イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

遊糸彼方に揺らめく -2025年4月期アニメ 総評&ベストエピソード-

 

 

 

・はじめに

 この記事は、2025年4~7月期に僕が見たアニメ、見終えたアニメを総論し、ベストエピソードを選出していく記事です。
 各話で感想を書いていくと、どうしてもトータルどうだったかを書き記す場所がないし、あえて『最高の一話』を選ぶことで、作品に僕が感じた共鳴とかを浮き彫りにできるかな、と思い、やってみることにしました。
 作品が最終話を迎えるたびに、ここに感想が増えていきますので、よろしくご確認を。

 

 

 

 

 

GUILTY GEAR STRIVE: DUAL RULERS

 ベストエピソード:第4話『ギアの王-King of GEARS-』

lastbreath.hatenablog.com

 

 いや選ばないよお父様は……アレに面白さ感じられるのは、相当歪んだジャンキーだけなんだから……。
 アニメという、ある種の”外伝”でラスボス貼るからこそそこまで重たくメインキャラに食い込むことなく、その主義主張を対話で解体するのに手間もかけず、分かり易すぎるほどに分かり易いキモ造形とキモ言動でネッチョリまとめ上げた、切り捨てて後ろめたさのない敵役。
 そのインスタントな味は、TRPGって遊びやってる自分としてはある種の理想で関心もするが、深夜アニメというメディアで最後の壁を担当するにはあんまりにも薄っぺらく、そのくせぶっ倒すための戦いのスケールは際限なく拡大して、まぁまぁ空回りするラストバトルだなぁ、とは思った。
 無印ビーストバインドのミレニアムリプレイ後半で、凄まじいスピードで世界の危機に話の風呂敷が広がった時と同じ感覚で、自分としては不思議に懐かしくすらあった。

 

 歴史ある(ありすぎる、とすら言える)シリーズを、限られた話数でどうアニメにするか。
 色々悪戦苦闘の後も見受けられ、正直目論見が上手く言ってない部分も散見されたが、全体的にシンをしっかり新主人公に立てて、彼が追うべき課題をあぶり出す展開だった。
 ユニカという個人にどういう執着と愛情を抱き、血みどろになってでも助ける唯一性をどこに見出しているのか、優しすぎ正しすぎる男だからこそ不鮮明になった部分はあったが……終わってみると、そここそがシンの魅力なんだとは思う。
 ここら辺可視化してくれたのが、マジ欠片も心寄せなくて良いお父様すら助けようとする姿勢からだったの、あまりにも不思議な味わいだ……。

 主役が拾いきれなかった(と僕は感じた)ヒロインを、話の主柱としてしっかり立てたのは間違いなくこのエピソードとブリジットであり、ぶっちゃけこの話数なかったら相当危うかったと思う。
 「やっぱ足を止めて穏やかな日常の中、叙情性豊かにお互いの顔をしっかり見て語り合う場面てのは、とても大事なんだなぁ……」と、改めて思う回だった。
 男の娘ブームの火付け役から、記号を超えて自分だけのセクシャリティアイデンティティを強く吠えるところまでたどり着いた彼女の歩いた道が、迷える人形の未来を指し示す展開は、ゲームを超えたところでGUILTY GEARが辿ってきた物語を、改めて浮かび上がらせてたとも思う。
 ブリジットが他の法力使いに比べ、あんま強くないキャラだったのも、運命に翻弄される弱者であることに耐えかねて狂ったラスボスと良い対比になってて、そこも好きだ。

 

 

 

 

・小市民シリーズ(第2クール)

 ベストエピソード:第17話『ふたたびの秋』

lastbreath.hatenablog.com

 

 次回傲慢のツケをノーブレーキで弾き飛ばし、最終話にしっかり二種類の報いを描き切ること前提での、秋のフィナーレをベストに選ぶ。
 アニメは瓜野くんの内面吐露を大胆に切り捨てた結果、彼がありふれた青春の犠牲者ともいえる描かれ方をしていて、だから第16話で狼が見せた残酷なトドメ、その上で更に踊る狐のエグさが、より際立つ。
 そういうヤバさにツッコミ受けないまま、素敵な世界に一年ぶり思う存分浸って、必要だ次善だ言葉をシニカルに飾って、お互いかけがえない相手なのだと受け入れ直すハッピーエンドであったのなら、ベストには選べなかった。

