- ・はじめに
- ・銀河特急ミルキー☆サブウェイ
- ・陰陽廻天 Re:バース
- ・カラオケ行こ!/夢中さ、きみに。
- ・その着せ替え人形は恋をする Season2
- ・ぷにるはかわいいスライム
- ・New PANTY&STOCKING with GARTERBELT
- ・光が死んだ夏
- ・青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない
- ・サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと
- ・ウィッチウォッチ
・はじめに
この記事は、2025年7~10月期に僕が見たアニメ、見終えたアニメを総論し、ベストエピソードを選出していく記事です。
各話で感想を書いていくと、どうしてもトータルどうだったかを書き記す場所がないし、あえて『最高の一話』を選ぶことで、作品に僕が感じた共鳴とかを浮き彫りにできるかな、と思い、やってみることにしました。
作品が最終話を迎えるたびに、ここに感想が増えていきますので、よろしくご確認を。
・銀河特急ミルキー☆サブウェイ
ベストエピソード:第6話『カートとマックス』
各話感想は描いていなかったが、毎週放送を心から楽しみにしていたお話だった。
今クールにおいて、最も「完璧」という言葉がふさわしいアニメだったと思う。
コスパ時代に似合った三分間という放送形態に、詰め込めるはずがないドラマと場料と可愛さをギュッと詰め込み、ギャラクシー社会不適合者達が背負うそれぞれのままならなさと、偶然が繋ぐ運命の絆を凄まじい濃厚さで描き切り、見ごたえと爽快感が同居していた。
短い尺に何を描くか、背景の小物レベルまで徹底的に考え抜かれた世界観構築、圧縮されたキャラの見せ方が適切に暴れまわり、出てくるキャラクター全員好きになってしまう強力な引力が、銀河レベルでしっかり生まれていた。
レトロフューチャーな雰囲気をなぞるだけで終わらず、SNSを活用したリアルタイムでの設定補佐などで分厚さを補って、チハルたちが生きている世界独特の魅力をしっかり削り出し、視聴者を引き込む簡勁な腕力は、まさに圧倒的だった。
厳選されたキュートなダルさとテンポで展開するダイアログは刃のごとく冴え、掛け合いを聞いてるだけで楽しくなっちゃう会話劇の面白さと、要所要所で冴えるアクションの面白さ、超短編連作だからこそ原始的な音ハメの快楽を効かせてくる演出の妙味も、見事に全編花開いていた。
この作品は「意図なし、主義なし、主張なし!」をキャッチコピーにしているが、12話の大スペクタクルを見届けた視聴者は、これが空言であることをよく思い知らされているだろう。
それぞれ個別の形で人格に歪みを抱え、褒められたもんじゃあないダメっぷりに染まった銀河の底辺たちは、しかしそうなるだけのねじ曲がり方を確かに宿していて、そこから自分を引っ張り出すだけの強さもまた有していた。
最初は偶然集っただけで、むしろクズらしく反発し合うだけの六人は奇妙な事件を共に駆け抜ける中で、欠けていたものを誰かから手渡され、クソみてーな社会の勝利者共が押し付けてくる人生の正解を、己の意志で跳ね返していく。
そこには遠くて懐かしい銀河を舞台にしたからこそ際立つ、異質なはずなのにどこか懐かしい親近感と、余計な飾りがない最底辺のゴミにこそ抱く愛しさが、確かにあった。
そういうモノを生み出す裏に、今現実に広がる世界への疑問や不安、それを蹴り飛ばす決意や意志が燃えていなければ、こんだけアツい物語は綴れないだろう。
このお話には意図も主義も主張も、確かなホンモノとして燦然と輝いているのだ。
その上で「意図なし、主義なし、主張なし!」を掲げたのは、そういうのダルく押し付けてこない、ショートでシャープで気持ちいいアニメをひたすらに求めている僕らにニーズに、ピタッと寄り添う販売戦略……であり、作品供給者としての優しさなのだと僕は思う。
卒業制作だった前作から一気にステージを拡げ、全国ネットでの定期放送、多言語での世界同時配信、各種コラボにメディアミックスまで、作品としての仕上がりに釣り合うだけの商品強度を作り上げていた今作は、”今”どう勝つかを考え抜いた物語だと思う。
それは劇伴の選択から作品の温度感、チャーミングなキャラデザに至るまで、作品を構成する全てに及んでいる。
娯楽飽和の死海にプカプカ浮かんでる、疲れ果てたボンクラどもに自作をどう刺すのか、考え抜いて撃ち抜かれた一発の弾丸はしっかり、世界を打ち抜き勝ちきった。
気楽で、短くて、疲れなくて、楽しい。
そういう精神的慰撫剤を求める市場に相応しい形に作品を形成し、それだけで終わらない作家性の刃を静かに仕込み、楽しみ夢中になる中でそれがしっかり刺さる。
一瞬で消費されるプロダクトでは終わらない、一つの一大ムーブメントとしてさん分アニメ連作を形作るためには、表面的な手軽さと圧倒的な奥深さを両立させる、同時代的魔手が必要だったのだろう。
そして、それをこの物語は成し遂げた。
ここら辺のメッセージの強さを一番感じたのが、この第6話だったのでベストエピソードに選ぶ。
