イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

BanG Dream! It's MyGO!!!!!:第6話『なんで今更』感想

 MyGo!!!!! 初ライブに向け、遂に動き出したバンド。
 顔合わせる度ギスギスビシビシ、そもそも遅刻に脱走予定が合わない!
 問題山積迷子旅、それでも練習重ねてぶつかってくんだよォ~!! という、MyGOアニメ第6話である。
 前回コンプレックスまみれのハラワタ掻っ捌いて、愛音と燈が繋がったことで生まれたバイブスが、立希を震わせ苛立たせ、逃げて追いかけてまた繋がっていく話だった。
 生来の自由人・要楽奈は猫のように身勝手なままだし、長崎そよは携帯電話の中の”みんな”に呪われたまんまだし、心ひとつにレッツライブ! とはとても言えない状況だけども、このガタピシ全力疾走こそがMyGo!!!!!の走り方なのだろう。
 外面取り繕って充実を窃盗する道から外れて、シコシコ練習重ねる方向に進みだした愛音が、持ち前の活力とバランスの良さを発揮しだして、それが相性最悪な立希に届き出したのがとても良かった。
 燈もずっと差し出したくて差し出せなかった絆創膏を、仲間たちの傷にそっと被せる事が出来るようになってきて、この三人はハーモニーが生まれる予感が濃くなっている。
 やっぱ何に悩んで何につまずいているか、たっぷり臓物ゲロってくんないと動き出さない話なので、祥子へのコンプレックスとかから回るやる気とか、内面が見えてくると摩擦多いなりに噛み合ってくる。
 逆に気まぐれ猫ちゃんな楽奈とか、笑顔の停滞者そよとかはまだまだ全部を見せるフェイズではなく、ここに踏み込むとまたお話が別の次元にシフトしていくんだろうなー、と感じた。
 そうやって一人ずつ一歩ずつ、作りモンの優しさや楽しさよりも生身でぶつかるノイズとハーモニーを大事に、パワー全開で青春走っていく姿勢が、MyGo!!!!!はとても独特で良い。
 喉越し良いだけの綺麗な炭酸水より、飲み下せないほどに濃い泥水を、ビタビタ提供してくるスタイル……俺キライじゃないぜ。

 

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第6話より引用

 つーわけで厳しい指摘から逃げて追いつかれ語り合って、シコシコギターに向き合うことにした我らの軽薄ピンク髪。
 俺は陰気な顔でシコシコ創作や表現に向き合ってる連中を見るのが大好きなので、愛音が自分の抱えた荷物全部燈に預けて、軽くなった背中にやる気積んで走り出したこと……それが仲間たちのやる気を燃やしている様子が、凄く嬉しい。
 浮かれポンチがすぎるとはいえ、中学校時代皆の憧れになりえた活力と輝きは嘘だったわけじゃなくて、最初狙っていた方向とは違うけども、バンドをやることでそれを再生させていく試みは、前向きで力強い。
 CRYCHICじゃなくても、祥子が隣にイなくても楽曲を通じて何かを表現したい燈も、一緒に走ってくれる愛音がいてくれることで、やる気のスイッチが入った。
 そして愛するロックスターが再起したことで立希の気持ちにも火が入り、得意とはいえない作曲を買って出て、新たな”私たち”へと踏み出す意欲を見せている。
 まぁ後に大暴れする溜め込み気質を反射して、自室の窓はカーテン閉じたまんまの閉鎖空間なんだけどさ……。
 狂犬なのに根は陰気に思い詰めるタイプって……立希ちゃん、かわいいね。

