青春殺害事件第一被害者の証言を一人称で受け取り、序章を終えて加速する迷子たちの足取り。
テキトーキョロ充の横車で一気にバンド結成……で良いのか!?
奇っ怪な温度感で突っ走るMyGOアニメ第4話、生粋のパンクスもノリで参戦だ!!
第3話を燈主観でぶっちぎった結果、CRYCHIC当事者はその残骸に触ると痛すぎて動かせない状況も良く見えてきた。
なので何も知らない、バンドも音楽も現状ファッションでしかない愛音がグイグイ状況を回して、すれ違った当事者を繋げて話を進めていく。
それは関係者の気持ちを斟酌しない身勝手ではあるけど、実際必要な処方箋でもあり、つうかそよはそれを承知の上でもう一度彼女の黄金を掴み取るべく利用もしてて……と、奇妙にもつれた状況は停滞していない。
そんな愛音に当然の反発をぶつけつつ、明らか重たすぎる思いを燈にぶつけている立希の気持ちは、実は当の想い人とは少しズレていることも描かれていた。
そこに飛び込んできた、ただただギターが弾きたいだけの部外者が湿度高い状況を、どうかき回していくか。
おそらく1クールかけてMyGO!!!!結成までを追う物語、一筋縄ではいかない混迷がグツグツ煮立ってきて、大変面白い。
今回はとにかく指先と遠近法の表現が力強く、抱え込んだ内心を少女たちが弄んでいる様子、それ故に近づけずすれ違っている現状が、適切に示されていた。
愛音は喝采願望を満たすために燈とCRYCHICを利用し(そればっかりでもないけど)、そよがなかなか接近できない距離を部外者であるがゆえに埋めていく。
祥子に魂を抱きしめてもらった思い出を、反芻するように愛音との触れ合いを求める燈は、愛音がCRYCHICに関わりないからこそ前のめりに、過剰な重さで甘えてもいる。
自分が人間になれるのだという期待感を、残酷に引きちぎられた痛みはそよとぶつかるたびに強くなり、せっかく差し出してくれた好物も受け取れないまま、カバンを抱えて逃げてしまう。
そして友好的で有効的な関係を維持するべく、愛音にもそよは飲み物を用意しているのだが、それを差し出す場面は描かれない。
CRYCHIC時代を共有していない愛音に、そよが何も手渡すつもりがないことは、祥子との接触が不首尾に終わった後の表情からも見て取れる。
すっげーシケヅラだな……これを愛音と直面している時には、微笑みで覆い隠して悟らせないところが、長崎そよという女の立ち回りなのだ。
祥子は前回示した生粋のお嬢様っぷりを維持して、バンド探しに困っていた同級生にちゃんと声をかけるが、話題がCRYCHICに入った瞬間一気に場が冷える。
そよの取り繕った外面に対し、祥子の人当たりの良さには嘘のない温もりがあるけども、ことCRYCHICに話題が移ると、身勝手な激情と激しい痛みを抑えきれない。
心を守る盾のようにスクールバッグを抱きしめる仕草、それが生み出す遠い距離感を、愛音相手に隠そうともしないところが、嘘のつけない祥子の人格を良く表している。
ここら辺、CRYCHICという集団に何を求めていたのか、そよと祥子で相当違っているんだろうなと感じられ、これがまた二人の遠い距離感を裏打ちもする。
そよは髪の毛をイジる迷いを、現状うまくコントロール下においている愛音の前では見せない。
青春を取り戻すための囮であり犠牲でもある弱者を前に、徹底して相手に都合のいい自分を捏造し、結果自分に都合のいい結末を引き込む。
