冲方丁、スニーカー文庫。シュピーゲルプロジェクトの、角川のほうの三巻目。今回は両方ラグ無しで出たので、プロジェクトの構造を睨む楽しみが出来てまず満足です。シュバリエプロジェクトと違って、全部ウブチンがやっているせいかシュピーゲルプロジェクトは安定していますね。おそらく一番好感度の高い「大人」であるバロウ神父をメインブリッヂに使うとか、構成がとにかく巧い。
んで。オイレン三巻は犬チーム三人が各々メインを張る短編三つで構成であります。前回リンク張りまくりかつウブチンらしいヘヴィな内容で、キャラを濃い方向に煮詰めたおかげでキャラをピックしたこういう短編の切れ味が非常に良い。その上で、じわじわとトッコー児童のろくでもない部分に足を向けてきていて、シリーズとしての攻勢の巧さも光る。
今回読んでびっくりしたのは、涼月が異常なまでにエロゲっぽい動きをしていたこと。これは別にけなしているわけではなくて、今ラノベで女の子を書くならエロゲ臭を漂わせるのは必須なワケで。でもウブチンはあんまそういうのしないなぁ、という印象を綺麗に裏切られて、今回の涼月の自然ににおいたつ可愛さ・エロさはいきなり練達していました。そーいうのが書きたくなったのかそれともそーいうのが必要になったのか、どっちかは知りませんがどちらにせよ必要な味を必要以上の精度で出せるのは凄い。
でも、短編としての完成度はやっぱ第三話「Holy Week Rainbow」がピカイチ。まぁ僕が白い子に甘いってのもあるけど、透明感のあるキャラクターどおしの静かな交流から、悲しい別れに繋ぐ詩情のこみ上げはやっぱり巧い。非常にウブチンっぽい、どーにもならんところに踏み込んだお話で、好みであります。ナイスグッド。他の短編も水準以上に良く、やっぱウブチン面白いなと思った。