オータムちゃんに話しかけるチハルがあんまりにも可愛すぎて、ガチで300回くらい見返した第2話とか、全ての伏線と関係性がゆかりんソングと最高アクションに結晶する最終話とかも素晴らしいのだが、一番「おっ…」てなったのはやっぱこの話数で、そういうことを感じさせてくれるエピソードは自分的にとても大事だ。
ここまで意味深な余裕(と裏腹な、居場所のない静かな焦燥感)を匂わせていたボーイズ二人は、ここでうち捨てられ顧みられない社会の廃棄物としての顔を顕にし、他の不良どもとはちょっと違う軍人上がりの実力と、それがくすぶって立ち上る黒い煙を見せてくる。
それは色んな人間を食いつぶして成立しているこの世界に、ブスブス満ち溢れているありふれた苦しみであり、そういうものに向き合い描こうとする話なのだなと、ズブっと深く刺してきた。
「クズが主役の軽い作品でしょォ~」とナメてた(計画的にナメさせられてた)分、このナイフは切れ味がよくて、ここから滴る魂の血をたっぷり味わいながら、最後まで楽しく見せてもらったわけだ。
でもそれはここが一番目立つという話で、マキナとチハルのダルいやり取りの狭間に、権力の走狗でありながらまぁまぁゴミカス共の顔を見てくれるリョウコさん等身大の視線に、後に触れ合う過保護な不良娘と実はかなりヤれるイキリボーヤの生き様に、しっかり刻まれている傷である。
赤膚の強化人間と鋼鉄のサイボーグに姿を変え、人間を超越し銀河生命になったようでいて、人間の面白くもねー部分もきっちり引き継いでノスタルジックな、ど~しょうもない世界。
そこでダルく生きてるクズにこそ、真実人でありたい小さな祈りがあって、それは幾度も世界や自分のままならなさに殴りつけられ、なお諦めきれず人は戦い、繋がり、立ち上がっていく。
そのシンプルで真っ直ぐな物語を、極めて変則的な放送形態にしっかりと描ききったこの物語は、やっぱり「傑作」の二文字を背負うに相応しいと思う。
凄く面白かったです、ありがとう!
……このアニメの後にショートアニメで闘うの、マジで大変そうだなぁ……。
・陰陽廻天 Re:バース
ベストエピソード:第11話『覚悟を決めろハレアキ!電祇平安京、最終決戦!!』
まー難しい作品だった。
ループものにつきものな感情と関係性のリセット、ショックを作るために蕩尽されていく命との向き合い方、人知を超えた超常現象を乗り越えるためのロジック構築。
派手な題材を多数選び、溢れんばかりにてんこ盛りにして走り切るには、ベーシックな要素の処理が甘く、話数を重ねるほどにノレない部分が目につき出した。
僕はそもそもにおいてセンセーショナルな飛び道具より、地道で古臭い堅実さで物語を食べるタイプの視聴者なので、根本的な相性が良くなかった感じではある。
連発されるどんでん返しの取り回しに力を入れすぎて、もうちょい時間をかけて煮込んで欲しかったり、描かれてるものの奥に回り込んでみてほしい部分が、ザラリとした質感で積み上がっていく視聴だった。
理不尽を跳ね返す原動力になる業平くんのヤンキーイズムが、無条件の真理として受け取るには説明不足かつパワーにも欠けていて、主役がやっていることに納得いかないまま、状況が進んでいくのも厳しかった。
そういう至らなさを可愛げに欠ける何かが、業平くんに欠けているように感じながら作品を見ていたのも、まー相性悪かったなと思う。
ここらへんのザラつきを全部バカにし罵倒しぶっ叩き、元気に大暴れぶっこいてくれたから、衝撃のラスボス変化をキメたツキミヤさんのことが、僕は好きなのかもしれない。
多分作品としては否定するべきノイズとして描いたんだろうけど、あの人が本性表してからツッコんだ要素は結構しっくり来る部分が多く、「よくぞ言うた! 突き出された泥まみれのアンチテーゼに、主役がどうテーゼを返してジンテーゼに持ってくか見ものだな!」と、古臭いヘーゲル主義者の顔で前のめりにもさせられた。
まぁあんま心寄せることもなく、妙にすれ違ったまま収まった感じに次の話はなるんだが……。
世界の支配者ッ面でループを楽しみつつ、晴明の天才をハックして便利に使ってるだけというしょーもなさもひっくるめて、ツキミヤさんは良いラスボスだったと思う。
そんな彼女が良いヒロインとは思えない描き方が、ツキミヤさんへの慕情を燃料にして話を進んでいく業平くんにノリきれない理由の一つでもあった。
なので、この話数で世界を玩弄する最悪ビッチとして覚醒を果たしたのが、良かったのか悪かったかのは悩ましい。
ほんっと前半戦のツキミヤさん、ヒロイン力壊滅的に弱いからな……。
でもツキミヤさんがオモシロ悪役になってくれて、悪辣な態度で自分の中の違和感を曲りなりともぶん殴ってくれたおかげで、僕はこのアニメを最後まで見れた。
「まぁ相性悪い作品だったな……」と思いつつも、ゴミ箱に投げ捨てありがとうも言わないような別れ方はしないですんだ。
そういう風に思わせてくれるキャラは、やっぱ大事だと思う。
さよならツキミヤさん……アナタの抱えた身勝手な泥は、結構面白い味がしました。
・カラオケ行こ!/夢中さ、きみに。
ベストエピソード:夢中さ、きみに。第2話『友達になってくれませんか/描く派』