そうう計算高さが、祥子を前にするとほつれている感じがある。
つれない態度で再結成の誘いを跳ね除け、何かを抱え込んだまま一人で進んでいってしまう祥子に、そよは追いつけない。
坂道が強調する遠さを埋めれないまま、うざったくまとわりつく愛音のメッセージを見つめる、その冷たさ。
愛するべき相手を選ぶ打算が、闇の中炯々と牙を研ぐ獣の情動ゆえに巻き起こっているところが、長崎そよのとても好きな部分だ。
社交術としての博愛と、その奥に秘めた妄執の同居と相反……美味しい女だよ。
そういう複雑さを全く見抜けないまま、愛音は現状を動かすために必要な最善手を、浅はかに叩きつけてくる。
何も知らないからこそ必要な行動が取れる、タロットでいえば”愚者”の立ち位置に愛音はいて、その物語的貢献度は大変高い。
俯瞰で見下ろしてみれば愛音がなんかしないと状況が動かないのに、その浅薄な内面
をたっぷり垂れ流しにしている結果、視聴者からあんま感謝も尊敬もされないポジションをうまくキープしているのは、面白い進め方だなと思う。
愛音がモノの分かった進行役として話に定着しちゃうと、他の子達と同じく迷って間違える一人の主体としての存在感が薄れて、話に便利になりすぎるからな……バカでテキトーなのが良いんだ(ひどい褒め言葉ね……)。
そんな愛音・ザ・部外者がセッティングしてくれた語らいの場でも、指先はとても繊細に少女たちの戸惑いを表してくる。
起きてしまった断絶の、あまりの痛みに立ちすくんで、勝手な思い込みと内罰……『私が全部悪いんだ』と思いこむことで無明の混沌に一応の答えを用意して、安定を得ようとする燈の逃げが。
燃え盛る愛を真っ直ぐに伝えられないまま、燈を傷つけそうな相手全部に噛みつく立希の凶暴な純愛が。
揺れ動く内心を必死に覆い隠しながら、望む結末を引き寄せるべく落ち着いた進行役を演じ続ける、そよの震えが。
それぞれの指に宿って、虚空に迷う。
つーか何かと”一生”を望む燈も、そこにノータイムでOK出すほど燈LOVEなのに当人になかなか伝わらない立希も、微笑みながら湿った感情を飲み干すそよも、全員異常なんだよ間違いなく。
燈一人称で描いた第3話には、その異常生を外側から客観視する視線が物理的に存在し得なくて、お話を通じてそこに共鳴しちゃっている今の僕らも、この湿り気と繋がりがどっかヤバいと、なかなか気づけないんだけども。
ここら辺をヤイヤイツッコんで、正気の視線を会話にぶっ刺す仕事も、愛音がやっている。
立希とバチバチなことで、ここら辺の”常識”が膿んだ関係性を切開するチャンスが多いし力強いしで、ちょっとコミカルな味わいで衝突しているのも、なかなかいい感じだ。
愛音が横から押さないと、三人は一生勘違い抱えたまますれ違って、過剰な思いをどうぶつけ合ったもんか機会も見つけれず、足踏みを続けていた。
その停滞を動かした愛音には、元CRYCHICもうちょい感謝して良いのだが、冷たいよなぁ新メンバーに……。
燈は自分に優しい(と思い込んでる、思い込みたい)愛音激LOVEだけど、その表現が下手くそ。
立希は燈への防衛意識が高すぎて外圧に過剰反応してるし、そよはその利点だけをかっぱいで心ある人間として扱わない(扱わないことで、難局を自分が望む形に決着させる怜悧を維持している)からなぁ……。
ここら辺のアンバランスも、今後ちったぁ是正されていくのだろうか?
