イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BanG Dream! It's MyGO!!!!!:第2話『もう誘わない』感想

 今宵獣達が静かに、情念の牙を研ぎ澄ます。
 バンドリMyGOアニメ、戦慄の第2話である。
 そこかしこに地雷が埋まる感情のジャングルに、迷い込んだと気づいてないピンクのキョロ充は、果たして激ヤバ女たちの荒波を乗りこなして無事バンド結成までたどり着けるのか。
 過去に爆弾抱えてるCryでSickな敗残兵共も、いきなりバカウマソロで好き勝手絶頂カマすギター星人も、軒並みイカれきってる中で一人ノンキ顔、気楽に他人の思い出踏むヤバさ自覚してねぇ愛音の、一挙手一投足にヒヤヒヤできるエピソードだった。
 『お前がサンジゲン謹製のオモシロ顔披露している裏側、マジでネトネト情念地獄だぞ!』と忠告したくもなるが、巻き込まれた側の愛音も相当いい性格しているので被害者感薄いというか、『いよっしゃあみんなで行くぞ地獄絵図!』みたいな勢いがガバっとのしかかってきて、大変威勢がいい。
 一応は客相手に堂々舌打ちカマす立希や、音楽以外目に入ってねぇ本物のパンクスっぷりが気持ちいい楽奈より、何も知らねぇピンク髪をかつて愛し引き裂かれた夢を引き寄せるために、微笑みの仮面に思惑を隠して立ち回るそよのヤバさが際立つ。
 月女ブランドの価値を理解し、特別を求める愛音を静かに誘導してる奥で、グツグツ沸騰を続けている感情の熱量が、大変俺好みでよろしゅうございました。
 第1話は燈にクローズアップする回だったので、今回は他メンのヤバい地金をそれぞれ見せる感じだったかなー。

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第2話より引用

 というわけで”微笑む怪物”長崎そよの話を、まずしたいんですけども。
 CRYCHIC残党のくっそ面倒くせぇ関係性を欠片も知らねぇし、音楽の天国と地獄を軽くも見すぎている愛音の気楽さを、自分では動きにくくなってしまった現状に風穴明けて、欲しかったものを取り戻す契機に使う。
 おしゃれカフェで展開する一見気楽な会話の中で、そよは愛音が自分の外装に惹きつけられ、何も持たないからこそ何かを手に入れたい渇望に突き動かされている現状を、静かに睨んでいる。
 一見対等にキラキラしているように見える二人が、何の華も背負わない愛音と月女に相応しいブランドと知性を持つそよに分断され、咲き誇る華やかさを手渡すつもりがない様子が、しっかり背景に転写されているのはおぞましいほどに残酷である。
 愛音に何も手渡さずただただ自分の欲しい物を奪い取るつもりなんだと背景が語る中、そのそよが渇望する燈は(それが形だけのものでも)自分に優しく興味を持ってくれる愛音に惹かれていて、惜しげもなく背負った花を愛音の方に溢れさせる。
 しかしそれはあくまで暗中の陰花であって、中学時代の間違えをやり直すために、形だけの充実と華やぎを求めている愛音にはその意味が、なかなか分からない。
 一見乙女たちの青春を優しく彩るように思える花々が、ここまで毒々しい象徴として活用されている画面の作り方、演出の受け渡し方は流石である。

 椅子や観賞植物で分断されて、一方的に利用され搾取されるそよとの関係性に、愛音は目が開いていない。
 その実態も意味も知らないまま憧れてる、ハイブランドなお嬢様スタイルと触れ合うことで、自分も満たされ輝くのだと素直に信じ、その眩さで己の浅はかさ、テキトーさ、残酷な軽薄から目を塞いでいる。
 同時に愛音のフットワークの軽さは、誰も手を差し伸べてくれない燈の寂しさに(その真実に踏み込まないまま、だからこそ)よりそい、特別な相手として見初められている。
 その熱情はそよこそが欲しい物なのに、何も知らねぇピンクのバカ女が横からかっ攫っていって、だから便利に使って自分に取り戻す算段を、微笑みの奥で練り上げる。
 立希がキレるのも当然の、私たちの一番大事で一番柔らかな部分に土足で踏み込んで、アハハと馬鹿笑いしてる愚か者への憤怒と軽蔑を、悟られないように慎重に、慎重さすら気取られないように『いい友達』を装って、バンド再結成への道を整えていく。
 それぞれの痛みと切実さが、奇妙に軋みながらすれ違っていく手応えが、穏やかな美しさと狂った熱量を同居させていて、大変いい感じだ。