同一作家の単行本二冊を、10話使ってアニメ化する変則的な試みであったが、真山まやのセンスと価値観がしっかり二つの物語に橋をかけて、別々なのにたしかに何かが繋がっているという、独自の感覚とともに見終えることが出来た。
みずみずしく弾ける思春期へのフェティシズムや、トボけた笑いの奥に煮えたぎる感情のマグマを睨みつける視線の鋭さなども強靭だったが、ヘンテコで個性的な人間に振り回され、惹きつけられて生まれる人間関係の火花への、温かな視線が作品群を豊かにまとめていたと思う。
フツーの括りからはみ出し、厄介者として取り除かれている人達が持っている不思議な引力に、振り回されかき乱される人たちが、どんだけ面白いのか。
愛情と親しみを持って楽しく描き続けることで、世界の枠を拡げていってくれる爽やかさがパワフルで、コメディが持っている力を最大限に活用しているなと感じた。
そんな穏やかなヒューマニティに支えられて、色んな変人が元気に踊る物語は様々な画角から、笑いに満ちた出会いと触れ合いを切り取っていく。
自分勝手なカラオケヤクザ、奇妙な振る舞いに魅力を宿す”かわいい”人、己の魔性をタタリで覆い隠した美少年……。
彼らが引き起こす物語は個性に似合って多彩で、しかし日常から逸脱した異質性ではなく、それもまた日常の一部なのだと柔らかく包み込む、懐の深さで描かれる。
ここも笑いの力が活用されているところで、どんだけトンチキだろうが笑っちゃった時点で、見るものの側に奇人たちの振る舞いは引き寄せられてしまう。
そうやって近くに寄せてしまったものを、人間突き飛ばすことはもう出来ないわけで、凄く的確に見知らぬ異物を読者に抱っこさせ、慈しませるレトリックがあった。
こういう巧さを一切目立たさせず、シンプルに自然に笑える物語として……あるいは笑ったからこそしみじみ、変人たちの中に燃えている熱に感じ入るお話として、しっかり仕上げる作劇筋力も力強い。
そんな作品群の中から子のエピソードを選ぶのは、描かれた景色が本当に素晴らしかったからだ。
僕はアニメの諸要素の中でも、背景美術が特に好きなアニメファンなのだけども。
”夢中さ、きみに。”林くん編の舞台となった秋の描き方は、筆致も色彩も作中での活かし方も凄く良くて、特別な感慨を引き起こしてくれるものだった。
「コメディに美麗な背景なんて必要あるのか?」と問われそうだけど、あの水彩調の秋に滲む日常の美しさ、ヘンテコな日々の中確かにきらめいている眩しさがあってこそ、変人たちの奇妙な日々は笑えるのだと思う。
この日常の描き方はこの話数だけではなく、”カラオケ行こ!”でも二階堂くん編でもとても元気で、奇妙な日々を自分たちに引き寄せて感じさせるため……あるいは当たり前に思える場所に確かに埋もれている楽しさを引き出すために、確かな武器になっていたと思う。
普通じゃない面白さを炸裂させながら、凄くて馴染みの良い人間味をしっかり宿して、特別な楽しさと親密さを同居させてくれた物語たちの背中を、静かに支える世界構築。
そんな強さが一番出た話数で、見るたびにとても良い気持ちになる。
奇妙で愛しい人達が、確かにそこで生きている息吹を感じられる秘密がどこにあるのか、鮮明に教えてくれた話数である。
・その着せ替え人形は恋をする Season2
ベストエピソード:第18話『俺が絶対に 俺の手で』
元気爆発オタクギャルとムッツリ職人くんの甘酸っぱい恋愛模様とか、コスプレという趣味を通じて”好き”を多角的に肯定する人間賛歌とか、それが高じてヤバい感じになっちゃった限界人間のオモシロコメディとか。
色んな楽しみ方があって、その全部をしっかり受け止めてくれる豊かなお話であるけども、自分はやっぱり五条若菜がその重く捻じくれた魂を、どう光の方へと運んでいくかに一番興味がある。
過去のトラウマを引きずり、自分も自分の”好き”も堂々誇ることができなくなってしまった少年が、ひたすら明るく真っ直ぐに人生を駆け抜ける少女との出会いと触れ合いを通じ、新たな自己像を見つけていく。
……とまとめるには、海夢ちゃんが五条くんから受け取っているものが多すぎて、一方的な救いや変化を陰の側から描くというより、二人それぞれの(あるいはお互いの中にある)陰陽を笑顔いっぱいに混じり合わせながら、最高の自分たちを探していく旅なんだと思うけども。
どっちにしても、五条くんは海夢ちゃんと出会うことで自分が抱えていた陰に光を当てられ、違う世界の住人だと想っていた女の子を好きになることで、どんどん強くなっていく。
その思いがただの献身ではなく、「俺が、俺の手で」というどす黒いエゴにあぶられた……だからこそ熱く強い情熱なのだということを、彼が思い知るのがこの話数である。
そうさせてくれる特別さを海夢ちゃんは持っていて、その隣を譲りたくない気持ち、自分だけのMy Darlingを求める引力が、自分の中に確かにあることを知って、五条くんはまた新しい一歩を踏み出す。
それは職人気質に内向きに向くと同時に、クラスの仲間のために勝利を引き寄せ、その特別な輝きをみんなに見てもらう、外に対し開かれた体験でもあった。
