イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

秋風幽かに尾花を揺らす-2020年7月期アニメ総評&ベストエピソード-

・はじめに
この記事は、2020年4~6月期に僕が見たアニメ、見終えたアニメを総論し、ベストエピソードを選出していく記事です。
各話で感想を書いていくと、どうしてもトータルどうだったかを書き記す場所がないし、あえて『最高の一話』を選ぶことで、作品に僕が感じた共鳴とかを浮き彫りにできるかな、と思い、やってみることにしました。
作品が最終話を迎えるたびに、ここに感想が増えていきますので、よろしくご確認を。

 

デカダンス
ベストエピソード:第9話『turbocharger』

緑の炎と悪臭の中、ぶん回される日頃の鬱憤。やっぱクソだめは、憂さ晴らしのゲームパークたるデカダンスの影、日常の糞便処理場なんだなぁ…。 抑圧するものも、抑圧されるものも、バッタバッタと死んでいく

デカダンス:第9話『turbocharger』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 変なアニメだったなー、と思う。
既視感バリバリのどっかで見た話として始まり、タンカーとギア、重ならない二つの世界を殴りつけるように叩きつけ、その接触と断絶を重ねていく語り口。アナキズムの熱量で突き進むように見えて、それが取りこぼすものをどこかで視界に入れている冷静さ。的確なエンターテインメント性と、シニカルな思弁生とその放棄。
色んなものがアンバランスに、あるいは絶妙なバランスで配置されて最後まで走り切る、奇妙で魅力的な物語だった。
最初はヤダ味の塊だった生死を弄ぶゲーム・サイボーグの在り方が、最後にバックアップから再生可能な奇跡に繋がって幸福な終わりを引っ張ってくるところとか、非常に好きだ。ただのファッションかと思ってたゲーム的デザインが、ドラマの最後をしっかり締めるレトリックには強く感心してしまった。

しかしベストに選ぶのは、凶賊どもが好き勝手に暴れ倒し、エゴむき出しで死んだり殺したりするこのお話である。作品全体で、一番”生きてる”って感じがするのでベストだ。
それはサルコジが死んだから、って話ではない。彼の華やかな自爆が、その足元でクソにまみれ命乞いをする存在を目に入れないまま、勝手に爆裂すると描くスタンスが見えるからだ。
この話数で書かれた愚かさや暴力性を綺麗に漂白して、タンカーとギアはともに手を取り合う理想郷へと突き進んでいく。エンタメはそれでいい。イヤーな気分になりたくて、絵空事を見るわけじゃないからな。
しかし抑圧と反逆を題材にとってしまった以上、自由を求めて暴走する人間のエゴと、抑圧しなければ安全を確保できない社会の矛盾はどっかで彫り込まなければいけない。それが一番陰影深いのが、このウンコと炎まみれのエピソーであろう。
この世界を変えたものの根っこには、ノリと勢いに流されるまま他人をぶっ殺す、革命という魔酒が確かにある。その危うさを抱え、制御しようと頑張るからこそ、人間が社会を構築する営為には意味と意義もある。

そういう生っぽいエピソードが、あくまで一人間の熱血自己実現というメインを邪魔しないように、奇妙でコミカルな連中の戯画化された虐殺に押し込められている、冷徹な計算高さ。
そこも含めて、非常にこのアニメらしい話数だと思う。
これはあくまでオマケ、真実性への目配せ。私たちが提供しているのは、あくまでエンターテインメント。
そういう開き直りを叩きつけつつ、でも話数使って煙幕炊きながら、山積みのクソと大量の死体を書くしかない。そんな製作者達のカルマが生み出した、鬼子みたいな話数だと思う。ウンコに異常な執着を燃やし、捻り倒したインテリジェンスが匂い立つあたり、フランス文学っぽくて、やっぱ最高にいい。

 

・ノー・ガンズ・ライフ
ベストエピソード:第20話『絵空事

これは身勝手さや独善、無力や苦悩も含めて鉄郎少年の歩みをじっくり追いかけてきた”時間”だけが可能にする爽快さであろう。 ハルモニエで無責任に、他人の体を操っていた少年が、よくぞここまで…。 迷い成長する主人公として、鉄郎がムケた瞬間と言える。