 

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第2話より引用

 携帯電話は非常に優秀なメタファーとして、そよと燈がまず目に入れているもの、それ故のすれ違いを浮き彫りにする。
 そよは愛音がウキウキ送り付けたメッセージ……バンドとして進んでいく今と未来を鬱陶しげに消去して、ホーム画面に設定された私たちの永遠を闇の中に抱きしめる。
 とにもかくにもそこだけが、私たちの永遠が眠っている場所であり、誰かを踏みつけに利用しても取り戻さなければいけない楽園なのだ。
 眩いネオンは彼女が持っている華やかさ(愛音が持っていないからこそ求め、借り受けようとして跳ね除けられているもの)が、あくまで彼女自身を照らさない現状をうまく描く。
 闇の中唯一の輝きは携帯電話に封じられた、CRYCHICにこそあるのだ。

 一方燈は傷ついた小動物のようにふよふよ彷徨いつつ、過去以外の何かを……遠い星をずっと見上げている。
 それはプラネタリウムによって作られた偽物の星空で、それでも星やペンギンに強い興味をもって、それを誰かと共有したい気持ちが行き先を見失ったまま、一人でうろついている。
 彼女が収集するのが”バンドエイド”なのは、凸凹だらけ傷だらけの激ヤバ女たちがどうにかバンドを組む(らしい)アニメにおいて、その痛みをけしてあげたい優しさを燈がもっていることを、静かに示しているように思う。
 子どもが溜め込んだどんぐりや変な虫を大人に差し出して跳ね除けられるように、心の中パンパンに溜まった星やペンギンの話への祈り、誰かと繋がって誰かに優しくしたい燈の心は、執着とか庇護欲とかが強すぎるかつての仲間とは、痛みを交えて共有できない。
 だからそれを受け止めてくれそうな愛音に過剰に前のめりになり、多分CRYCHIC時代にそれで何かを壊したから、二度間違えないように立ちすくんでいる。
 その内側に閉じこもっているように見えて、自分なり何かを差し出して繋がろうとする意志と、どうにもうまく行かない歩き方が、僕はすごく好きである。
 こういう燈の柔らかい部分、外へ前へ行こうとする意思を、逆行するベクトルで絡め取ろうとするから距離を取られるんだよなぁ長崎……。

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第2話より引用

 っていう微笑みの圧力と、真逆のところから真の月ノ森イズムを体現しているのが、ずぶ濡れ淑女・豊川祥子である。
 『ごきげんようなお嬢様学校で”祥子”て……やっとるなぁゆに子!!』と大興奮しておるが、今は羽女の制服に身を包んではいても徹頭徹尾お嬢様、そよが良いように使おうとした睦にも一瞬ツンツンした後すごく柔らかに接して、相手の事情と気持ちを慮ってあげている。
 愛音が形だけ求め、その希求をそよが良いように絡め取っている”お嬢様”の真髄を、携帯電話に閉じ込められたCRYCHICの練習風景でも存分に発揮して、たいそう生きにくいだろう燈や睦を甲斐甲斐しく世話し、お水も出してくれる。
 『……もしかしてこの子、めっちゃいい子じゃね!??』と思わせるには、十分効果的で的確な……だからこそ第1話冒頭の激しく厳しい態度が腑に落ちない、良い描写である。