 憎悪を宿した鋼鉄の塊に骨バキバキにされて、謎解きも知恵働きもない病室に縛り付けられ、自分がしでかした最悪を思い知らされる”報い”がなければ。
 そういう当事者性の強いピンチに対峙すればこそ、狐も狼もちったぁ自分を変えれたのだと描かれ、その成長に”報い”られる豊かな結末がなければ。
 あの衝撃の第1クール終幕から、ようやっと一年越しの再開を果たし、互恵関係というおためごかしを飛び越えて特別な関係にたどり着いた、少年と少女を心から祝福は出来なかっただろう。
 でも冬はしっかり五話確保して、彼らの青春の総決算をちゃんとやりきってくれたので、文句なしにベストに選べる。

 

 自分たちがお互いでしか満たされない、歪な獣であることを思い知るために、他人の時間と尊厳をガッツリ一年踏みつけにして駆け抜けていく、小鳩くんと小佐内さんのどうしようもなさ。
 世間一般の(あるいは僕の中にある)判断基準に照らせば、全く正しくなどない激ヤバ大間違いのフィナーレは、しかしあまりに美しく眩しかった。
 やっぱ再開を果たした二人が、この狭苦しい街に収まるには冴えすぎる知性とシニカルを擦り合わせて加速し、とびきり美しいイマジネーションへ飛び込んでいく瞬間の爽快感は、本当に素晴らしかった。

 色々洒落になってないヤバさも、どう考えても100点じゃない間違いもたっぷり抱えたまま、それでも彼らがお互いに恋して、特別で大事な存在だと思えたことには意味があるのだと、薄暗い公園の現実が重苦しいからこそ強く伝えてくる、秋のフィナーレ。
 その鮮やかさがあればこそ、二重の報いを問われる冬の抑圧的な筆致の奥に、たどり着くべき答えが遠い星のように瞬いていて、僕は見ていて迷わなかった。
 このキレイな場所を嘘にしないために、三年前の大間違いを取り戻す知恵なり優しさなり絆なりを、小市民を夢見た獣たちは形にしてくれるのだろうと思えたし、アニメもまた厳しい事情と取っ組み合いつつ、見事に描ききってくれると信じた。
 そして、それは叶えられた。
 ありがたい限りだ。

 

 最終話、小佐内さんが終わりゆく物語に解けない謎を手渡し、馥郁たる余韻が未来に伸びていく終幕は、どうやっても普通に離れない自分たちを、隣り合ったり離れたり、傷つけたり優しくしたりしながら、認めて未来へと進み出す決着だ。
 その原動力はやっぱり、このエピソードでたどり着いたとびきり意地が悪く頭が良い、この話らしく小佐内さんと小鳩くんらしい、彼らなりの恋にこそある。
 形だけ追いかけて自分も他人も傷つけて、そういう最悪な経験をしたからこそ、必要と次善を自分の意志で選んで、互いの光も闇も君なのだと認め合う距離感を、獣たちは抱きしめることにした。

 そういうロマンティックなジュブナイルは、なんかキラキラで爽やかな第一印象を悪辣でボコボコに殴り、胸焼けするほどの生臭さで少年たちの本性を削り出していった物語が、一周回って原点にたどり着いた感じがあった。
 それは視聴者を心地よく騙すためのフェイクでも、それにしがみつけば自分を捨てて普通になれるという思い込みでもなく、間違いなく二人が心から本当だと思った愛しさだ。
 そうじゃなきゃ、理不尽で息苦しい現実を飛び越えて、あんな美しい場所へと飛び立てないだろう。

 

 そんな飛躍する恋心の加速度が、このアニメがなぜ特徴的な演出を選び取り、ミステリの肝である推理と会話に焼き付けてきたかを、教えてくれた感じもあった。
 僕が特別惹かれた素敵な演出が、何を描ききるべくして作中に刻み込まれたのか、教えてくれる回だからってのも、このお話をベストに選ぶ理由だ。
 やっぱ毎回、ファンタジックで美しい景色に飛び立てる特別さを、軽やかに美麗に届けてくれた映像体験は、とても楽しかった。

 いろんな良さがあるアニメだったけど、二人だからこそ生まれる特別な幻想、加速するシニカルな思考を見事な想像力で可視化し、言葉ではなく肌で理解る温度感にまとめ上げてくれたのは、映像作品だからこその魅力で大変良かった。
 声優陣の好演、BGMや主題歌の冴えも含め、アニメーションだからこその面白さをしっかり追求し、何を描くべきか選び取り形にしてくれた奮戦は、本当に素晴らしい。
 大変面白いアニメを見れて、凄く良かったです。