ノー・ガンズ・ライフ:第20話『絵空事』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

というわけで、コロナ禍を挟みつつの分割2クール、ノー・ガンズ・ライフのアニメが終わった。非常にスタンダードかつベーシックに、サイボーグ・ハードボイルドのど真ん中を力強く踏みしめるアニメだったと思う。控えめに言って最高である。
最初はそのスタンダードさからはみ出る部分を、ビジュアル的なエッジさ以外になかなか認められない感じもあったのだが、キャラが噛み合いまわり始めると、やはり独特の”コク”が出てきた。
ハードボイルド、あるいはドラマの定形をしっかり踏まえつつも、そこからはみ出し独自に削り出した自分だけの物語を、エピソード一つ一つを重ねながら生み出していく。そのためのノミとなり原石となったのが、荒吐鉄朗という未熟な……だからこそ魅力的な主人公であった。

彼は身勝手で無力な依頼人として、作品に登場する。喉に埋め込まれた巨大過ぎる力を無責任に使い、あるいは何も果たせないまま友を殺され、間違い苦しみ続ける。
そんな彼の手を引き、声をかけデカい背中を見せる十三は、既に答えを見つけた”大人”に見える。しかし苦難の道から様々学び取り変化していくにつれ、十三もまた完全無欠のヒーローなどではなく、欠落を強がりで覆い隠した”子供”でもあるのだということが、視聴者にも鉄朗にも判ってくる。
この相補的な歩みを描くために、24話色んなエピソードが必要だったのだと、物語の全体像がストンと腑に落ちたのがこの話数である。
『このキャラ、なんでここにいるんだろう?』『このお話、何を書きたいんだろう?』
作品を見るということは、そんな問いを投げかけては反射され、納得したり首をひねったりする作業でもある。
二期入っての”解体者”のエピソード、そこでぐっと彫りを深めたメアリの書き方あたりから、ズバズバと納得が胸に刺さってきた感じはあったが、一番クリティカルだったのはこの話数の鉄朗であった。

ヒロイズムは継承される。鉄朗がハンズから受け取り、空っぽの自分を鎧っていた”処理屋”の生き様は、鉄朗に繋がっていく。一端の男として、自分の血を流しながら理想を吠え、歪んだ鏡を殴り飛ばした少年をそこまで導いたのは、やっぱりヒーローだ。
十三は自分がずっと欲しかったものを、”処理屋”としてツッパって生き続けることで手に入れた。そうやって満たされることを望んでいたわけではなく、むしろ空虚をごまかすための生き様だったけども、願いを引き受け銃弾と打ち放つ生き様は、けして嘘ではなかった。だから彼自身のヒロイズムが、無力な少年の手を取り鍛え上げ、彼自身を救うのだ。
そういう善因善果の相互信頼をこそ、この話は書ききりたいのだ。そういう確信が得られた瞬間、僕はこのアニメを見てきて本当に良かったな、と思った。パーツとパーツが繋がり、十全な意志を物語に感じるときこそ、作品と向き合ってきてよかったなと思う瞬間だ。2クールチョイ長めだと、そういう感慨もなお深い。
とても良いアニメ、とても良いハードボイルドであった。ありがとう。

 

・宇崎ちゃんは遊びたい!
ベストエピソード:第10話『鳥取で遊びたい!』

ホント、話としては死ぬほど鳥取観光しただけだからな…なんなんだコレ…。

宇崎ちゃんは遊びたい!:第10話『鳥取で遊びたい!』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 奇妙なアニメだった……と思う。僕自身が作品自体やジャンルのコードにそこまで前のめりになるでなく、俯瞰で醒めた目線で見てるからそう思うのかもしれないけども、モラトリアムの中で窮屈そうにしてる恋心と成長の契機をかなりスタンダードに扱いつつ、安いネットオタクネタと脂っこいエロネタを乱雑に混ぜ合わせ、全然混ざりきってないゴロッと感が妙にリアルで面白いという、ヘンテコな食感であった。
根がヒネているので、ジャンルコードと素直に寝れてる作品よりも、狙ってか狙わずかかなり奇妙(に見える)な所に身を置いてる歪さがメタ的に、……そしてそれに影響されながら作品を見て楽しむ(そう、楽しんでたんですよ結構”素直”に)姿勢に影響して、なかなか独自の視聴感覚だった。
なんだかんだやり玉に上がることの多い、外部ノイズの強い作品であると思うけど、実際見てみると正直『こんなモン』ではある。それを『こんなモン』と思ってしまうこと自体が、ジャンルと立ち位置のバイアスから抜け出てないって話なんだろうけども。
外側から言われるほど描いているもの、積み上げる物語を対象化して消費しているわけではなく、しかしそんな読んでもいねぇ偏見を跳ね返せるほど、ジャンルコードのヤダ味にカウンター入れてるわけでもない。適度にシリアス風味で、適度に肌色商売と寝てて、適度にプラスティックで、適度に可愛げがある。

