イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プロジェクトセカイ カラフルステージ感想:Re-tie Frendship

 過去の因縁乗り越えて、バリバリ仕事だMORE MORE JUMP!
 売れてきたからこそ大変なモモジャンの切り込み隊長、桃井愛莉の過去の傷をぬいなおして、新たな一歩に繋げるイベストである。
 ソロイベからTV出演、モモジャンが世間に見つかるイベントを連続させた結果ドカっとサクセスが炸裂して、学生ベンチャーの側面もある物語は途端に忙しなさを増していく。
 学生としてどういう制度に身を置いて日々を過ごし、適正なワーク・ライフ・バランスをどこに見出していくのか。
 ふつーの高校生が歩む道程を、三段飛ばして”仕事”するようになってきたモモジャンの、学生だからこその悩みを掘り下げていく。

 桃井の姐さんはいつでも面倒見が良く、頼りがいがあり、優しく強く皆を導いてくれる。
 主に混合エピで無敵っぷりを多数発揮している愛莉だけども、今回は忙しさの中で置き去りにしてほつれた友情に、立ち止まり思い悩む姿が描かれた。
 無敵の愛莉ちゃんを見ているとマジ清々しいので、雫よろしくお祈りポーズでその活躍に陶然としてしまいがちなんだけども、当然彼女も高校ニ年生の子どもで。
 しかもかつての体験した嵐に人生メチャクチャにされ、重たい荷物が多い人生を歩んでいる。
 気づけば離れてしまっていたあゆみさんとの距離に、思い悩みなかなか進めない足踏みは、そういうスーパーヒーローではない桃井愛莉を思い出させてくれた。
 愛莉ちゃんが皆に優しく、見てて元気出る最高のアイドルなのは、そういう等身大の生身があればこそなわけで、進級を前にしたこのタイミングで、そこに立ち戻ったのはとても良い。

 

 クラスメイトと歩幅が合わなくなるという、愛莉……というか売れだしたモモジャンの悩み。
 それは学生というより社会人の苦悩で、一回ビジネスの残酷さにもみくちゃにされて人生ドロップアウトしかけた所からのスタートだから、夢の階段進んでいけばまた、忙しさの中に戻っていくのも道理だけども。
 ぼんやりフツーの学生してれば直面する必要もない、夢を追えばこそ立ち現れる難しさをどう噛み砕くかは、別のユニットで別の夢に突き進んでいる人たちにも、結構響くネタだと思う。
 『友情か、仕事か』という二項対立自体を解体し、忙しさの中でも縁をつなぎ直す方法、それを繋ぎ続けるやり方を今回、愛莉は掴み取る。
 その答えがスーパー高校生の特別な魔法ではなく、ためらいや後ろめたさにビタビタ殴られつつも、小さな勇気を振り絞って古ぼけた友情に踏み出すという、地味で誠実なやり方だったのも良かった。
 結局そういう所に立ち戻る以外に答えはないし、そういう当たり前の辛さと尊さに向き合ってるからこそ、桃井愛莉はハンサムなのだ。
 そういう人間の地金は、ありふれたフツーの高校生でも、仕事しまくりなスーパー高校生でも変わりがない。

 今回はこんがらがった心を休め、道を示してくれるセカイとの基本的な関係にも立ち戻った話で、あえて傷を切開することで心の膿を出す、KAITO兄さんのメンタル外科医っぷりがありがたい。
 元々セリフに頼らず表情で魅せる演出がプロセカ巧いけども、悩みを抱えてセカイを訪れた愛莉のためらいと、それをKAITO兄さんが見抜いて助け舟を出すまでの心が、今回はよく動いていたと思う。
 特に大きな衝突もなく、なんとなくの忙しさですれ違って、だからこそ繋ぎ直すのが難しい思い。
 それと向き合い、嘘偽りのない気持ちで後輩に範を示すためには、まず心残りと向き合わなければいけない。
 目を向けたくない痛みを優しく受け止め、言葉にし共有することでより良い道を探っていく、セカイ・セラピーの一番いい所が、今回元気だったかなと思う。
 これを真横で受け止め、親友がもっと良い日々を過ごすべく前に進めるか、超ハラハラしながら祈ってる雫の健気さも、よく書かれてた。
 濃いめの絡みは少ないんだが、だからこそ一番間近で特別に繋がってる雫の存在感は強かったなぁ……。

 

 今回はみのりも主役で、喜ばしくも増えていく仕事量の中でどういう環境を選ぶべきか、決断を迫られる。
 こはねや志歩との、ユニットの枠を超えた当たり前の友情がガシガシ書かれて、大変良かった……からこそ、それが壊れていく未来に怯える気持ちも、よく伝わる。
 悩みの共有が早くて具体的なのが、ユニットとしてのモモジャンの健全性であるけども、進路選択を前に揺れる気持ちを伝えた上で、みのりは思う存分誠実に悩むし、それを受け取って愛莉も悩む。
 腰を据えて自分の気持ち、叶えたい未来と向き合った上で、後悔のない答えを選ぶことが、これから先モモジャンが果たすだろう快進撃を、後ろから支えもする。
 そういう、有能ビジネス集団としての顔が的確に素描されていたのも、今回の良かったポイントだろう。

 『ファン目線を生かして、刺さる企画を出せる』という、みのりだからこその強みなんかも描写されて、どんな風に売れてきたモモジャンが仕事をするのか、していくのか、土台をくんだ感じもある。
 みのり以外にとっては、かつて大人の都合と勝手なイメージに振り回されて、諦め手放してしまった道。
 みのりにとっては最高の仲間と並び立って、新たに進んでいく夢の道。
 酸いも甘いも噛み分けた桃井の姐さんが、だからこそ立ち止まる過去の痛みはこれからみのりが向き合うべきもので、同時に愛莉自身が今取り戻す、かけがえのない輝きでもある。
 実は結構ユニット内部に人生体験のギャップがあり、それが大きな推進力にもなっているモモジャンが、今どんな顔をしているのかを活写するイベストでした。

 これで四人全員単位制に足場を振り替えて、バキバキに仕事しまくる環境が整ったわけだが、こうして本腰入れればモモジャンの立ち位置も変わる。
 かつて三人が抗えなかった、デカくてヤバい人気商売の闇も、容赦なく襲ってくるだろう。
 ゼロから新たに夢を掴み直し、もっとより善く、もっと眩しく輝いていく。
 そういうモモジャンの初心を守りつつ、より大きなスケールと忙しさで加速していく彼女たちの”今”を、どう描くか。
 愛莉の凄く臆病な部分に深く切り込んだ今回の筆が、こっから先の物語に優しく保証してくれた。
 モモジャンが吠える”もっと”の先は、すごく楽しみだ。