学園祭編は五条くんの世界が広く広く拓けていく開放感が、本当に素晴らしいエピソードであるけども、クラスという小社会に手先が器用で人形が好きな、あるがままの自分を認めてもらって、その承認が何かが”好き”な自分を支えるという、個人と社会が幸せに結びついた感覚もまた、五条くんはここで得た。
自分の中に燃え上がる内向きの炎と、そこから外側に向かって発せられる眩しい光は、両方彼だけのビスクドールに集ってより強く、眩しく世界を照らしてくれる。
そうさせてくれる特別な女の子が、どれだけ自分にとって大事な存在なのかを思い知る、青春ロマンスの爽やかな鋭さまでこの話数にはあって、とても素晴らしかった。
この爽やかな風と眩しい光がどこにたどり着くのか、是非アニメで見届けたいので、三期『天命』編……マジでお願いします。
・ぷにるはかわいいスライム
ベストエピソード:第19話『真夏のルンルーンリゾート』
見事な手際のアニオリで二期開幕を告げた第13話とか、ジュレが抱え込んでるヤベー断絶を見事に描いた第18話とか、ホビーと人間の間で悩むぷにるの旅を深く描く最終話近辺とか、良いエピソードは本当にたくさんあるのだけども。
僕はジュレのヤバさと同じくらい、無様で未熟で必死な姿が大事だと思っているので、それが良く描かれたこの話数が好きだ。
あときらら先輩が好きなので、この作品の”答え”(最終話サブタイトルで見事に撃ち抜かれているもの)である、女の子の形をしていないぷにるを柔らかく抱きとめてくれてる姿が見れるのも、大変いい。
二期は永遠の子どもである自分からはみ出し、コタローのいる場所まで必死に追いつこうとするぷにると、完璧でもなんでもない未熟な子どもである自分を認めないジュレ、両方に手を差し伸べるきらら先輩の姿がたくさん見れて、大変良かった。
最終話のコタローへのケア含め、迷い悩み苦しむ子どもらへのケアはだいたいあの人が担っているので、本当に偉いと思う。
さておき、ジュレの話である。
エッチな誘惑でコタローを惑わし、おこちゃまなぷにるに一歩先んじているように見えていた彼女が、実は凄く幼いまま危うく背伸びをしていて、必死に孤独に自分を支えてもらいたがっていることが、このエピソードでは凄く鮮烈に描かれる。
コタローはジュレに立派に向き合っているように見えて、彼女が抱えるものや望むものを上手く共有できず、その危うさと向き合いきれない。
それが最終話付近で炸裂もするわけだが、女体への嗜癖をしっかり視野に入れ、ジュレも自分も性的関係の中で消費するのではなく、一人間として大事にできる距離感を築こうともしている。
これが後にあるがままのジュレを受け入れ、尊敬できるトモダチとして向かい入れようとする姿勢の足場になるわけだが、そういう「正しさ」ではジュレは拾い上げきれないことを、ひねてるようで真っ直ぐなコタローは理解しきれない。
各々の発達と未熟が結構複雑に絡み合う、ここら辺の心象をこのエピソード(と、第18話ラストのジュレとぷにるの対峙)はかなり的確に可視化しており、怒涛の終盤に向かって丁寧に足場を組んだアニメだったと言えるだろう。
ここら辺の仕込みを丁寧にやっていたことで、ジュレの切実で必死でだからこそ狂暴なネガイが道を踏み外し、ぷにるを食い殺してその形を奪う展開も、そんな逸脱と向き合うことで(この話数ではいまいち踏み込めなかった)ぷにるとコタローがジュレを理解しだす描写も、ずっしりした重さを宿して飲み込める。
結論がまだ先にある途中経過だからこそ、鮮烈に描くべきものがしっかり息をしているし、このタイミングだからこそ輝く決意や癒えない傷も鮮やかで、とても良い話数だった。
・New PANTY&STOCKING with GARTERBELT
ベストエピソード:第1話『パンティアンドストッキング ホームカミング』
何しろいろんな面白さをクソ贅沢に山盛りにしてくれた、最高のオムニバスだったのでベスト選出はたいへん悩む。
ド直球にいい話しをやりきった第8話、ビッチの定義に真っ向から殴り込む第12話・第15話、オマージュ元への情熱が眩しい第9話や第23話、最終回に向けて必要な描写をしっかり積み上げた第24話、第26話、第27話も良い。
第28話からのトリロジーは大団円に必要なスケール感をしっかりと盛り上げ、下劣なお話を積み上げる中精妙に掘り下げてきた作品のテーマに深く食らいつき、語るべきを語り描くべきを描ききった、最高のフィナーレだった。
本当に素晴らしいエピソードが山盛りで、まずこの多彩さがいろんなアートへの挑戦と噛み合いながら、ドンドコぶっ放されていたのが豊かだったと思う。
最後にラミーおじさんがぶん回す、自分と息子以外の存在を認めない狭苦しい潔癖主義に、ビッチたちは誰にでも股開く野蛮なる平等と野放図な自由を叩きつけて、権威主義にファックを叫ぶ。
そんな闘いの根本を、いろんなモノがあるからこそ面白いこの作品のやり口それ自体が、無言だからこそ力強く下支えしている感じがあって、言葉で綴られるメッセージと言葉にならない制作姿勢それ自体が、お互いを裏切ることなく駆け抜けていった。
野放図にアナーキーだったからこそ弾けるパワーを得ていた一期とはやっぱ違うけども、言行一致の誠実な力強さを最悪のファック&バイオレンスにぶち込み、今描くべきパンストに果敢に挑み成功したのは、本当に凄いことだと思う。
