的には全くもってNOなのよね…。
 マージで先生には、ここからの終盤戦頑張っていただきたい。

 

 というわけで、待ってましたのホシノメイン回でした。
 笑顔の奥に影を隠し、親しみやすいようでいて孤独で、微笑みながら傷ついている。
 複雑で魅力的なキャラクターをしっかり掘って、彼女の苦境に全力出さなきゃ許されない状況を、上手く整えてくれました。
 『プレイヤーキャラクターの介入がない場合、あってはいけない悲惨さに飲み込まれ、望まぬ結末に陥る存在』をヒロインと定義するなら、ホシノは本当にヒロインとしての完成度が高い。
 彼女自身も誰かに救われた子どもだったっぽいのが、更にブースター積んでるよなぁ…。

 闇の中微かに差し込んだ温かな光へ、”先生”は進み出せるのか。
 次回も楽しみ。

 

 

・追記 孤児たちが必死に背伸びして、世界に足りてないけど必要な機能を不器用に背負ってる姿は、痛ましいけど尊くて、見てると『とっととどうにかしろよマジよー』という気分が強くなる。

 ていうか”ユメ先輩”を失ったホシノの傷が全然治ってなくて、笑顔の奥でずっと泣いてる子どものまんま”大人”頑張って後輩を守ってる健気さが、マジでやべー。
 自分と同じ境遇だったシロコの手を取ることで、ホシノ自身押しつぶされそうな自分を支えている部分もあったと思うんだが、そんな愛に守られてシロコも情緒を育て、ホシノ先輩が何かを抱えて苦しんでいる事実に、目が向くようになった。
 それは誇って良い成長の奇跡なのに、甘えたら全部潰れちゃうから身を引いて、戯けた態度で誤魔化してる。
 ホシノとシロコの擬似親子関係を、対等な距離感に是正するのも、今後の物語の柱になってく感じかなぁ…。