イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スプライト・シュピーゲル 3

冲方丁ファンタジア文庫シュピーゲルプロジェクトの、富士見のほうの三巻目。なんでか、お話の大きな部分はスプライトで進むことが多いですね。今回も24形式の長編一本でありまして、トラクルおじさんとの対決関係に一応の区切りがついたり、MSS内部に敵さんの手が伸びてきたり、大きくお話が回りました。
でも細かく細かく、トッコー児童のギザギザハートを書くのを忘れないのがウブチンクオリティ。今まではただのコメディリリーフだった水無月君の亜音速の掘り起こしは、流石の一言でした。キャラたくさんいるのに、良く被らず埋もれずエッヂ立ててかけるものだと感心します。そこらへんは、やっぱウブチン特有の作家の力なんでしょうねぇ。
今回は今までのロボット兵器を人間サイズの戦闘機がぶっ潰す展開ではなく、陰謀と圧力と埋毒でじわじわ締め上げる展開。スプライトは話の規模とか色々と派手だったので、新鮮かつそれにとどまらない面白さがあったと思います。やっぱウブチンは都市、という概念になんかどうしょうもない圧迫感を感じていて、ラノベレーベルとはいえ都市を舞台にするこの小説たちも、そのままならなさを書かないと納得がいかないのではないか。それ故、今回みたいな絡め手は必須だし、面白かったですね。
キャラの動きとしては、なんか知らぬ間に黄色がヒロインレースの馬身を詰めてきておりびっくりデス。上でも書きましたが、いい意味でエロゲ臭が薫る、女の子が可愛い(だけじゃないのがこのろくでもない小説でありウブチンの因果なところですが)小説に仕上がっていると思います。そこを一身に受けたのが、オイレンだと涼月でありスプライトだと黄色かな、と。まぁ個人的な好みもあるわけですがね。
ともあれ、「まぁこうなるだろう」と「まぁこれが必要だよね」を完全にこなしつつ、「えそうなるの」と「ああやっぱいいなぁ」をしっかり埋めてくる、予想と期待両方を裏切らない、いい小説でした。やっぱウブチンは小説造るの巧いなぁ。