イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

縞模様の歴史

ミシェル・パストゥロー、白水Uブックス。中世以降のヨーロッパにおける、縞模様の受容変遷を追いかけたコンパクトな本。サブタイトルは「悪魔の布」であり、中世以来越境者やアウトサイダーの衣装であった縞模様を現している。
筆者は紋章学が専門であるが、そこにとどまらず、(主に)中世期の色彩学や動植物の図象学など幅広い分野に著作がある。特に服飾の歴史に関しては非常に鋭い研究を多数残りしており、この本もその系譜に則った書物だといえる。とはいうものの、ページにして120程度の小品であること、中世のみならず近世・現代の縞模様の意味などまで踏み込んでいることが、筆者のほかの書物とは異なるところである。
ページ数は少なめだが、筆者の適切な調査と知識、確かな筆力でコンパクトにまとめられた考察は非常に読みやすい。常に「社会の中の縞模様の意味」を重視し、その変遷を追いかける視点がぶれないことで、可読性と同時にテーマの深さも獲得している。かすかに議論が駆け足だとかんじる部分もあるが、本の体制と扱うテーマの広さを考えれば致し方ないだろう。
ファッションというテーマから連想する軽薄さとは無縁な、丁寧かつ取り回しの良い研究書である。良著。