イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

鉄風 1-4

太田モアレ講談社。なんかコレが初単行本らしい作者の、女子総合格闘漫画。いやーこの漫画面白いわ。話の筋としては万能の天才が、純粋極まるお目目キラキラ子にライバル意識ムキムキで女子格の暖簾を潜る、というお話なのですが。万能の天才の方が主人公で、しかも性格極悪、という初期条件の付け方の時点でまず巧い。
この性格の悪さの描写が丁寧かつ執拗で、ああコイツ寂しくて内罰的で他人見下しててそのくせ助けてほしいめんどくせー奴だなぁとすんなり飲み込めます。そこらへんの弱さ脆さの描写で、天才なのにすんなりキャラに入っていけるあたり、巧い作りだなぁと思う。
そのくせこの天才ちゃん、総合格闘技には相当ひたむきに向かい合って、根性悪いままガツガツ熱血青春してしまう。片桐はいり似の師匠を筆頭に、なかなか癖のある連中が巧く絡み合って、凸凹した人間模様が生まれています。天才だから理由なく強いわけではなくて、バックボーンである空手以外の技術、具体的には寝技が開花するまでは四巻かかるわけだし。そこらへん丁寧。
肝心のアクションシーンの作画もかなり描けてて、速さと重さが巧くインクに乗ってる感じです。やや漫画表現よりの、ハッタリの効いた描写が気持ちいい。個人的に好きな絵は鎖骨への打ち下ろし。地味だけどフルコンで長身長の選手といえばコレの印象なので、一番最初に出た技がこいつで非常にびっくりした。
お目目がキラキラしていようがいなかろうが、勝ち負けの領域で才能の不公平というのはどうにも付きまとう問題で、そこに快楽と劣等感を感じる天才もいれば、無自覚に人を壊すやつもいる。キラキラ勢をぶっ潰す立場に主人公を置いたのは、天才論としてもなかなか珍しい位置だといえるわけで、ここも面白いところですね。
キャラの粒がたってて、メインである競技の筆が乗ってて、主人公の変化という流れもくっきり見える。しいて難をいうなら、全体的にややテンポが遅いのと、局面を越境する総合らしい攻防がもう少し見たい、ってところですか。組まれた後の打撃、打撃の中の組み技があると、異種格闘技味が薄れるかなー、と思う。ちろりと文句を出しましたが、トータルの点数は凄く高いです。温度あるし、スゲーいい漫画。