 

 

 

 

 

・前橋ウィッチーズ

 ベストエピソード:第2話『服もアンタもペラッペラ』

lastbreath.hatenablog.com

 

 僕は世間一般より、”前橋ウィッチーズ”を好きになるのが早かったと思う。
 そうなったのは本格的に魔女の人生相談…を鏡に、魔女自身が自分の抱えた難しさと取っ組み合いする本筋が、ゴロッと動き出したこの第2話だ。
 印象最悪な初期アズちゃんがなぜ毒を吐き出し、なぜ他人と一緒に自分を傷つけているのか。
 未だわからないからこそ知りたいと思い、そう感じさせる作品の手腕…計算された巧さをぶん回して本質を抉り出そうとする野心を、感じ取れたからだ。

 僕は手早く「俺等こういうアニメなんでよろしく!」と挨拶してくれる作品が好きで、自分にとってこのアニメは、相当早かった。
 期待が確信に変わったのはこの第2話だけども、第1話のスピーディー過ぎる展開(それを早く終わらせた事自体が、終章四話の前フリでもあんだけど)に滲む魔法と少女への視線は、ただの怪作で終わらない巧さと強さを、既に宿していた。

 イマジネーションあふれる不思議な舞台を通じて、人間の何を照らしたいのか。
 分かりやすく言葉で説明せずとも、その仕上がりと力みで教えてくれるスタートだったからこそ、結構前のめりでこの第2話を見て、「なるほど…」と心の棚の一等地を預けた。
 「俺たちは尊厳についてのお話しをやります」と、明るく楽しく元気よく、この話数で真摯に”前橋ウィッチーズ”を教えてくれたから。
 凄いアニメが始まったぞ、と思ったのだ。

 

 この期待感は全く裏切られること無く、前橋の魔女見習いたちは蒼い激重依存をぶっ放したり、ヤングケアラーの憂鬱に暴言ぱなしぶっ倒れたり、恵まれた立場が生み出す落とし穴に片足ハマりかけたり、それぞれの難しさと全力で取っ組み合いしながら、友情を深めていった。
 最初に一番難しい子を深く掘り下げたことで、アズちゃんが抱える苦しさに簡単に答えを出すことなく、というか豊かな保留のまんま最後まで歩いていって、しかし持ち前の優しさをより素直に使えるようになっていった。
 この話数ですでに感じていたユイナのヤバさも、四人が接客カウンセリングを終えた後のスペースをどっしり使って向き合い、ブレーキぶっ壊れたエモエモ暴走車に見えて、当たり前の痛みと難しさ…そしてユイナなりの知恵を抱えていたと、ちゃんと書いてくれた。
 視聴当時期待していた、マトモさへの”変化”は成し遂げられなかったが、そんな常識への迎合よりもっと豊かで、もっと実務的なユイナらしさを守って、最後まで走ってくれた。

 そういう旅が、あの五人たちだからこその…あるいは前橋という街を舞台にすればこその、妙なノンキさと可愛げで突っ走っていって、生まれる妙な摩擦熱。
 嘘っぱちの物語の中に刻まれた、本当のメッセージが力強く胸に届いて、あの寂れて夢と優しさとろくでもなさがいっぱいの街で、あの子たちが確かに生きているのだという実感を、しっかり受け取れた。
 そういう出会いと付き合いをさせてくれるアニメを、凄く楽しんで見られたことに、心から感謝しています。
 ありがとう、前橋ウィッチーズ。
 本当に良いアニメでした。

 

 

 

 

 

 

・アポカリプスホテル

 第1話『ホテルに物語を』感想ツイートまとめ

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 『11話だろッッッ!』と言われるのはよく解るし、”アポカリプスホテル”が完成するのは間違いなくあの話数だと思うけど。
 その完成度はこの静かで動きのない第1話があって初めて成立するし、僕がこのアニメに惹きつけられたのは間違いなくこの、一見凄く健気なロボットホテルの日常スケッチの端々に、濃厚に埋め込まれた破滅の予感故だ。

 こんだけ濃く描いた”死”の気配は、後々お行儀悪く加速していく物語の中で暴力と混ざり合い、鋼鉄の思春期正面対決やら、地獄の死体隠蔽やらに炸裂していく。
 そういうメインテーマを初手から鮮明に……しかし後々しっかり刺さるように隠微に、穏やかな挨拶の中に手渡してくれる話数から物語が始まったのは、とても幸運で幸福な体験だった。

