イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

とらドラ1〜4!+スピンオフ

竹宮ゆゆこ電撃文庫。友人田中君から略奪して一気に読みました。ワリといまさらというか読んでねぇのかよ感漂う超良作ラノベでございます。バトルナシ超人ナシ、死人ナシの電撃メイン軸から見事に外れた高校生の恋愛と友情と日常をだっらりだらりと、しかし緊張感と面白さをもって書いた小説であります。
とにかくですな。巧い。無駄なシーンがない。無駄なキャラクターがいない。無駄な描写がない。文章の切り詰め、削りが極限まで磨いてある。そこらへんの巧さが、全ての水準で非常に高い。そのくせ、ラノベで重要なキャラの味の濃さ、ぱっと見の食いつきやすさ、話の派手さ、スジ回しの漫画っぽさなど、ジャンルに必要な部分もこれ以上ないほど丁寧に作りこんでいる。とにかく、小説として巧い。
一見ナオンチャンが出てきて萌え萌えー、なのですが。そういうお話のお約束をとにかく徹底的に巧く外しており、そのくせ小説の巧さを利用してそのはずしを巧く食わせている。ラノベは(本来存在しない仮想存在としての)カテゴリーの壁が妙に高くて、そこを乗り越えて珍しいことやるのがのがめんどくさいジャンルなのですが。丁寧かつ本当のことしか描かないことで、そこらへん巧い。
キャラの作り方とかも、いわゆるコミックなギャルゲキャラの外面を貼り付けつつも、心理描写、日常描写を細かくやることで、(あんま使いたくない言葉ですが)「人間が描けてる」状態に持っていっているわけです。飯を食うシーン、自分の内面を語るシーン。そういうシーンをラノベのエコノミズムで切り詰めながら、同時に小説の強度も維持している。巧い。
その上で、高校生の心情と、濃いとか友情とか色んなプレシャスの中で揺れ動く人々、というテーマをガッチリと中心軸にすえつけて揺らさない。揺れそうになっても小説の力でゴッツリ戻す巧さがある。テーマと技術、心情と計算が驚異的なバランスで巧くいっている。正直、ラノベの完成形の一つではないかなと思います。このバランスのよさは。
一気に読んだわけですが、一巻ごとにきっちり終わっているのでがっつく気配ではなく、一巻では終わらないキャラクターの動きと高校生らしいもどかしい恋の行方とかが気になる、圧倒的なヒキの巧さでシリーズとしてのクオリティもソーグッドです。五巻をじわりと待ちますよ。いや、よく出来ている。非常に面白かった。