イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

神と自然の科学史

川崎謙、講談社選書メチエ。「自然」と「Nature」の違いを重視した比較化学論の本。非常に面白い本である。筆者は理科教員育成に携わる大学教授であり、科学認識を育成する人材を育成する立場にいる。その立場から鑑み、ロゴス中心主義のギリシア発祥西洋科学主義と、朱子学と禅定、そしてやまとことばを基礎とする日本の認識論を対比させて、論を進めていく。
とにもかくにも、足腰のしっかりとした論考である。少々横に広げすぎの感もあるが、ロゴス中心主義の西洋学をただ批判するのではなく、またその西洋智至上主義となってしまった文明開化以降の日本の現状を批判するでもなく、言語翻訳とその原因となる文化の違いを的確に分析しつつ、解決策を探っていく。その着実な論の歩みは、読んでいて非常に頼もしく、面白い。誠実で、重厚な本である。良著。