そんな微妙な(あるいは絶妙な)バランスを楽しみながら見てた話は、第8話でピークを迎える。物語を素直に評価するなら、宇崎と先輩の新しい関係が良い所に落ち着くこの話数が、ベストなのは間違いない。演出はよくキレてるし、ドタバタ転がりつつも蓄積された真心を、最大限活かした話数だと思う。
の、だが。
その後に、超大型コラボ案件にブースター乗っけるために、背景だけ異常な解像度で悪目立ちしつつ『鳥取! 鳥取最高! この世のパライソ、来たるべきシャングリラ! みんなもうざきと一緒に鳥取に行こう!!』と画面が喋りまくるこの怪エピソードをぶっこむ所に、僕の好きなこのお話の歪さがある。
だってこの話、マジでいらないもん、宇崎と先輩の人生紀行と考えると。エピソード全体のテンションもテクスチャーも異物でしかなくて、しかしその異物感があまりにも的確に、作品が置かれた歪んだ文脈を活写してもいる。
この異様なねじれ含め、一生手癖でネタをぶん回すループな構成、そこから生まれるグルーヴ感は、なかなか体験できない狂気の産物だった。いや、素晴らしい。俺は大好きだよ……こういう言い方してっけど大好きなの!

二期でどういう方向に舵切って、どういう話するかさっぱり読めませんが、かなーり楽しみにしてます。
まぁ予兆されているように、かわいいアイツらを”大人”にしてやってほしいな、とは思う。結構丁寧に蒔いてる変化の種を活かす意味でも、作中で流れていく彼ら自身の人生のためにも。

 

・恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜
ベストエピソード:第1話『はじまりの絆』

『俺たちはフツーのロマンスはやらねぇが、異能伝奇ロマンスはやる!!』 最高のご挨拶だ…。

恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜:第1話『はじまりの絆』感想ツイートまとめ - イマワノキワ
 そんな予感が加速しながらブチ抜ける、奇妙で楽しいアニメ、”恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜”も最終回を迎えた。トンチキな作品であったが、非常に面白かった。
視聴者としてアニメを見る時、僕は『ありがとう』と『面白かった』は惜しまないようにしている。もちろん何にでも良かったというわけじゃなくて、自分の心に素直にはなるようにしているけど(感想だし)。しかしそういう想いを出し惜しみして、自分を高嶺に保ってアニメ見る行為が楽しいかと言うと、あんま楽しくはないなぁ、と思っている。
なんでも楽しがろうとするので採点が甘いところもあるが、自分としては良い所だと思っている。言葉は刃物と同じで、他人様の触れる所に置くなら色々注意しなければいけないものであるのけども、あんま他人に刺さらず、楽しさを増やせるような言葉を並べるよう心がけてはいる。

そういう想いを増やしてくれるのは、やっぱり面白いアニメを見る体験で。イケメンに超能力にお仕事に喪われた記憶、秘密結社に楽しい日常。メチャクチャてんこ盛りに盛り倒して、しかしそのボリュームが独自の面白さとして暴れ倒す恋プロアニメは、沢山『ありがとう』と『面白かった』を引き出してくれる、いいアニメであった。
そういう特色が一番色濃く出てて、一番強く殴りつけたのが第一話かなー、と思う。テザーPVとか公式サイトとか、アニメを見る前は色々情報を浴びて期待を高めるのだけど、やっぱり蓋を開けてみるまではわからない。ドキドキしながら作品に出会って、『俺ら、こういう作品なんで……』と自分を伝えてくれると……そしてそれが肌に合うと、とても良い気持ちになる。
そう出来るのはトンチキな勢いと同時に、相当テクニカルな作劇の工夫が、随所にあふれていたからだと思う。こんだけ山盛りにすると色々溢れると思うし、実際かなりのマッハ進行であったけども、それでも食べられるのはやっぱり、説得力のある絵作りだとか、キャラの信条が伝わるシーンセットだとか、色々考えて作ってくれたからだろう。この第一話は、そういう部分でもそうとう恋プロアニメらしい仕上がりだ。