そういう欲張りなやりたい放題が乗っかる地盤を、あの投げっぱなし最終回を全部引き受け、大真面目に向き合い、アクションもドラマもキャラ描写も最高な仕上がりを持って「すまなかったッ!!!」と叩きつけてくる、この第1話があってこそのNEWではあろう。
ぶっちゃけこの第一話にぶん殴られるまで、結構拗ねた態度で僕はパンスト待っていたわけだが、超大真面目に最悪やり切るこのリスタートを見たことで、心を縛っていた余計な鎖が解けた感じがあった。
こういう話をやってくれる連中なら、かつてパンストが好きだった自分に立ち戻り、新たにもっと好きになって良いのかも知れないと、勝手ながら思わせてくれるスタートだった。
そしてその期待は更新されることはあっても、けして裏切られることなく、多彩に面白く加速して、最後までブッちぎってくれた。
とてもありがたいことだ。
この第1話でブリーフが(吉野裕行の圧倒的芸達者に助けられつつ)大いに悩み、吠えた「僕はどんなパンティが好きなのか」という問いかけ。
それは15年のブランクを経て、新たに最強ビッチに出会い直す僕らが抱えた問いであり、それを描く作者たちのセンタークエスチョンでもあったと思う。
斜に構えて愛を隠す若きいじましさをぶん投げて、「パンスト大好きマジでッ!!」という思いを隠そうともしてないがむしゃらさで、ここから続いていく物語はビッチであるパンティのこと、そんなパンティが好きな僕たちのことを書き続ける。
その旅路が最後、「そんなパンティが好きな僕は、一体どんな男なのか」という問い掛けに至って、ギークボーイが少年期を脱する旅としても、NEWは本当に良い。
その途中、世の中が押し付けるBitchに凄まじい勢いでパンティが反発し、ステレオタイプを飲み干しぶん殴り、あるいはタフに演じきり、作品の心臓であるあの子がいったいどんな人間なのか、しっかり描いてもくれた。
そうやって、好きになってからももっと好きになれるキャラクターの奥まで、色んなお話をやればこそ解っていける対話が成立しているのは、やっぱこの始原でしっかり己を問い直し、どういうエネルギーがパンストという作品に満ち溢れているのか、見つけ描き切れたからこそだと思う。
本当に素晴らしい再誕であり、祝祭であり、狂宴でした。
ありがとうございました、愛しています!
・光が死んだ夏
ベストエピソード:第7話『決意』感想ツイートまとめ
全てにおいて素晴らしいアニメだったので、話数の選別は悩む。
ホラーとしておぞましさと衝撃を描く回、思春期の瑞々しい感情と痛みに踏み込む回、あるいは日常に満ちた笑いにクローズアップした回と、ヨシキとヒカルが生きている場所がどんな顔をもっているのか、多彩にしっかり描けていたのが、作品に豊かさを与えていたと思う。
与えるべき感慨が相互に異なり、しかも連動して複雑なものを描くエピソードをどう作り上げ、繋げていくかはかなり難しかったと思うけど、(自分が見るところ)境界の演出を一つの鍵として、いろんなモノが隣り合い、分断され、あるいは繋がり混ざり合っていく様子が、非常に鮮明に描かれていた。
その映像物語としての巧みさが、大人と子どもの間に立ち、生死の境目を越境することで苦しみに出会い、友情と愛憎の入り混じった不定形の感情に翻弄される少年たちが、今どういう夏を生きているのか……その複雑な味わいを切り捨てることなく、ホールで伝えてきてくれたと思う。
非常に精緻な構成と表現を持った「巧い」アニメだったけども、ニンゲンとバケモノの幼体が凄く深く傷つけられながら、それでも必死に自分たちのあり方を探り、他者や社会との繋がり方を考え、彼らなり迷ったり悩んだり苦しんだりしながらも、一歩一歩進む姿を嘲笑うことはなかった。
むしろその巧さこそが、あまりに複雑で混沌とした彼らのあり方を、余すことなく描き切る画材を準備し、かなり難しい要素含む物語をより直接的に、楽しみ苦しみ悩まされながら、味合わさせる助けになっていたと思う。
僕はこういう巧さと熱さの境目を越えていく物語が好きなので、そういう力が全話にしっかり宿り完遂されていたのは、感心したし唸りもした。
そういう筆致の真骨頂とも言えるこの第7話を、やっぱりベストエピソードに上げようと思う。
竹下監督がコンテを担当したエピソードはどれも、図抜けたセンスと仕上がりで毎回心をもっていかれるわけだが、ヒカルとヨシキを優しく見守る日常の象徴として、ここに至るまでの物語に満ちていた”合唱”を最大限活かした演出は、凄くシンプルに見るものの心を揺さぶった。
それは最後の旅へと進むヨシキ達が背を向けた場所にある歌なのだが、彼らが守りたいと願う日常そのものの響きを宿しつつ、いつか彼らがここに戻ってくることを、信じ約束してくれるような強さがあった。
少年二人がド濃厚な愛憎に引きずられ、二人の世界へと引っ張り込まれそうな物語が、そういう広くて強いものに接続され続けて展開していってくれたことに、僕はある種の信頼と祈りを感じ取って、この話がより好きになったのだ。
同時に目の前にいるたった一人のために、死んだり殺したり一緒に必死に生きようと思えてしまう特別さが、どんな温度でうねるのかも深く深く描いていて、このエピソードで炸裂するヨシキの覚悟と、それを受け取ったヒカルの決意はあまりにも熱くて痛い。