 ここの三人はいいのよ……でも楽奈ちゃんとそよがさぁ~~~~~!
 そもそも練習に来るか定かではない人類ネコ科はさておき、そよは今目の前で形成されている”私たち”じゃなくて、あくまでCRYCHICの再生を夢見ている。
 しかも立希が祥子個人の顔を(見すぎて身動き取れなくなるほど)強く見ているのに対し、そよが他人と向き合う時は生身の心ではなく、”CRYCHICの”という看板が、必ず張り付いているように見える。
 祥子が学生鞄を前に立てて自分を守りつつ、そよの接触を過剰警戒するのも。
 その証拠の名前が出たときだけ、きゅうりに水をやる睦の手が止まるのも。
 そよが人間不在のCRYCHICという場、そこでバランサーという役割を得て満たされる自分しか見ていない、利他を装ったエゴイストの体臭を嗅ぎつけているからっていう感じがある。
 『待っててくれたんだ~ありがと~』と無邪気に告げる愛音は、バンド入るキッカケを作ってくれた親切なそよが、自分の到来をどういう顔で見ていたかに気づかない。
 この軽さが燈たちの鎖を解いて、未来と自分をいい方向に転がしている現状、CRYCHIC再生のために他人を便利に使えてしまうそよの薄暗さ……それを博愛のホワイトライトでかき消してる虚偽は、あきらかに良くない匂いを発している。
 愛音が本当に欲しかったものを燈にさらして運命を先に進めたのと、ずーっと何かを隠し過去に縛られて後ろ向きなそよの在り方は明確に対比され、感情のマグマを溜め込み続けている。
 これがいつ炸裂するのか……俺は震えながら、その瞬間を待ち望んでいる。

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第6話より引用

 そこらへんの埋伏地雷の処理は先の話として、今回は常時キレてるスーパー狂犬人の内面掘り下げだ!
 楽奈ちゃんの実力に打ちのめされて作曲やり直したり、頑張ってもあの時瞳を焼いた万能お嬢様に追いつけなくて凹んだり、想定以上期待通りの音楽真っ直ぐヒューマンっぷりが解ってきて、大変良い。
 僕は第3話で明かされた豊川祥子の人格質量のデカさ、燈を引き寄せ夢中にさせたその引力の強さに感じ入っているので、立希ちゃんが結構な祥子キチなのはとても嬉しい。
 『なんか良くわかんねーやつだな……』と、ジメジメギスギスした表面に反発を感じつつ見て行って、相手の深いところに入っていけるタイミングでそうならざるを得なかった理由、ネジ曲がりつつ真っ直ぐなその人なりの在り方が見えてくると、分かりにくかったものが分かってきて、不思議な親近感を覚える。
 MyGO!!!!!のキャラ描写はこういう理解の構造になってると思うので、終始イラツイていた立希ちゃんが何を求めて焦っていたのか、今もメチャクチャ焦ってる様子を掘り下げつつ教えてくれるのは、凄くありがたい。

 そよが音楽自体、目の前の人間一人にがっぷり組み合わない人間として描かれている中、ムカつく野良猫の実力を無視できず楽曲書き換えたり、自分の辛さを代弁してくれる燈が特別な誰かになったり、立希ちゃんはすごく真っ直ぐ人間に向き合っている。
 ここで(例えば愛音のように)上手に体を躱したり、テキトーに調子よく立ち回ったり出来ない、燈とはまた別の生真面目な不器用があるからこそ、音楽でそれを伝わる形に変えていく行為から、逃げることが出来ない。
 立希が音楽に真剣であってくれることは、これが音楽のアニメである以上自分的にはとても大事なことで、どんどん抜け出せない自意識の沼にハマっていくほどに、今自分と自分たちがが作るべき歌に本気なのは、とても良かった。
 まぁ音楽で気持ちよくなることしか考えてねぇ野良猫が、あまりに自由すぎる弊害が同時に書かれてることで、それ一本でもダメだって解ってくんだけどさ……。
 楽奈ちゃん凄いよなぁ……MyGO!!!!以外では存在を許されないタイプのバンドクズだぜ。

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第6話より引用

 密室でストレス溜め込んだら当然こうなる、待ったましたのコンプレックスで走り出した立希への対応は、バンドメンバーそれぞれの現在地を上手く照らす。
 そもそも現場に来ない野良猫は論外として、帰り道一緒なのに何もいえないまま路面電車とホームに挟まれて息苦しい燈と、携帯電話に刻まれた過去を睨みつけて動かないそよ……お前らダメダメだ!!
 いやまぁ、そういうダメダメな現状をちゃんと描いているからこそそこから一歩一歩、ちったぁマシな場所へと進み出していく歩みに手応えも宿るわけだが、一足早く自分をさらけ出して身軽になった愛音が、かなりバランス良く他人を見ながら動いているのは、とても良い。
 形だけの充実を求めて空回り、誰かの大事なものを無自覚に踏もうとしてた危うさを青春ぶつかり稽古で上手く躱して、天性の視野の広さやアクティブな活力、一時の感情を強く炸裂させつつもちゃんと反省できる落ち着きなんかが、いい感じに躍動し始めている。