 

 ロボットは老いないし、腐らないし、変化しない。
 意思ある鉱物のように長い時間を待ち続け、しかし彼らを包囲する世界は勝手に時を刻んで、それに摩擦する中確かに、彼らは変われぬまま死んでいく。
 既に地球を去ったオーナーに刻まれた、あるべき銀河楼を追い求める行為がそのままではあまりに虚しく、危うく、ロボットたちは変化し適応する能力を、単独では持ち得ない。
 だから、このままでは滅ぶ。
 そういう作品の初期状態を、24分動きなく終わってしまった地球の午後を切り取ることに注ぎこむ勝負の中、見事に描ききっている回である。

 これを覆すには、異質な外部からの価値観の注入、異なる文化遺伝子との接触と交雑が必要になるし、銀河楼がホテルである以上客を受け入れ、客によって変わっていく運命は必然だ。
 人類滅亡という巨大な理不尽を前にしても、単独では変わり得ない石物の如き知性体は、思いがけぬお客様に真摯に接し、全力で体当りする中で己を変え、ホテルを変え、地球を変えていく。
 健気に滅びを待つホテリエロボを主役にしたからこそ、変わらなければ生き残れない世界の厳しさと、変わって生き延びていける生命の可能性を、大爆笑とダイナシの渦の中しっかりと削り出すことが出来た。

 

 そんな変化の先、この話数で示された美しく秩序的で不変の”ホテル”の外側に、確かに”アポカリプス”が広がっていることを、物語は幕引きの前に描ききる。
 たしかにそこに在った一つの現実を、ようやく受け止めきれるだけの……あるいは既に受け止め、そこで生き延びるために同種の残骸を食らうたくましさが、ヤチヨに既に在ったことを、傑作回第11話が見事に保管する。
 あの美しい廃墟、死を解体し生に繋ぐタフネスは、美しく取り繕われ破綻がないように思えるこの第1話に、既に内包されていた。

 そこにたどり着くためにはぐるっと10話回り道、ヤチヨが自分が考えているほどお行儀の良い人類の継承者ではなく、ハチャメチャな思考回路とメチャクチャなイースターエッグで己とホテルを改造していける、変化を受け入れた機械なのだと、見つける必要があった。
 色んなお客に出会い、接客マニュアルとホテルの形を変え、去っていく顧客から永住する隣人……あるいは家族以上の存在へと、タヌキ星人たちを向かいいれる必要があったのだ。

 そんな楽しく険しく美しい旅路の始まりとして、凄く豊かな可能性と余白を残したこの第1話を、どっしり丁寧に描ききってくれたこと。
 あえて急ぐことなく物語のゼロ地点を突き刺し、そこに宿る健気と危うさを解らせ、それが長い時を経て変化していく様子を刻むキャンバスを、視聴者に用意してくれたこと。
 巧みなシリーズ構成と美麗な描線が相まって、トランスヒューマニズムSFとして、ブラックユーモアの宝石として、機械少女の永いジュブナイルとして、様々なジャンルを内包して”アポカリプスホテル”は独自の到達点へ、宇宙速度で突っ走っていった。
 素晴らしいアニメでした、ありがとう。

 

 

 

 

・機動戦士Gundam GQuuuuuuX

 ベストエピソード:第4話『魔女の戦争』

lastbreath.hatenablog.com

 

 「ジークアクスを心底好きになりたかったけど、なかなかそうはいかなかった」というところから始めないと、どうにも書き出せないようなので、書き出しは率直でネガティブになる。
 一切の情報を遮断して劇場に飛び込み、先行上映版を浴びてわけの分からねぇ凄みに殴られて三ヶ月、一体どこに進み出していくのか全く読めないカオスと、だからこそこういう方向に進んでいって欲しいという期待で頭パンパンになっての、待ってましたのTV放送。
 初めて出会う”新しいジークアクス”である第4話は、叙情と残酷、闘争と日常が素晴らしいバランスで混ざり合い、ぎっちりと画面を満たした情報量と思わぬ(だからこそ心地よい)裏切りが幾重にも飛び出してくる、素晴らしい回だった。
 母性と蛮性が同居するシイコのキャラクターも良かったし、彼女が行き着いてしまった戦士の畢竟に刃を持って踏み込めてしまえるシュウジの怖さと、それに慄き立ち止まってしまうマチュの対比も、今後のドラマを鮮烈に期待させた。