なまじっか半分まで話に付き合い、「あー、だいたいこんな感じね……」とナメの混じった理解を伸ばしていただけに、ヨシキがヒカルとの楽しいサボりに込めた決意と愛に頭ぶん殴られ、眼が覚める思いだった。
僕はこういう、解ったつもりになってナメてる頭蓋をかち割ってくれるエピソードと出会った瞬間が、アニメ見ていて一番気持ちいいので、メチャクチャ揺さぶられた快楽とともに、この話数に”最良”を送りたいと思う。
この話数と深く呼応しつつ、ここを経たからこその変化と成長を描いてくれる一期最終話もまた素晴らしく、ああいうお話から後半戦を待ち望めるのが、本当に幸せだなと思います。
彼らの奇妙で美しい、血の滲むような青春がどこに流れ着いていくのか、アニメで見届けれる日を心待ちにしています。
楽しかったです、ありがとう。
・青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない
ベストエピソード:第3話『アイドルソング 』感想ツイートまとめ
思い返すと、ずーっと長文で自分がどんだけ梓川咲太が好きか、どういうところが好きかを語り続ける、なかなかにキモい三ヶ月だった気がする。
こんだけ好きになった主人公というのもなかなか珍しいのだけども、大学生編は彼の己をめったに語らないハードボイルドな部分がより強調され、ヘラヘラ飄々と世の中を渡る空飛ぶブタ野郎が、思春期の悩みを具象化する怪現象に当然のように立ち向かう姿が、タフで優しく眩しかった。
ここに至るまでの物語を鑑みると、咲太が人生一回”アガって”いるのはまぁ納得で、常人がこれから体験する辛くて大変なことを遥かに越えた、過酷さと愛の意味を思い知った男がひどく落ち着いているのも、納得ではある。
そういう辛い日々を乗り越え、麻衣さんとの地に足付いてラブラブなパートナーシップを揺るぎない絆と掴み取った後の、ロスタイムにも似た大学生活。
ヒロインが変わるごとにちょっとずつ、咲太は変わらず熱い血を秘めたブタ野郎であり、痛みも悲しみも寂しさも怒りもちゃんと感じたまま、黙って適切に優しくあり続けれる生き方を頑張っていることも見えてくる。
その描き方に焦りが全然なくて、ただただ咲太と彼の周りに在る人たちが生きている時間と空間を、静かに優しく切り取ってくる感じがこの作品独特で、相変わらず好きだった。
ストイック……ともまた違う(何しろブタ野郎の話だし)、程よい抑圧の効いた筆致で詩情を情景に塗り込めて理解らせる描き方は、咲太という主人公の人格と良い共鳴を見せて、ドラマとキャラが響き合う心地よさがずーっと続いていた。
この落ち着いた筆致でもって、一年彼らがどんな日々を過ごし、どういう場所に行って何を見たのか、その生活をゆったりと積み上げてもらえるテンポ感も、結構長い付き合いになったファン(僕のことだ)との距離を反映して、凄くちょうどよかったと思う。
大学生になり自由になる金銭と時間が増え、行動半径とそのスピードが広がった咲太の現状を写して、自動車が極めて重要なフェティッシュとして扱われたり、舞台となる土地が多彩に拡大もしてた。
自分と家族に深い傷を付けた青春の病に勝ち、死の運命を越えて恋人と己の未来を掴み取った少年へのご褒美として、ゆったり流れつつも楽しいことが沢山あるこの位置年間は、とても幸せな時間だった。
その緩やかな落ち着きは、つまり咲太にとって思春期が次第に遠いものとなり、彼が大人になってしまっている事実の反射だ。
青春の物語は終わっていく。
咲太はライトノベルに身を置くには自分と世界を解りすぎ、本当に大事なものをどう大事にすれば良いのか実地で学びすぎ、色んな決意を胸に宿しすぎた。
だから大学生になった思春期探偵はちょっとよそよそしく、だからこそ安定して人生を揺らす嵐に対応可能な間合いで、思春期症候群と向き合う。
広川卯月はそんな物語の現在地を最初に……そしてとても鮮明に教えてくれたキャラクターである。
迷えるシンガーの物語、その最後に当たるこの話数をベストに選ぶのは、空気が読めない間は己の惨めさや醜さすら透明にできた彼女が、怪事件に囚われ色んなモノが見えるようになってしまった苦しさが、咲太の一言で一気に開放されるステージのカタルシスが理由……というわけではない。
そこも凄く良いんだけど、やっぱすべてが終わり大学を離れる卯月の「バイバイ」が、あまりに可憐で寂しく描かれていたことで、ここから先に続いていく物語をどう待ち望めば良いのか、あの子が教えてくれたのが大きい。
再び空気が読めなくなった卯月は、作中人物で唯一咲太が大学で何を学び取りたいかを先回りして読み解き、そこに自分が捨てていく可能性を託して「バイバイ」する。
透明で目に見えない誰かの心を、少しでも分かりたかったから統計科学部を選び、でもそれを置き去りに選んだ未来へと進み出すあの子は、多分咲太が残ってくれるから笑ってバイバイした。
そうやって背負ったものの意味をブタ野郎もちゃんと解っていて、でも過剰に力まず重たくもなく、サラリと当たり前に自分の人生にその荷物を組み込んで、新たに進み出す。