 愛音個人の望ましい変化にとどまらず、隠していたかった傷を仲間にさらけ出し、手を差し伸べてもらうことで迷いながら進める実例として、迷子だらけのバンドにそこまで悪い未来が待っていないのだと、こっから先のお話に補助線引いてもらえる感じが嬉しいね。
 愛音が今走ってる足跡を追いかけるように、問題だらけのゴミクズバンドもガチャガチャぶつかりつつ、今を共有する仲間として独自の連帯を作るんだと、愛音が頼もしくなってきてる描写は告げている。
 一生シコシコカーテンおろした部屋で作曲してた立希が、どんどんイライラをつのらせ周りを振り回す描写があったことで、溜め込まず率直に思いを告げる愛音のやり方が、適切に湿気とヤバさを抜く良さも伝わるしね。

 

 んで、そういう変化と真逆の方向に停滞しているのが長崎そよでさぁ……。
 『みんなじゃないと、やっぱダメなんだね……』と言った時の”みんな”は、そよの中では過去のCRYCHICがそのまんま戻ってくる事を意味してて、後にここでの一言を思い出して立希を追いかける愛音にとっては、今目の前にいる四人(+野良猫)になる。
 このズレを気づかせないことが、自分の願いのためにピンク髪の闖入者を利用出来ている状況の、根本にあるわけだ。
 愛音が自分に都合の良い勘違いをして便利に動いてくれている状況を訂正しないし、立希が思い詰めてる様子を屋上で見ているはずなのに進み出さないし、たきは目の前に立ってる人間そのものよりも、あまりにも強く自分を呪う思い出の方に、重きを置いている。
 砕かれてしまった奇跡の残骸が、それでもなお自分を支える特別であり続けているさまは、例えば第3話の燈を見ていても良く解る。
 燈がCRYCHICの崩壊を認めた上で愛音にすがり支え、新しい一歩を踏み出しかけているのに対し、そよは蘇らない”みんな”を求めて目の前の現実からどっか遠い場所に自分を置いて、冷たい俯瞰で状況をコントロール……しようとしている。
 このそよのクレバーな態度があんま上手く行かず、盤上にいる他のアクターはそれぞれの熱と痛みに突き動かされて勝手に走り回っている事が、冷めた態度で音楽や仲間から一歩引いた場所にいる態度の無意味を、語ってもいるだろう。

 全員何かが欠けていて、何も分からないまま走り回って傷を受けて、それでも諦められない何かのために、楽器を握ってバンドをやる。
 そういう血の熱い連中ばっかり集まってる話で、自分自身のどす黒い願いを隠したまま賢く立ち回ろうってのは、ちと都合の良い話だ。
 CRYCHIC時代はこの俯瞰的な賢さがメンバーを繋ぎ、バンドを導く強みだったんだろうし、そうやって確立された『みんなの中の私』を捨てられないから、状況も関係も目の前にいる人も変わってなお、砕かれた夢をそのまま再生しようとしてるのだろう。
 長崎そよはとてもズルい人ではあるけど、その停滞と冷たさに彼女なりの切実さが確かにあって、こうなるしかない必然としてズルくなってると書けているのは、凄く良いと思う。
 同時にそれが何処から来ているのか、魅力的な謎としてちら見せしつつ隠せているのが、今後も見続ける誘引にしっかりなっていて、上手い話運びだと思う。

 

 

 

 

画像は”BanG Dream! It's MyGO!!!!!”第6話より引用

 つーわけで冷血ぶった激ヤバ感情女は屋上に置き去りにして、ピンクの青春弾頭は不器用人間引き連れてバンドメンバーを迎えにいくぞ!
 先週『お前のそれは逃げだよね?』とツメられた愛音が、今度はコンプレックスから逃げた立希を物理的に追いかけていくリフレイン、愛音の変化がめちゃくちゃわかりやすい……と同時に、彼女たちらしいチャーミングな決着の付け方でとても良かった。
 ハチャメチャな情緒を抱え込んだ歩く爆弾みたいな女たちが、お行儀悪くガキっぽいことしながらちょっとずつ距離を詰めていく描写があると……嬉しい!
 高校生になって自意識とか社会との軋轢とか、色んなモノに縛られ迷子になった子どもたちが、思いっきり音楽やってガキに戻っていく話でもあると思うので、頑是ないのは大事よね。

