イマワノキワ

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忘却バッテリー:第1話『思い出させてやるよ』感想ツイートまとめ

 忘却バッテリー 第1話を見る。

 原作は”SPY×FAMILY”と並ぶジャンプ+生え抜き、脱力系ギャグと熱いスポ根ど真ん中が程よく入り混じった、とっても良い漫画である。
 笑いの波長が合わないとなかなか食べにくい作品でもあるのだが、原作の魅力をしっかりアニメにチューニングする翻訳能力が冴え、大変良い感じの第1話だった。

 ボケ担当のマモちゃん、ツッコミモノローグ担当の梶くんの芝居が大変良い感じで、声優力を最大限活かす形で、アニメとしてのストライクゾーンにしっかり収めてきた印象。
 『声がある』はアニメの大きな強さなので、こういう戦い方はアリアリだと思う。

 

 スジとしてはかつて数多の球児の心をへし折ってきた怪物バッテリー、その捕手である要圭は記憶喪失によりかつての智将っぷりに疒が乗っかる痴将に落ちていた。
 高校では断固野球NG! …と思っていたが、運命は強い引力でもって少年たちをダイヤモンドに惹きつけ、新たな戦いが始まる…といった感じ。
 クセが強く、その癖奥底をなかなか見せない圭ではなく、素直で分かりやすい山田くんが語り部になって天才たちの領分を、噛み砕きつつ伝える構成が秀逸。
 主役と語り部を分けることで、他人の人生歪ませるほどの才能が持つべきミステリアスを担保したまま、話がグイグイ進む。
 山田くんが生み出す、素直な好感もグッド。

 

 

 

画像は”忘却バッテリー”第1話より引用

 圭が特別でいられるのは、彼にしか投げない葉流火が本物の怪物だからだ。
 この怪物感は冒頭、爆心地のような入道雲が真夏の強い光、それが照らす濃い闇の中立ち上るカットで、素晴らしく表現されていた。
 この絵が出てきただけで、かなり”勝った”感じがあった。
 プレイング一つでお山の大将のアタマを砕き、数多の屍を積み上げていく残酷な刃を、最強ピッチャーは否応なく持つ。
 その凶暴さを意識させないよう、かつての圭は葉流火を自分専用のピッチングマシーンへと変えていった。
 その関係の歪さも、この不気味な爆煙にはしっかり宿っている。

 山田くんを壁役に、スーパーコンビ颯爽登場! という感じで気軽にまとめたスタートだが、学生野球界が孕む残酷さに真っ向から向き合うこのお話、ホラーテイストがしっかりしているのは大事だ。
 なのでマジにやっていい場面でしっかり、影の濃い怖さを刻んできてくれたのは、今後の描写に期待が持てるいいスタートだった。

 内気な少年がロボットとなり、明るいバカが冷たい怪物になってしまう、才能と自我をすり潰し合う現場の血みどろ。
 『パイ毛~~』と戯けるスベり加減が、ありがたく感じるようなそのヒリツキを、早いことアニメでも原液摂取したい気持ちだ。
 ここら辺、山田くんの人徳で飲みやすく薄まってる一話だったな…

 

 葉流火の投球は、敵に回れば心とキャリアを壊す凶刃となるが、味方になれば一緒にプレイしながらも憧れてしまう、本物の才能だ。
 ヘロヘロボールを侮られた時、山田くんが見せた悔しさはその眩しさを誰より早く見抜いて、一緒にプレイする仲間として近づいていく優しさがあって、とても良かった。

 圭への過剰な依存、人間が持つべき柔らかな感覚の欠如。
 葉流火の危うさもフラフラ揺らめきつつ、ただ残酷なだけではない暖かな熱が既に感じ取れて、野球”部”アニメとしても良い出だしになっていた。
 いかにも引き立て役なクソ先のデビューが、彼らの先を知っていると微笑ましく愛しくもあり、アニメがどう描くか楽しみだ。

 何もかも白紙になっても、葉流火と野球をすることは圭にとってはとても大きいことで、圭がミットを握ってくれることで、葉流火も才能を活かすことが出来る。
 麗しい比翼の鳥が青春を飛ぶ様子が、ヘロヘロとズバットを見事にかき分ける良い作画で元気だったが、そこにはとてもグロテスクなものが複数埋まっている。

 自分の中から湧き出、あるいは勝手に世界を彷徨う怪物に負けず、なぜ一度諦めたはずの夢にしがみつくのか。
 そこら辺の熱量を泥臭く燃やすのも、このお話の良いところだと思うので、葉流火にぶっ潰されて性格歪んだ元エースたちが出てくる次回以降、なかなか楽しみだ。
 『残酷と純粋』てのが、結構大事なテーマなんだな。

 

 おバカな軟体生物に見えて、ダチが嘲笑われてたら本気になっちゃったり。
 クールな怪物に見えて相当アホで、相当野球が好きだったり。
 お人好しな凡人に見えて、譲れない熱さを胸に秘めていたり。

 色んなギャップを魅力的に燃やし、ガンガン物語を加速させていく力が強いこの作品。
 声優陣の芝居、競技作画の仕上がりが大変良い感じで、アニメでもメリハリ効かせて楽しませてくれそうなのは良い。
 まだまだチーム作りが続き、本格的な試合は先になりそうだが、バコバコやり合った時どんだけ暴れるか、ワクワクする期待感を既に高めてくれているのはいい。
 ボケる時もマジな時も、どっちも全力振り切るのが良いよなやっぱ。

 

 というわけで、原作の魅力をしっかりアニメに落とし込み、アニメだからこその強みを存分に発揮してくれた、大変良い感じの第1話でした。
 作品全体のガイドラインを引く役の、山田くんのモノローグが大変塩梅良く、コミカルに弾みつつも情感がある作風を、良く伝えてくれた。
 梶裕貴…やっぱ好きだ…。

 こっから痴将爆誕の裏側とか、中学時代の秘められた残酷とか、色んなミステリが暴かれながら新たな青春物語がグラグラ煮立っていくわけですが、まー面白くやりきってくれるでしょう!
 そういう信頼感をしっかり打ち立ててくれるスタートで、大変良かったです。
 次回も楽しみッ!!