イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

僕の妻には感情がない:第1話『家電が妻になりました』感想ツイートまとめ

 僕の妻には感情がない 第1話を見る。

 杉浦次郎の原作を手塚プロダクションがアニメ化した、家電美少女と社畜青年の奇妙なラブコメ……その第1話。
 所帯じみた四畳半、主人公とヒロインでまずは狭く滑り出すスタートとなったが、全体的な印象はなかなかいい。
 酒の勢いも借りて妄念暴走させる主人公が正直ややキモいが、『裏次郎先生の描く男がキモくねーワケねーだろ!』というツッコミが自分の中から湧き上がり、十分味として食える範疇だった。
 駆動音キュイキュイ、カメラアイもつぶらなミーナちゃんがアンドロイド・ヒロインとして大変いい感じで、そこでまず食べれてしまうのは大変いい感じ。
 可愛いの大事よホント。

 

 家電にしては複雑なコール&レスポンスが成立しているように思える、ミーナちゃんは果たしてシンギュラリティに到達しているのか、それとも見せかけの応答性に魂の欠片を見出しているだけなのか。
 今後彫り込んでいくと色々厄介で、だからこそ面白くなりそうなネタの片鱗は見えつつ、全体的には朴念仁ヒロインとすっとぼけ男子のすれ違いコメディといった塩梅で、掛け合いが面白い。
 機械であるミーナちゃんには何もかんも言葉で説明しなければいけないため、口下手に見えるタクマが小っ恥ずかしい内面をどんどん言語化し、口から飛び出した思いに悶えるさまが、いい具合に純情で可愛らしい。

 女の形してりゃゴムホースにでも突っ込んでいきそうな、ジトついた性欲の気配も匂わせつつ、二人の距離感はあくまでプラトニックであり、それでもタクマの思いはドンドコ加速していく。
 本当だと思えるものと、本当であるものの間にある複雑さを上手く乗りこなせない、ナードな匂いがプンプン漂うタクマの造形だが、酒の勢いで口にしてミーナちゃんを変えてしまった自分の言葉から、あんま逃げずに真顔で身悶えしている様子には、なかなかいい感じの好感をもった。
 流されやすく勢い重視、浅はかに思える青年だけども、起こった事自体には存外前のめりに対応してて、彼なり家電お嫁さんに向き合っているのは良かった。

 

 タクマの内側にあって、ミーナちゃんの”人間味”に投射されているものが、果たして”本当”なのかどうか。
 プログラムされた従順を、自発的な愛だと思いこんでエゴを押し付ける一方通行な危うさが、量産される家電との恋には必ずつきまとう。
 この身勝手を乗り越えていける何かが、今後作品独自の面白さとして突き出されてくると、色々類似作も多いお話に目鼻がついて、なかなか面白くなってくるかなと思う。
 それがなかなか美味そうな料理作画に代表される、二人で積み上げていく生活の方向なのか、SFテイストな思弁の方向になるかは、まだまだ全然解らなくて面白い。

 常時動揺することのないミーナちゃんのクールさ、家電としての異質性が、逆に妙な可愛さを生んでいるのは、とてもいい感じだ。
 うっかりお嫁さんになってだの、好きだだの、コミュニケーションを成り立たせる応答可能性を求められない家電相手だからこその本音を投げつけ、それに答えて己を変えてくれているように見える、ズレたまんま繋がったタクマとミーナちゃんの繋がり。
 それがどういう真実味を与えられていくにせよ、世間様に流通する面白くもねー常識でもって、ワーワーガーガー壊されるのは淋しいなと、少し思った。
 ヘンテコでも幸せで、トンチキでも繋がってると思えるなら、それはそれでいいじゃないか。

 そういうハズレモノの目線で二人の距離感を既に見てしまっていて、それなら初手の掴みとしてはかなりいい感じなんだと思う。
 一人暮らしの孤独と労働の過酷を、飲酒で誤魔化している感じがかなりヤバいタクマであるが、今後は依存対象をミーナちゃんに切り替えて、より健全で前向きなヤバさに突っ込んでいくのだろうか?
 そこら辺の変化も、ほんわかコミカルに描いてくれると面白そうである。
 望む反応をそのまま返してはくれないが、だからこそより興味深い他者として、タクマがミーナちゃんを鏡に自分を捕まえ直してくれると、モノを相手に自己発見をするお話としての手応えが生まれてくると思う。

 


 タクマからミーナちゃんへの矢印は、悶々としたモノローグに乗っかってじっとりしっかり伝わってくるわけだが、モノでしかないミーナちゃんはタクマをどう思っているのか…そもそも『思う』とはなにか?
 ここに一切踏み込まれない、モノの無意思性にガチンコな展開が続いていっても面白いなぁとは思う。
 魂とやらが宿ったモノだけが、人と並び立てる特別さを得るよりも、正体定かならぬ不確かさを抱えつつ、それでも確からしく思える愛しさとか、飯作ってくれるありがたみとか、そういうモンに身を預けて進んでいく話になると、何か今っぽい味になる…かなぁ?
 ここらへんは二人きりのアジールから、世界が広がって解る部分か。

 ともあれ結構好みの手触りの第一話であり、大変楽しかった。
 感情の発火速度がちょっとヤバいタクマと、家電らしい朴訥でクールにボケるミーナちゃんのかみ合わせが良くて、見てて楽しいカップルだと思う。
 『女の形した飯炊き道具に、一方的に寂しさ叩きつけて満たしてる』つう、初期設定が必然的に孕むキモさヤバさと向き合う気があるのか、はたまた開き直るのか。
 四畳半の楽園から進み出して、色んなキャラが世界に混ざってくる時、また別のものが見えてくると思う。
 公園デートはそういうものの片鱗を教えてくれそうで、次回も楽しみだ。