 このエピソードは丸っこく可愛らしい竹デザインから想起される「ジークアクスってこういう話なんだろうな」を、3ヶ月間グツグツに煮込んだ僕の脳髄を、横から張り倒すのに十分な力強さがあった。
 ジオンが勝っても戦後には数多のやるせなさとどうしようもなさが満ち、そこから恵まれ遠ざけられているからこそ、ここではない何処かへ飛び出していきたい衝動を抱えたマチュの思いは、結局人殺しの道具でしか無いMSによって酷く危険な方向へと誘導されていく。
 殺すのか、殺さないのか。
 その選択を主人公が無化することを含め、一体ここからどんな物語が広がっていくのか、期待させるには十分過ぎる、素晴らしいエピソードだった。

 

 今終わってみると、この時期待したものはだいたい叶っていて、しかし自分には完全には染みなかったんだな、と感じる。
 マチュはニュータイプとMSが背負った業(これを「ガンダムの業」と言って良いのか、判断する知識と信心が僕にはないけども)を乗り越え、誰かに押し付けられるわけではない自分だけの未来を掴み取り、殺す・殺さないの基準軸を無化した。
 そうして描かれたものは期待していた通りのハズなのに、「これは俺の物語だ」と抱擁する気にはどうしてもなれず、大きな波に乗り切れなかった後ろめたさと、自分なり妙な愛着と納得の欠片を手のひらの上で転がしながら、不鮮明な距離感で”ジークアクス”を睨みつけている。

 描かれないものは存在しないが故に、望む結末を引き寄せ語りたいものを語れるフィクションの強さ。
 それが都合の良さだと思えてしまうのは、マチュがたどり着いた結論を彼女の必然だと理解るだけの材料が、どうしても足りていないと感じてしまうシンクロ率の低さゆえか。
 卓越した趣と、それが生み出す情緒の奥行きを確かに感じつつ、猛烈な勢いで溢れかえる過去作へのウィンクが、本筋を邪魔するノイズに思えてしまう適正のなさが、好きになりきる邪魔をしているのか。

 

 小理屈をひねるより早く、「馬が合わなかった」という答えはシンプルに出ているわけだが、その乱暴な切断は「馬を合わせたかった」という僕の気持ちを出血させすぎるので、答えのでないモジャモジャをずっと捻り続けている。
 作品が己の答えとした(と、僕は受け取った)”自由”に感じる歪さと都合の良さ、決定的に何かを取りこぼし毀損している不鮮明な手触りを、今後探っていくべきなのか、否か。
 最終回を迎えてなお、アホみてーに長い寝言を書き綴ってなお、むしろだからこそ答えは出ない。

 でもこの不格好な身悶えを、自分なり真剣に全力でやらせてくれた事自体は、結構好きだ。
 アニメを見てこんな風に、スッキリ落ち着かない気持ちになること自体が嫌いじゃないから、感想ブログなんてやってるわけだし。
 この正負両面に感情を掻き立てる作りが、アテンションを簒奪し合う現在の物語消費市場にガッチリ噛み合って、課せられたミッションをしっかり果たして一応のゴールに辿り着いている巧さも、僕にとっては好ましい。
 そしてそういう好ましさと、作品本体と抱擁するときにどうしても消えてくれないゴツゴツした手応えは、混ざり合わないまま共存している。
 しばらくはその、なんともいえない感触を自分の中に飼っててもいいかなと、傲慢にも思わせてくれるのはやっぱり、いい作品なんだと思う。
 お疲れ様でした、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

・日々は過ぎれど飯うまし

 ベストエピソード:第9話『出店してみますか!』

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 エピソードの強度としては第7話も同等以上で悩むし、その前駆たる第4話とか、完璧なアフターフォローたる第10話とかも、本当に素晴らしい。
 というか分かりやすく力強い感動を手渡してはくれない、まったり地道な日々の記録にこそ、令和最新鋭の”日常系”であるこのお話の善さはやっぱりあって、やっぱり全話がベストエピソードなんだと思う。
 出会いから約9ヶ月、色んな場所に進み出して色んな楽しさを手に入れてきた旅路は、一個欠けても成立しておらず、そういう掛け替えなさを一つ一つの場面にちゃんと宿して、小さいながら確かな手応えのある変化をしっかり積み上げてこれたのは、本当に良いアニメだった。