それは自分の足を止める重荷ではなく、もっと力強くしてくれるエールだと、もう解っているから。
あの最後のやり取りを見た時に、ほんとに咲太の青春が、この物語が終わろうとしているのだと僕はすごく納得して、この先に続く物語の輪郭をしっかり縁取れた。
その期待は各エピソード色んな角度から、凄く鮮烈な痛みを伴って描かれて、このお話で味わいたい苦みと清涼感をしっかり届けてくれた。
でもそれだけじゃなく、時折頭の中の「これが青ブタ」つう固定観念をぶん殴るような出会いがあって、だからこそこのお話がもっと好きになった。
その最初が、卯月の「バイバイ」だったのだと思う。
劇場完結編、本当に楽しみにしています。
TVシリーズ、とても素晴らしかったです。
お疲れ様でした、ありがとう。
・サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと
ベストエピソード:第9話『明かせぬ秘密』
アニメからこの作品に出会った視聴者からすると、極めて不思議な構成をしたシリーズだったと思う。
話のピークとしてはこの第9話が一番エモーショナルで、親友の喪失すら秘密にして任務を果たさなければいけない、若きエージェントの悲壮さはこれ以降ちょっと鳴りを潜める。
バーニーとの物語は重たいけどもあくまでモニカ個人の変化と克己……あるいはバーニー自身のかすかな希望を照らし、ラスト2話は学外を舞台に第二王子との穏やかで特別な絆を描いて、物語は終わっていく。
第5話以来丁寧に関係を作り上げてきた、ケイシーとの時間が理不尽に押しつぶされていくこのエピソードが宿している、モニカがどれだけ魔導に長けていても乗り越えられない、政治という巨大な装置にそれでも挑んでいくスケールのデカさ(あるいはその予兆)が、ラストに顔を出さない作りは凄く変則的だと感じる。
んじゃあ終盤の展開が肩透かしだったかというと全然そんなことはなく、ケイシーと過ごし別れた日々の中、小さな変化と手に入れた強さを印象的に描かれた主人公が、1クールの物語で手に入れた成長をしっかり見せてくれる満足感は、作品をまとめ上げるのに必要十分だった。
世界唯一の無詠唱魔術の使い方であり、国のあり方すら歪める龍災害を単騎で鎮める人間兵器が、嘘っぱちの学園生活の中ちっぽけな成長を、確かに積み上げていること。
それこそが何より素晴らしい魔法であることを、過去の傷を乗り越え、失われた父との絆を取り戻していく物語は、しっかり語っている。
そういう地道で着実な変化が、壮大で美麗なヴィジュアルや演出とともにしっかり描かれ、モニカが早熟の天才として取りこぼしてきた(取りこぼさざるを得なかった)ちいさな”冒険”こそが、何より得難い奇跡であることを教えてもくれる。
この地道さと壮大さの同居が、ロマンティックなトキメキ含めた全開の乙女力と噛み合って、この作品独自の力が溢れ出すわけだ。
そういう物語であえて、この悲壮で崇高な青春のピークをベストエピソードに選ぶのは、国に七人しかいない人間兵器であることも、その使命に基づいて友達の暴挙を諌め全てを沈黙することも、モニカの……あるいは彼女を主役とするこのお話の、大事な一部だからだ。
生徒会の可愛いマスコットとして、沢山の欠点を抱えてなお色んな人に愛されるただの子供として、モニカは学園生活の中で確かに多くのものを得ている。
だがその平凡な幸せだけが彼女の全部であるかと問われれば、彼女が間違いなく卓越した魔導技術者であり、非業の死を遂げた父のために人生捻じ曲げれる、強すぎる思いと業が生み出した異能が、確かに救いうるものがそこにはあるのだ。
それは第1話冒頭、ケルベック伯爵領の龍災害を制圧した時……そしてこのエピソードで、そういう奇跡に恵まれなかったケイシーの故郷の地獄を描かれた時に、しっかり示されている一つの事実だ。
あの子が秘密を抱えさせられるだけの才能を持ち、数多の傷を受けながら魔導の頂点に既に立つ怪物であるからこそ、背負わなければいけない使命と守れる誰かがいる。
その特別な重たさがあればこそ、騒々しくも楽しい日々の中、普通の子どもが当たり前に手渡されるような幸せを、父の死以来ようやく取り戻しつつある彼女の生き直しが、幸せの中で軽やかに踊りもする。
そういう日常と宿命のダンスを描き切れるだけの腕前が、確かにあるアニメだと示してくれる話数だと思った。
それに追いつく重たい宿命と、腐りきった貴族主義の長い手が、秘められし名前を持つ第二王子から渦を巻きそうな気配も、最終話に強く漂っていたが……。
そこら辺の解決も含め、ぜひ第二期もアニメで見てみたい作品であった。
やっぱ金崎総監督がファンタジーを描く時の手つきは、美しく残酷な世界を美術に宿し美麗に描き切る筆力と絡み合って、圧倒的に見てて心地が良い。
チャーミングでコミカルな笑いと、小さく確かな成長の実感を混ぜ合わせてジュブナイルを描き切る腕前が、いよいよ王子を巡る陰謀の真ん中にたどり着いた時、何が見られるのか。
ぜひ見届けたい気持ちである。
そういう期待を燃やしつつ、兎にも角にも素晴らしい作品でした。
お疲れ様、楽しかったです。
ありがとうございました!