 ここで立希を追うのが燈ではなく愛音なのは、燈だけを特別な救世主として見ていた立希の世界をぶっ壊して、今目の前に仲間としている愛音を認めさせるための大事な一手だし、燈自身それで救われた愛音の向こう見ずな活力が、立希に対して何を成せるか描く上でも、とても重要だ。
 燈に延々立希を追いかけるタフネスはないし、そういう資質が必要なことは愛音がやってくれると信じて、燈は二人が返ってくるのを絆創膏構えて待つ。
 愛音がそういう、信頼に足りる人間になれた(戻れた)のは、逃げ出した自分を燈が追いかけ、不器用な共感をアンケート用紙の裏につづって手を握ってくれたからで、愛音が逃げる立希を追いかけるのは、友達がしてくれたことへの恩返しでもある。
 燈があの時愛音を追いかけられたのは、かつて祥子が自分を抱きしめてくれたからで、何かが終わり果てたように見えてなお生きてる人間たちは、そうやって残骸の中から思い出を拾い上げて、前に進んでいくのだ。
 ポジティブな連鎖の結果、ずっと使い所を探していたかわいい絆創膏を仲間の傷に貼れたの、マジ良かったと思う。
 ……となると、祥子は何で落ちかけた燈に最初に迷わず手を差し伸べられたのかって話になるけど、なんか印象的なイベントがあってもいいし、あの人が超絶人格者だからという、身も蓋もない結論でも良い。
 俺はどんだけ精神的超人でも、豊川祥子なら良い派だから……。

 あとね~~~~楽奈ちゃんLong Cat連れて急に出てきて、可愛いからってなんでも許されると思うなよ!
 許す!!!!!!!!(0.5秒で即答)
 やってることは他人ナメきったクサレ中坊でしかないんだが、いちいち仕草と立ち回りが最高に可愛いので、このハチャメチャも許せてしまうのはズルい。
 今回立希が心の深い所切開されて、青春追いかけっこで弱さを抱きとめられてしまったので、ライブを挟んで残り二人に踏み込んでいくフェイズに入るかな~って感じだけども。
 楽奈ちゃんはそよとはまた別の意味で他人見てないので、セッションを通じて『ナメてんじゃねぇぞド中坊……アタシは今、お前の隣りにいるんだよ!』とぶっ刺すことで、その存在意義を強制的に意識させれると良いかなー。
 あの子音楽以外の言語で、他人の存在を認められない子でしょう……でもロックンロールなら、そういうバカにも届くんだ!
 ……屋上で一生過去だけ見てるバカに、届くかどうかは分かんないね。

 

 

 というわけで、椎名立希の迷子っぷりを余すことなく描く回でした。
 ツンツンイライラした態度の奥に何を抱えていたのか、愛音達と僕らにしっかり見せてくれて、立希ちゃんがもっと好きになれる回だったのはとても良い。
 思う存分迷って逃げて、必死に追いかけその手を掴んで、ぶっ壊れた思い出を引きちぎる速度で走り抜けていく。
 そういうMyGO!!!!の速度が見えたことで、そよが延々囚われている停滞の重たさ、救われなさと救われなきゃいけなさも、より際立ってきたと思います。
 楽奈ちゃんは他メンが囚われいる重たさとは無縁の、あまりに自由な野良猫なので、どう首輪つけるかが課題かな……。

 祥子-睦ラインでMyGO!!!!結成ライブが運命の結節点になると伝わってもいるので、次回のステージには青春静脈瘤全員が集まることになるでしょう。
 ド素人と過去に呪われた不器用人間三人と野良猫、どう考えてもマトモな舞台にはなないだろうけど、そこにお前らの”今”を叩きつけることで生まれる何かが、必ずあるはず。
 話数的にも重要な折返し点になるだろう次回、とても楽しみです!