面白く思うのと、面白がるのはちょっと意味合いの違う行為で、できれば前者でありたいなと思いながら、あからさまに自分をメイン顧客に取ってない作品とかにも食指を伸ばすんだけども。
僕は作品をちゃんと”面白く思え”たのかなと、毎回のように不安になる。ただ安全圏からネタを蕩尽し、作品とそれが好きな人を笑いで殴りつけて終わってないかな、と。他人が作り、他人が楽しんでいる以上それはいつでも気にかかる部分で、同時に自分が答えを出してはいけない問いかけでもある。
そしてその度、そのアニメが面白かったとこを思い出して、ちょっと安堵する。この総評とベストエピソード選出企画には、そんな意味合いもあったりするのだ。ありがたい。


○番外
このクールは世情によりアニメの放送本数が減り、せっかくに機会なので過去作を視聴しました。本放送とはズレますが、自分にとっては新鮮な視聴体験となったため、新作と同じく総評・ならびにベストエピソードを選ぶこととします。

 

・文豪とアルケミスト
文豪とアルケミスト:第4話『月に吠える 前編』

この奇っ怪な一編が物語全体でどんな意味を持つのか、はたまた一瞬の不条理として燃え尽きるのか。 シリーズ全体での使い方を見ないとなんとも言えないが、ストーリーをあえて追わない断片的な語りによって、色んなメッセージが出されるエピソードだとも思う。

文豪とアルケミスト:第4話&第5話『月に吠える 上下』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 というわけで、文アニを見終わった。見始めたのは最終回付近で、遠巻きに見ている界隈が大荒れに荒れている頃合いで、その波風が他人事ながら勝手に面白そうなうねりに満ちていたから、見てみたというのは事実だ。
ミーハーな門外漢が、勝手な文学への理想とポップカルチャーへの憎悪を腹に溜め込みつつ、上手くバランスを取って見たいな……と思っていた初期構想は、見事に微塵と砕けた。こっちを安全圏にいさせてくれない、奇っ怪で本気の作品であった。
どれだけ偉大な文化だろうと、時代に合わせて再編成し、再編集し、再生しなければ腐って死んでいく。しかしその語り直しに敬意と血しぶきが無ければ、それは便利な窃盗、無責任な歪曲で終わってしまう。
昨今特にオタクカルチャーで流行る、史実の分厚さにコンテンツの背中を支えてもらう作品群に必ずつきまとう、難しいバランス取り。それをこのアニメは、外部に接続せざるを得ない過剰な情報量と、書くべきものに本気すぎて時に暴投する本気っぷりで、正面から殴りつけてきた。
勢い自分も取っ組み合いをせざるを得ず、自分の言葉が何処に当たるか、自分なりに考えてから放つ(放ってるんです、一応)普段のスタイルを、かなり変えて向き合うこととなった。そういう姿勢を引っ張りだされたのは、有り難いことだと思っている。

なんともヘンテコなアニメであり、その真骨頂がこの4話、”現実”で文学が死んだ時に起こるロマンスと死を長尺で描くエピソードだと思う。
今にして思い返すと、文豪と文豪の関係性に極端にフォーカスしたこのお話が、わざわざ図書館の外の”読者”を書いたのは、やはり本気がゆえだろう。
文学はこれほど人を活かし、人を繋ぎ、人を殺す。それがなくなることで、これだけの傷が生まれる。守ることで、これだけの愛が保てる。
そういうふうなことをわざわざ描かなければ、話が成り立たないから書いた。それは自分たちが作っている”文学”が、痛みを伴わない消費物ではなく、過去の遠い遺物でもなく、今現在フル稼働してる活きたメディアなのだと、現実に接合したものなのだと、睨みつけていたからなのだと思う。
文豪が転生し、書物に潜って怪物と戦う。いかにもファンタジーな舞台建てだけども、そこで捕らえられているテーマもモチーフも、血がにじむ生身の僕らに接続していて、つくづく本気でやっているのだと。