他人が見ている世界を共有できるほど、緊密に心を触れ合わせる体験はそらー素晴らしいけども、その近さ故に生まれる危うさを自覚することは難しい。
だからこそ、なんにも知らねぇ部外者が差し出す思わぬ手助けには、時折大きな価値が生まれる。
そこらへんの奇瑞に目が開いてないのが、高校一年生のお話だなーって感じがして凄く良い。
少なくとも立希が見せてる剥き出しすぎる気持ちの叩きつけ方より、愛音が丁寧に取り繕っている柔らかさのほうが、関係が深くないけど知り合ってしまった人間の繋がり方としては適切だ。
人間関係なんてどうやったって利害と真心の入り混じった形にしかならないわけで、愛音が”純粋”ではないことには良いことだってあるし、その差し出し方も及第点だと思うのだけど、受け取る側の応対は三者三様、結構な落第点に思える。
でもそこら辺”正解”出来る丸い人格が頭寄せ合って生まれる、湿度もヤバさも薄い話なんて、四話まで付き合っちまった視聴者としては求めていないわけで、今後もバチバチギスギス、何かがズレながらたしかに繋がっていく過程を、繊細で偏執的でもある筆致でもって見せて欲しい。
他の連中が指先一人遊びに夢中な中、結構複雑な内心抱え込みつつも両手広げて、風通しの良い変化を呼び込もうとしている愛音が、俺はやっぱ好きだね。
そういう横紙破り担当、能天気で無神経な進行マシーンにも当たり前に過去があり、複雑怪奇な内面がある。
彼女が開けないままのスーツケースに何が閉じ込められているのかは、燈の預かりしならない過去だから、現段階では暴かれない。
あんだけ浅ましい現状をたっぷり語っておきながら、他人のナイーブな部分土足で踏んでまでなんでそんなことしなきゃいけないのか、喝采願望の裏側は、繊細に仄めかされつつ核心を暴かれない。
それは一見無遠慮でおバカな愛音が知られたくないからこそ秘す思いを、結構尊重した筆先だと思う。
バンドさえ結成すれば、求めていた注目と充実が得られる。
風呂場でノンキにデカ口開けて臨んでいた夢は、古臭いアニメの終わり方のようにギャフンとアイリスアウトしていくわけだが、そのコメディには顔のないAnonymousにならざるを得ない花のなさが、残酷に反映されてもいる。
あんだけ他人と繋がれない生き方をしておきながら、羽女のマスコットとして注目され続けている燈とは真逆の、どうやったって主役にはなれない凡庸さ。
特別な一人称での独白を、なかなか預けられない存在の軽さ。
千早愛音の抱えた影は、CRYCHICの深い闇と対比する形であえて軽く、明るく、楽しく現状書かれているけど、抱えた火力は似たようなもんじゃねぇかな……と現状思っている。
湿った本筋に選ばれなかった端役が、握ったナイフで物語を突き刺す瞬間が多分、このお話には用意されているはずなので、炸裂の瞬間が楽しみでもある。
まー大惨事だろうな……。
そういう繊細さの片鱗を匂わせておいて、あざとい黒縁メガネで萌え萌えアピールぶっ込んでくるところが、千早愛音の怖いところでもあり。
一人だけアニメ剥き出しのどピンクだったり、萌えのフィジカルがシンプルに太いの凄いよね、千早愛音。
燈セントリズム一本で生きてる立希は、実力も覚悟も無いくせに前には出たいクソ新参を認められないけど、その視線が向いてる燈本人は愛音の柔らかな受け止め方に救いを見出していて、二人の道はすれ違っていく。
一応はバンドを組んで新しい場所に動き出しているはずなのに、どこにも進めていない噛み合わなさを、良く喋る足で描く演出はかなり好き。
本音を隠したまま表層だけ取り繕い、ぶつかったり和らいだりを潮の満ち引きのように繰り返している会話のリズムが、やっぱ好きだな。
適度に生っぽくて、適切にフィクションっぽい心地よさ。
前回見たように、燈の視界はCRYCHICを通じてようやく引っ張り上げられるもので、そこから見えないものはとても多い。
立希の過剰で異常な高松燈への愛情は僕らには(それこそネタになるくらい)明瞭で、しかし向けられてる当人にはなかなか伝わらない。
24分燈の一人称で通したアバンギャルドは、傷つき裏切られた被害者としての彼女を強調するけども、過剰な献身に気づかず向き合えない、加害者としての彼女もまた、作品は結構冷静に捉えている。
そりが合わない愛音が、欲しいタイミングで欲しい物を(その思惑は横において)差し出してくれた救世主として、燈にぶっ刺さっちゃってる現状が、立希ちゃんにはなかなか厳しいわな。
CRYCHIC時代、なにがそれだけ高松燈を立希ちゃんの特別にしたのか(そして、燈の特別にしていないのか)がまだ藪の中なので、ここのズレを切開するヒントが足らないのが、いい感じのサスペンスだ。
明らかに矢印が釣り合ってない関係性が、バンド内外随所に埋まっていて、いつ暴発してもおかしくないヒリヒリ感を、一見朗らかな青春ストーリーが包んでいる。
重すぎる空気を(主に愛音が)時折抜いて、そういう明るさもけして嘘じゃないのだと見せてくる所含め、なかなか面白いバランスで転がるお話である。
どう考えても問題山積なMyGO!!!!結成物語と、謎多きCRYCHIC殺害事件の真相探しが同時並列的に、あるいは重なり合いながら進行することで、生まれる奥行きと物語的トルク。
それが今後どう疾走し、衝突し、炸裂するかは大変楽しみである。
ほーんと、あらゆる所に地雷だらけよ。
そういう青春動脈瘤の経過観察は先に回すとして、側道もガンガン拡張工事がなされていくよ!