 このお話はCRYCHICの砕かれた過去を、不鮮明なままお話にばらまいて、な~んも知らねぇ愛音を探偵役にして拾い集める、一種のミステリ的構造を持っていると思う。
 たきが自分が世話役として立ち位置を確保できる、心地よい楽園として見ていた(部分もある)CRYCHICにあって、一人ひとりの苦しさや難しさを見れていた少女が、なぜそれを壊すような暴挙に出たのか。
 なぜ月女の制服を脱いで、羽丘に足場を移しているのか。
 今後地獄のバンド結成クエストに勤しむ中で、色々理解ってくるだろう謎に前のめりになれるよう、既に明かされたものと今理解っていくものが噛み合って駆動しているのは、分厚い楽しみ甲斐がある。
 俺はカバンパンパンに自分だけのピカピカドングリを詰めこみ、それをどうにか受け取ってもらえないかとモジモジしているバカ達が好きなので、燈や睦に優しくしてくれる過去の祥子も、その優しさの行き場を見失ってしまってる感じの今の祥子も、メチャクチャ好きだ。
 バンドの座組を見るだにMyGO!!!!!とこのアニメは、彼女が行き着くべき安住の地にはならないんだろうけど、どっかに彼女だけのバンドがあってくれると良いなと思う。

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第2話より引用

 かくのごとく時の鎖に縛り付けられた元CRYCHICメンバーであるが、そういう風通しの悪い環境に颯爽と現れた、本物のパンクスのギターが吠えるッ!
 マージでなんもかんも置き去りにロックンロールのど真ん中に突っ込んできて、大暴れだけして大満足で帰っていくやりたい放題、湿度高すぎなこのアニメに足りない全部だよッ!!
 お互いの事情や痛みを知りすぎているせいで、相手や自分を縛り付けて動けない不自由さは色濃く書かれているので、愛音と合わせて何も知らねぇからこそ余計なもんをぶっ飛ばせるロックンロール魂を、楽奈は体現するキャラなのかな、と思う。
 『一緒にバンドやろっか?』と気楽に告げれる愛音は、燈にまつわる事情も痛みも知らないし、音楽それ自体にモチベーションもない。
 戸山香澄なら瞳の星をキラキラ輝かせていただろう龍の吠え声に、耳をふさいで騒音扱いは、炸裂する夢がすべてを生み出すバンドリイズムから程遠い。
 でもその軽い足取りが、ずっしり重たく足踏みしてる連中には手渡せない何かを、本当はバンドやりたい燈に手渡しているのも、また嘘じゃあない。

 そういう過去を引きちぎる力強さが多分、重たい因縁と感情に縛り付けられている(からこそ、その摩擦熱が面白くて仕方がない)このお話には、決定的に重要なのだ。
 星を体現していた初代主人公の衣鉢を継ぐように、プラネタリウム(一話のカラオケに引き続き、イミテーションだけど側においてしまう願い)で星を見上げてる燈が、ただ友達と一緒に過ごせたからだけでなく、確かに魂を震わせえた”何か”が、ギターとマイクには宿っている。
 その重たさを知らない愛音が音楽に出会っていくことで、しっかり浮き彫りになるテーマがあるのだろうし、それに取り憑かれ周りが見えないクレイジーガールだけが、ぶちかませる衝撃ってのもあるだろう。
 なにかとジメジメ、人間存在が染み出させるネトネトばっか気にしている連中が多い中『これはバンドの、音楽のアニメなんだッ!!!』と叩きつけてきた楽奈ちゃんには、今後の炸裂を期待したい。

 

 

 というわけで、バラバラに引き裂かれた思い出の引力にいまだ惹かれる群像が、ビビビッと鮮烈に自己紹介してくる回でした。
 みんな相当なロクデナシで、切実に何かを求めるがゆえに不自由で、でもそうやって生きざるを得ない熱と願いを秘めている。
 そういう地金が見えてくると、青春とロックを扱うアニメに体重乗せる心持ちが、見ているこっちにも整ってきます。

 沙綾やつぐをサラッと出して、既存ファンにウィンクしつつも新たな物語、新たな観客を邪魔しない塩梅もちょうどよかったです。
 沙綾がパン屋出て別ん所でバイトしてる姿、マジで感慨深かったな……。
 あそこでコーヒー出してるお姉さん達も、テメーらと同等以上のでこぼこ道を傷だらけ駆け抜けて、軽やかに笑っているのだから、青春迷子たちも自分たちだけの迷路を、全力で突っ走ってくださいねッ!!
 そういう気持ちになれる新たなバンドリ、大変良いです。
 次回も楽しみですね!