ヴァンパイア男子寮 第9話を見る。
横恋慕に種族の風習、偽られた性別に絡まった運命…。
『山盛り積んだ物語の燃料を、ガンガン連鎖爆裂させっぞ!』という、とにかく手数が多く展開が早い、このアニメらしい回。
ドキドキファンサービスてんこ盛りの改装工事から三者同衾、欲望迸るパーティーだけでも盛りだくさんなのに、突如顔を出した謎呪術で性転換ぶっカマして次回に続くという…。
チーズハンバーグ三種盛りにステーキととんかつ付けてドカ盛丼飯を付けたような、体育会学生相手の洋食屋みたいなやり過ぎ感がたまらない。
…なかよしっ子はサービスに飢えた、肉欲満載プレデターだった?(誤った帰結)
寝言はさておき、息をするように女バレのピンチがペンキと一緒に降り注いだら、キラキラエフェクト共に男その1が上着を脱いで半裸になり、男その2がドキドキモーションをかけてくるという、この作品特有のスピード感を開幕から堪能して、しばらく笑ってた。
マジでタイミング見逃さず全力でサービスねじ込んでくる強引さが、ある意味少年誌エロコメっぽいパワーを持ってて、実は自分の漫画遍歴と相性良いことに最近気づいた。
”ToLOVEる”のエロハプニングと、パワー勝負って意味ではだいたい一緒だろ、このアニメもロマンティック・サービスッ!
そういう愛と欲のドカ盛、俺は嫌いじゃないぜ…。
美人ちゃんの性別詐称がかなりややこしい感じで拗れてて
ルカ 男としての美人ちゃんが好き、”運命の女”も好き
蓮 男と知りつつ美人ちゃんが好き
美人 自分が”運命の女”だと唯一知ってる、ルカが好き
つう、視点のズレを生かしたすれ違いが複雑に拗れて、いい具合に訳分かんなくなってもきた。
『男なのに好きになっちまった…』みたいな葛藤蹴っ飛ばして、男装女子のジェンダー棚上げして個体への愛で押し切るのかと思ってたら、ヴァンパイア社会の古臭い異性愛主義が顔出してきて、美人ちゃんと”運命の女”の間にある壁が、状況を複雑にしてる。
こういう形で、オールドスクールな”家のしきたり”使うのオモロイね。
美人ちゃんの性自認はガチンコで女だし、男装も流れでやってるだけなんで女バレへのハードルは実は低いんだが、なんか隠したまま下手に状況と感情が固まってしまったので、動かすと何かが壊れそうでバラせない…みたいな状況である。
蓮くんは先に真実を知ったアドがあるのだが、横恋慕補正で打ち消されてるのと、美人ちゃんもルカくんもバッチリ両思い(な上に、後出しで『子供の頃、運命的に出逢ってた』要素まで出してきた)なので、まー二人の恋が燃え上がる薪でしかねーわなッ!
『性別関係なくお前が好き』アドも、実はルカくんもおんなじなのであんま有効じゃないという…入念に負けれる調整食らってんなぁ、蓮くん。
ここで蓮くんが物わかり良く状況を見据え、身を引いてキューピッド役に徹しちゃうとあっという間に話が終わるので、くそオヤジの寝言とダンピールの血のあわせ技で、軽く正気を失ってもらうッ!
大原さんが声をやってるママンの、超生臭い”女”っぷりもなかなかヤダ味凄かったが、主流派にダメージ入れるために息子の性欲煽って公然NTRブチ込もうとする親父の最悪っぷりが、本当に凄かった。
薄汚い大人を間近に置くことで、主役たちのピュアっぷりを輝かせようという配置なんだろうが、永生者とは思えないリアルな終わりっぷりが本当に凄くて、なかなかビビるね。
クソ親父の甘言に乗せられる形で、性転換呪術を牙に乗っけて公然吸血キメたわけだが、この捻くれまくった性認識はまー、あくまで恋の火種なのだろう。
性別違和とかセクシュアリティとかガチる話なら、あの異次元ウィッグで女の象徴たる長い髪を入れたり出したりはしてないわけで、ヴァンパイアのしきたりと同じく、あくまで美人ちゃん個人を求める”真実の愛”がルカくんにあるのか、確かめるための試練の一つって感じがする。
このポップで大衆的な手つきでもって、ガチ掘りしたら相当難しく厄介なネタを踊りきってしまう所が、このお話の強さなんだと思う。
性別関係なく、ただただお前が欲しい。
一見アヴァンギャルドなようでいて、極めて世に流れる異性愛・一夫一妻・運命的自由恋愛規範に忠実な結論が自分たちの真実であることを確かめるべく、美人ちゃんとルカくんを巡る状況はガンガンに拗れていく。
ヴァンパイアという背徳的な題材を選びつつ、中核にある規範は極めてスタンダードで純朴なのが、やっぱ面白い話である。
大人の事情や思惑、嘘や誤解に振り回されつつも、あくまでピュアで真っ直ぐな彼らが愛の試練に打ち勝ち結ばれる日は、果たしてアニメの放送期間で訪れるのか。
どうまとめてくるかを楽しみに待ちつつ、とんでもない性転換爆弾投げ込んでの次回の放送…とても面白くなりそうですね!