知らねーギターとか知らねーベースとかがどんどん出てくる、治安がおよろしくはねぇ大ガールズバンド時代の”風”を心地よく感じつつも、色んなことが色んな人と触れ合って起きそうな気配が、パンパンに膨らんできている。
何もいわねぇ睦がじょうろの先、雫と溜め込んだ感情の正体も気になるし、立希の尖りっぷりに同じ鋭さでぶつかってくれる、毒舌ベーシストのことも良く知りたい。
つーか後にMyGO!!!!となる五人と同じくらい、深度と重量のある描写を任されているキャラが多いんで、余りメンバーは別バンド組んでそっちのサーガと並行進行なんだろうな……(検索開始)
なるほど、”Ave Mujica”つうのがあるのね……祥子ちゃん、どんだけ傷ついたか知らないけど仮面被って中二病メロデスバンドは、あんまりにもトビすぎじゃない!!!?
これはあくまでMyGO!!!!のアニメなので、そっちをどんだけ削り出し、削りきれない部分をどのメディアで扱っていくのは、気になるポイントですね。
あとまー、愛音以外の超部外者&自由人、とにかくギター弾きたくてしょうがねぇ生粋のパンクスが、今後どう刺さるかだな……。
音楽の話である以上、音楽それ自体には興味がない初心者である愛音の、足りない部分を情熱的に補うキャラは必要なのだが、それにしたって楽奈ちゃんはぶっ飛びすぎだろッ!
元CRYCHICが人間関係の再構築に縛られすぎなので、そこ蹴り飛ばして『バンドなんだから楽器握れ! 歌作れ! そっからだろ全部はッ!』と吠える役は、湿度下げる意味でも大事である。
この仕事は喝采願望に縛られ、人生のセンターステージ立つためにバンドやってる愛音には無理なので、楽奈ちゃんのギターが担当することになる。
『オモシレーのはお前だよ!』と思わずツッコむ、激ヤバギタリストがMyGO!!!!に何をもたらすのか。
全く目が離せない。
あと最後の最後にぶっ込まれた、ピカピカアイドル地獄絵図は一体何なのッ!?
まなちゃんの明らか取り繕われてる朗らかさと、隠しきれない湿り気感情をサラッと受け流しつつ、携帯電話に届いたお嬢様メッセージに微笑む初華ちゃんは、祥子ちゃんとどういう関係なのよッ!
MyGO!!!! だけでも過積載なのに、その外側で渦を巻く複雑な人間関係にズブズブ深く入っていく物語は、一体どこへたどり着くのか。
群像を捌く手際はかなり良くて、象徴と仕草を活かした情報量の圧縮がうまく効いてんだな~って感じですね。
台詞の外側でキャラの心境や関係を描くのが上手いので、それを生かして色々描けてる感じ。
この豊かな筆先で切り裂かれる、それぞれの愛しき病巣から、流れ出す音はどんな調べか。
私たちだけの本当にたどり着くには、あまりに見えていないものが多すぎる迷子たちの物語は、まだまだ始まったばかりです。
さーどう展開していくのか、次回も大変楽しみです。
地獄を魅せろッ!!