・ウィッチウォッチ
ベストエピソード:第24話『モイちゃんのデニム道/デート・ウィズ・ザ・ガイド』
甘酸っぱいラブコメディ、青春群像劇、不思議な魔法が宿るドタバタ、重たい宿命を巡るバトル。
色んな楽しさを贅沢に盛り込んだお話だったが、やっぱ自分としての軸はニコちゃんとモイちゃんの恋物語にあった気がする。
それは日常や生活や宿命や魔法と切り離された、独立した出来事として二人の恋が描かれておらず、むしろ恋すればこそ世界に色んな色が生まれて、むっつり黙りこくる純情青年が何を大事に生きてるかとか、ドジで浮かれポンチな魔女の心根がどんだけ真っ直ぐかとか、作品の心音が良く聞こえてくるからだ。
主役二人の思いは話が始まった当初から既に鮮明で、自分たちが何を思っているのか探る時間は、会えない間に終わっている。
むしろ会えない間に狂暴なくらいに純化された愛が、どこが適正距離なのかワイワイ探っていく過程にこそこのお話独自の面白さと可愛げがあり、あまりにニコちゃんが大事すぎて己の魂をズッシリ突き固めてしまった護鬼と、そんな不器用全部ひっくるめで自分に優しくしてくれた男の子が大好きな魔女を見ているのが、僕は本当に幸せだった。
やっぱ主役が好きになれると、作品は素直に腹に落ちていくもので、モイちゃんやニコちゃんがどんだけ好きになれる青年なのか、折にふれてしっかり教えてくれる半年間だったのはありがたい。
モイちゃんLOVEが溢れて止まらず、華やかな恋の形に憧れつつももっと本質的で地道な愛を既に身につけているニコちゃんが、愛に本気すぎて時に常識と衝突する男の子をどう受け止めているのか。
このエピソードはモイちゃんのちょっと困った個性と、それすら愛して共に日々を楽しもうとしてるニコちゃんの度量が良く見えて、見ていて本当にいい気持ちになる。
期待してた100点のデートなんかじゃなかったけど、自分自身そういう恋情のガワを求めていたわけではなく、本当に欲しい真心はずーっと側でむっつりボーイが手渡してくれてたから、今日の失敗はありえないくらい最高。
そう思い、伝えてくれるニコちゃんの眩しさは本当に凄くて、ド直球な純粋さを衒いなくぶん回す作品の良さを、改めて感じられもした。
モイちゃんは己の信念に欠片の後ろめたさも抱えず、ひたすらに愛を貫ける男なわけで、ともすれば完璧すぎて掴み所がないキャラになりそうだけど。
このエピソードで示されたような、完璧だからこその欠陥がチャーミングな傷となって、とても親しみやすい人物に仕立てられている。
物語に血を通わせるための精妙な職人芸を、ゲラゲラ笑える楽しいエピソードを通じて確かめる意味合いでも、この最後のモイちゃんエピは凄くこのお話らしくて、ベストに選ぶ理由が十分あった。
本当に様々な局面で巧いんだが、それを視聴者の遥か上において振りかぶるのではなく、むしろ足元の死角からすくい上げるように不意打ちしてくる、巧さを目立たさない巧さを痛感できる。
ギャグは少しシニカルで斜に構えているのに、主役たちの根本は超真っ直ぐに友情純情してて、どこか頑是ない夢への浮遊感がある。
作品全体に漂うテイストに、令和用にチューンナップされた”藤子”の系譜を感じたりもしたが、やっぱロマンスとの向き合い方が高校生相応(というには、あまりに純情すぎてそこが良い)なのが、独自の味を生んでいると思う。
恋ではないと思い込むことで、重すぎる運命ごとニコちゃんを守れる自分を形作った純愛サイボーグがどこに転がっていくのか……二期では新たな展開も楽しみである。