イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

となりの妖怪さん:第9話感想ツイートまとめ

 となりの妖怪さん 第9話を見る。

 虹ちゃんとりょうくんの難しい思春期、ジローとむーちゃんの拗れた関係が、水に食われる一大事を通して答えを見つけていくエピソード。
 日常の半歩先に、絶対帰ってこれない虚無が広がってるのマジ怖い。
 けども、この容赦のなさが”となりの妖怪さん”独自のリアリティであり、こっちと同じように一寸先の闇を見据えながら、少しでもみんなで笑えるよう頑張っているのだと思った。
 放送も3/4を過ぎて、ぶっちゃけ最初思ってたんとはだいぶ違う味わいのお話なんだが、むしろそこが面白く好きになっているので、良い出会い方が出来たなぁと感じているアニメだ。

 

 話は人間万事塞翁が馬、ネームドのギクシャクした関係性が命がけのピンチを乗り越える中で整地されていくんだが、名もなき同級生がりょうくんに『オメーがやってるの無視だかんな! 良くないことだかんな!』とちゃんと言ったのが、万事良いところに収まる重要なきっかけになってるのが、凄く良かった。
 ちょっと間違えたら永遠の別れになっていた、日常に潜む危うい虚無。
 いつでも言えるはずの言葉が、簡単に永遠に言えないままになってしまう残酷な世界に、立ち向かうための武器は別に、主役だけが持っているわけではない。
 色んな人がこの世界で自分の物語を生きてて、その重なりが社会を成り立たせているのだ。

 そういう関わりを活かす形で、めっちゃ真っ直ぐに小さな誤解をほぐして、虹ちゃんとりょうくんが仲直りできたのは素晴らしい。
 引っ込み思案に思える虹ちゃんが、血筋由来の危険を顧みず自分を守る鎧を脱ぎ捨て、河童だからこそ出来る戦いに迷わず飛び込んでいったの、メチャクチャヒロイックで良かった。
 その代償で虚無に食われかけもするのだが、そこは半神半妖なジロー明神と彼を慕う皆が頑張って、大事な人を取り戻せた。
 魔法と呪いが息づくこの世界、ジローが持ってる土地神としての能力は極めて実際的で、彼一人が何でも背負い込むのは無理もないなー、と思わされるだけども。
 それでもむーちゃんは、ジローを助けたい。

 

 やっぱこのアニメは、兎にも角にもむーちゃんを可愛く健気に描けてるのが強い部分で、一見子どもゆえの癇癪にも思える感情の爆発が、『そらーまーしょうがないよ…』と納得できる思いにちゃんとなっているのが、大変いい。
 神は人と交わり、人は神を助け、共に生き去りゆくを見守って、日々を紡いでいく。
 そういう場所で真実平等に、人と妖怪、あるいは神が生きていくためには、物わかりの良さをぶっ飛ばすむーちゃんの思いが、やっぱり必要なのだろう。
 人生の課題が動く契機を年長者や主役に限定せず、熱い思いを抱えた子どもや名もなき隣人がかなり大事な仕事をするの、平等で好きだ。
 ジジイババアも大事な仕事するしな…。

 むーちゃんの思いを間近に受け取ったことで、ジローにかかっていた呪いも緩み、思いがスルリと漏れ出す。
 曾祖母から投げかけられた呪いは、ままならぬ人の心の一側面でしかなく、裏腹に未来を寿ぐ祈りもまた、出せない手紙に刻まれていた。
 幼いむーちゃんの前でようやく泣けたジローは、里の守護神として人を守る責務を降ろして、彼個人の弱さや哀しみと向き合えてた感じがした。
 長い時を生きる彼は、感情ある一人間としての自分を遠ざけることで宿命に耐えてた部分があったんだろうけど、むーちゃんという受け取り手を得ることで、”ジロー”のまんま時に向き合う”弱い強さ”にたどり着けた感じがあった。

 

 ここら辺の自分探し人情旅は、ぶちおくんとか百合ちゃんとかが迷った旅路と重なっていて、しかしそれぞれ個別に違う。
 違うのに同じで、同じなのに違ってるから面白い人間と妖怪の在り方を、細やかに描けるのが日常群像劇の強みだな、とも感じた。
 むーちゃんと改めて約束を交わして、お互いの人生を交わらせていく覚悟を涙の後に示したジローの暮らしは、まだまだ続いていく。
 それを親父的立ち位置である太善坊がちゃんと聞いているのも、大変良かった。
 あと母の人生が哀しみだけに呪われていたわけではないと、手紙を見つけたことでしれたお婆ちゃんもね…。

 あれは完成した年長者に思える人も、人間が持ってて当然の柔らかく傷つきやすい部分を持ってるって描写だと思う。
 人の願いを聞き入れ守る、里の神として生きていくために曾祖母ちゃんの末期を聞き届け、忘れようとしていたジローの涙も、そういう部分にむーちゃんが触れてくれたから、ようやく流れ出したのだ。
 そんなジローの存在が、父亡き世界を生きてるむーちゃんの支えにもなっている。

 

 年も種族も関係なく、お互い様でなんとか生き延びているこの世界は、けして悪いもんじゃない。
 そう思える新年、全体的に幸せだけどやや不穏なヒキで、いよいよクライマックスになりそうです。
 次回も楽しみッ!!