イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

江戸の妖怪革命

香川雅信河出書房新社。18世紀後半、江戸後期から明治期にかけての「妖怪の虚構・玩具化」に関する本。フーコーのアルケオジーを流用している。
当時の絵巻物・黄表紙・妖怪玩具・妖怪手品など、民衆文化の中における妖怪にテーマをとり、都市化した江戸時代において妖怪はすでに虚構内・博物学的存在であった、という一貫した主張の元大量の資料を取り扱っている。序文にあるように学問的専門性は薄いのかもしれないが、その分フットワーク軽くさまざまな領域を横断した江戸中期〜後期の妖怪受容が読み取れ、非常に楽しい。
横幅広く、とはいうものの、その中心には江戸の庶民文化という軸が確かに存在し、狂歌の流行や蘭学の発展、博物学的視点の隆盛など、江戸中期〜後期の文化史を丁寧に抑えつつ、文献を中心とした大量の資料を図版付きで駆使している。この時代の大半の人がそうであるように、僕も水木しげる先生で妖怪が好きになった口だから、妖怪をテーマにしたこの本にしっかりとしたヴィジュアルエイドが付いてくるのは嬉しい。
それだけではなく、図版は筆者による大胆な絵解き・読み解きの証左になっている。少々大胆さが過ぎるような部分がないわけではないが、江戸庶民における妖怪の受容と消費というスタンスから、なかなか鋭い論を展開している。あくまで江戸庶民文化の視座から論じられる妖怪論は、民俗学の書物とは少々違った味がありなかなかに面白かった。良著。