であいもん を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
夏行き過ぎて、秋風が微かな寂しさを連れてくる彼岸の頃。
地域運動会を一家総出で楽しんだ”緑風”の前に、一人の女が現れる。
一果の母であった。
仮初の親子もこれで終わりと、姫の旅立つ十五夜月を見上げる和。
縁を繋ぐのは離れて薄れぬ血か、はたまた身近な情か。
そんな感じの、おはぎの季節の物語である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
前半の運動会で一果と和の関係を確かめて、後半の母来るで一つの決断。
先週までのうだるような熱さが引いて、落ち着きと寂しさが空気に満ちる秋に相応しい、しっとりとした仕上がりになった。
もう一波乱あるかと思ったが、この落ち着きが作品に似合い…か
一果の大人びた賢さは、誰にも甘えない寂しさと繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
たった一人甘えたい相手に置き去りにされた傷が癒えぬまま、口で家族家族と言ってくれる相手をどうしても身近に寄せれぬまま、過ぎた日々。
その頑なさが、春夏とワイワイ共に歩んだ結果どんだけ解けてるかを、体育祭はよく描く。
親子の縁を確かめる一大行事を、遠くに見つめてきた一果。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
周囲の子供らが当たり前のこととして甘受している”家庭”は、一度壊れて冷たく死んだ。
新しく手に入れたものは優しくてありがたくて、しかし何処か馴染みがなくて、手で触れても全霊で抱きしめるには遠い。
そういうぎこちなさを遠くに見つめたまま、角が立たない程度に上手く”いい子”出来てしまうところが一果の難しさであり、哀しさであったわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
全力で騒ぎ応援する和のみっともなさが、上手くそのひび割れに染み込んでいたと今回、分かってくる。
後に真理と話すときにも見えるが、和はフワフワニタニタした態度の奥で一果の現状をよく見据えていて、その上で道化を頑張ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
心の底から笑えれば、父に置き去りにされひび割れた心も、今周囲を取り巻いているものを真実、抱きしめることが出来るだろう。
そういう心積もりで、賢い子供の賢さに気づかないふりでバカやれるのは、優しく強い人である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
ここら辺の気配りを押し付けがましくなく、バカのフリを貫いて一果にちゃんとバカにされきったのが、和の偉い所だなぁ、と思う。
子供に偉いって思われるつもりが、サラサラないんだな…。
そんなアホ作戦は良く聞いてて、一果は運動会に抱いていたコンプレックスをひょいと乗り越えて、和と親子リレーに漕ぎ出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
あそこで差し出されたおはぎは、和がこれまで貫いてきた誇り高い道化仕草への最高の報酬であり、何より頑張れる魂の糧なのだろう。
そういうものを差し出し受け取り、気づけば自然と”家族”出来るようになった他人のもとに、一度離れた血縁が訪れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
仕事にかまけ娘を遠ざけ、『バイバイ』と突きつけられた離縁状。
一果が父に捨てられた後、母恋しの情を見せなかった理由も見えてくる。
いやー…キツいな、親にも子にもッ!
自分の手を引いてくれない父と、隣にはいない母。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
たった一人で賢くなるしかなかった一果は、誰にも甘えられない子供になった。
和はそんな一果が体重を預ける奇跡を”血”に見出すが、それは一度壊れて遠く離れてなお、全てを癒してくれる魔法の雫ではない。
少なくとも、このお話では。
真理も心の奥底でどこか、何もかもを飛び越えて寂しさがうまる魔法を”血”にもとめていたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
しかし『バイバイ』よりも更に賢くなってしまった一果が差し出したのは、今自分がいるべき場所、受け取るべき暖かさは”血”由来のものではないという、ある意味残酷なものだった。
しかしあの体育祭でおはぎを食って、バカみたいに一緒に走ってくれたのが真理ではない以上、それは現状を素直に見つめた結論なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
自分を置き去りにした母を一果は恨まず、憎まず、暖かなものを差し出してくれる一人として、優しく受け入れる。
賢く正しい態度だ。
その柔らかな微笑みの奥にある激情を、家族だからと特別に叩きつけてくれたほうが、真理にとっては良かったのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
しかし一果はそんな子供ではないし、そうさせてしまった一因は、間違いなく真理にある。
生母はもはや、一果の唯一絶対の”誰か”ではないのだ。
そうなってしまった過去には悲しみがあり、それに囚われず、母を弾き出すこともなく、時にぎこちなく時に暖かく縁と情で繋がれている今には、温もりと微かな寂しさがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
否応なく、人生はそんな風に流れていってしまう。
それでも、お菓子でも食べながら笑って生きられたら…。
かけっこの勝敗に夢中なクラスメートが考えもしないこと、考えなくても良いよう周囲が気を配って守っている嵐に、一果は巻き込まれ生き残った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
生きられるよう手を差し伸べてくれた人がいて、その温もりを遠ざけることナウ受け取れるようになって、今回の結末がある。
その『なるようになってしまった』感じが、秋という季節に上手く重なって、しみじみと良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
母の胸に飛び込まない…飛び込めない一果の成熟を僕は憐れまないし、憐れんではいけないのだろう。
寂しく大人びて、その賢さを超えたものをちゃんと見据えて、一果は明日も生きていく。
その小さな背伸びと確かな歩みを、これからも書いていくアニメである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
そこに寄り添う資格が和に十分以上あるのだと、墨痕鮮やかにしっかり描いたのも、今回とても良かったと思います。
なかなか表情の見えない主役だと思ってきたが、なるほど、キミはそういう顔か…。
真理は唯一絶対の”母”として選ばれなかった傷を抱えつつ、一度目の『バイバイ』より大人びて優しい答えにすがるように、縁を繋いでまた歩いて行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
『バイバイ』を言わせてしまったのも自分であるし、選ばれなかったのも、まだつながっているのも自分であると、受け入れられる人で良かった。
こうして”母”との縁は一つ良い所に落ち着いたわけだが、不在なる”父”の情けなさ、やるせなさは更に際立っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
いやー…あんだけ賢い子が、それでも割り切れない情を抱えて視界の隅、父の残影を探している姿は辛いよ…。
和、そこのフォロー宜しく頼むぞッ!
『なんでお父さんは、私を捨てたのか』は、一果というキャラクター、彼女を主役とする物語のセントラルクエスチョンだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
ここに回答を出してアニメが収まるのか、父はあくまで不在なる中心でありつづけるのか。
気になる所ですが、今は”母”を許せた一果、許された真理に祝福を。おはぎ食うか?
運動会と月夜の決断を経て、和と一果は人生の階段を一つ、同じデカパンに足入れて進んだ感じがします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
移りゆく季節に合わせて出される菓子も変わりが、遷ろわぬ人の情と、変わっていける強さを抱えて、物語は続く。
さて次の季節には、どんな人生の滋養が差し出されるのか。
次回も楽しみです。