モニタ越しに突きつけてくるこのお話があったから、僕も文アニに前のめりになったきらいはある。そういう作品に正座して向き合うキッカケは、アニメを、他人が魂から絞り出したものをちゃんと受け止める上で大事で、有り難いことだ。
挟み込むタイミングとしては奇妙で、描かれるものもまた、本筋からすればバロックなのだけれども、しかしそうせざるを得ない切実さとこわばりがある。本気である。
やっぱそういう肌触りが、作品を最後まで見る大きな原動力でした。全部のフィクションがこれほどの”本気”でぶん回されていたら、疲れちまって産業どころの話ではないでしょうが、しかしそういう気合がなけりゃ、物語る動物の本能に報いるのはやっぱり、難しいでしょう。
そういうフィクションへの信頼感と期待を取り戻させてくれたという意味でも、得難いアニメだったと思います。怪作だけど、俺にはやっぱり傑作だよ。いいアニメだった、ありがとう……。

 

 

 ・ケムリクサ
ベストエピソード:第8話感想

一話で退場するゲストキャラなんだが、物言わぬ船のシロムシ達の存在感はデカい。 彼らがいることで、このアニメをもっと信頼出来る気持ちになった。そういうのマジ大事よ。

ケムリクサ:第8話感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 というわけで、遅ればせながらのケムリクサ視聴も無事終了である。いやー……最高に面白かったです。ありがとう(了)
で終わらせらんないんでアニメブログやっとるわけだから、蛇足をちょっと足す。作品が持ってる良さとか強さとかは、タグから過去感想読んで確認してください。

ケムリクサの感想は僕にしては珍しいスタンスでやったつもりで、かなり体重を載せて作品の核心を読んだし、それを言葉にもした。僕は不可知論者だし、画面から客観で言い切れないものにはあまり言及しないよう自分を縛っているんだけども、今回は意図的にそれを外した。
それはこの作品がすでに放送を終えていて、熱狂的なマニアを生み出すカルト的作品だったからだ。放送中は確信できない(豊かな表現×明瞭な意図)という方程式が、『=熱烈な支持』という答えを既に得ていて、体重乗せてもスッポ抜けない確信を得た上で強く振った、というのもある。
何しろ世間が激動し、僕の弱っちい心も強く動揺した時期だったので、自分が何を見てアニメの感想続けてるのか、思い切りブン回せる素材が欲しかったのだ。そんな身勝手な思いに、この作品は力強く答え、余裕で抜き去ってくれた。ありがたい限りである。
凄く物語や人間存在のベーシックな部分を掘りさげる、僕好みのドラマづくりであったし、細やかなクスグリ、溢れるSFマインドも肌にあった。映像として気にかけているポイントも、自分が気になる部分にビシバシ共鳴し、『アニメとして普通につえーな』と思いました。
たつき作品ってその割り切った奇妙さ、思弁性の高さゆえの”浮き”っぷりを指摘されがちだけども、基本的な映像体力の時点で相当凄まじいことになってるって事実は、もうちょい指摘・強調されていいと思いました。

さて、ベストエピソードは”全部”である。みんな判ってんだろ?
これを前提にした上で一つ選ぶと、シロムシの話たる第八話である。
やっぱお話全体の構成を考えた上で、カウントを整えつつ鋭く仕上げ、決定的なピースをハメてくれる話数が好きなのだ。繊細な影響で繋がり合いつつ、各話数、各シーンで独立した構造体としての物語自体が、僕は好きなんだな……。
わかばに足りず、りんちゃんに過剰だった責任と痛みを、シロムシの”船長”となることで補う。
崩壊世界のロマンスでもあるこの物語に絶対必要な、二人を対等で平等な関係に引っ張り上げるための一撃……であると同時に、異質な機械知性たるシロムシたちにそれぞれの尊厳があり、物語があり、それをひと足早く完遂して退場していく寂しさと潔さが、話に満ちている。
個別に完結していながら、全体と繋がっている。人間が、生物が、あるいは物語が共通して持つ不可思議な構造を、うまーく作品に取り込む話数でもあると思う。こういうふうに、言ってることと書いてるものが両立すると、作品にはエンタメに必要な興奮と、作品に必要な説得力が同居し始める。強いことだ。
そういうことを色んな話数、色んなシーンで成し遂げまくった結果、最高に良いアニメとして見終えることが出来た。ありがたいことであり、力強いことであった。