 その上でこのエピソードをベストに選ぶのは、食分研……だけでなく、関わった人すべてが大学祭という外に対し開かれた場所にしっかり繋がり、いつものかわいいオトボケを忘れぬまま各々の出来ること、するべきことをやりきって、楽しい思い出が形になっていく描写が、凄く気持ちよかったからだ。
 この手応えをあえて最終話に置かず、真ん中にクライマックスを置くことで「続いていく日々」に構成的な実感をしっかり宿せたのは、本当に巧いなと感心する部分だけども。
 そういうシリーズ全体を通した仕掛けの凄みだけでなく、単独のエピソードとしても全員がここまでの話数でどう変わったのか、何で繋がっているのか、しっかり感じ取れる語り口が嬉しくも誇らしく、「ここまで見てきてよかったなぁ……」と思える回だった。

 

 僕はこのアニメのとても落ち着いた口ぶりと、妙に味の濃い非実在美少女性の同居が本当に好きなんだけども。
 何処にもいないからこそ誰かの夢足り得る、ユートピアの住人たちが織りなす幸せな日々には、確かに何処かにあるかもしれないと思わせるじんわりした温かみ、確かに生きて呼吸している息吹があった。
 ”日常系”と括られる作品群が世に出て二十数年、最早一つのジャンルとして揺るがない安定と停滞を掴んだジャンルが今、その善さを保ったまま現在進行系の脈動を捕まえるにはどうしたら良いのか。
 良く考えた上でその力みを解き、極めて自然に思える作り込みでとてもしっくり来る物語を手渡してくれたのが、とても嬉しかった。

 なんだかんだキャラ萌え、関係性萌えモリモリ出来てしまえる、分かり易い旨味の強さに引っ張られつつも、それを過剰に煮出しすぎて妙なヤダ味が出る直前でしっかり火を止めてもいて、このさじ加減に唸りもした。
 俺は比嘉つつじさんが一等好きだけども、彼女が背負ってる定番の属性を凄く絶妙に料理して、クールな宇宙人に見えて独特の優しさと楽しさをしっかり持ってる、独自の人間としての陰影がしっかりあるのが、凄く嬉しかった。
 あとお互い見知らぬ同士だったからこそ、じわりじわり楽しい日々の中に間合いを詰めて、特別な繋がりで見つめあえる間合いまで近づいていった、まこくれの凄さにも震えさせてもらった。

 本当に色んな善さがある作品で、凄く面白かった。
 彼女たちが楽しい食事が育む絆、それに支えられてもっと新しい喜びへ進み出していく強さを、続いていく日々の中どう育てていくかも見届けたいですが。
 今は完結にありがとうとお疲れ様を。
 素晴らしいアニメでした、ありがとう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

・九龍ジェネリックロマンス

 ベストエピソード:第3話

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 ナメてた話に横からぶん殴られる体験は、いつでも気持ちが良い。
 「鳴り物入りのWメディアミックス、どーせ音だけデカい空っぽの花火でしょ……」と、何度低劣な思い込みを裏切られても消えない下らん予断に心を引っ張られつつ、第1話を見終わった段階ですでに「……やるわね」ではあった。

 謎めいた目覚めと懐かしき……しかし何かが決定的に壊れているジェネリックな九龍の夏は、猥雑だからこその美しさに満ちていた。
 軽薄な笑顔の奥に、確実に傷と涙を隠している男はとてもセクシーで、工藤発と1クール架けてロマンスやっていくのかと思ったら、ビリビリと心が震えた。
 結果どっしり腰を落として、令子が工藤と対等の……あるいはそれ以上の存在として彼の人生に並び立ち、オリジナルの重たい引力を引きちぎって自分の岸に引きずりあげるのを見届けさせてくれたのだから、アニメからのにわかとしては大変満足の決着である。

 

 そんなロマンスとノスタルジーの快楽を、冷えたミステリの刃で切りつけて真実をじわじわ見せていく手腕も、飽きることなく物語に浸ることが出来てありがたかった。
 SF、ロマンス、ミステリ、そして遅咲きのジュブナイル
 様々なジャンルを横断しつつ、それぞれの魅力を相互に連関させて、連載途中の物語をアニメなりのゴールへと、結構必死に引っ張っていってくれたのはありがたい限りだ。

 やはり序盤戦で世界観とキャラクターが織りなす独自の魅力、強いヒキで振り回される気持ちよさをたっぷり味わえたのも良かったが、そういうフックの強い初弾が落ち着いてみると、群像それぞれの削り出し方がとても魅力的であることに気づく。
 出てくるキャラクター、みな第一印象より影が濃く情が深い様子で、こっちが思っていたよりコクのある人生を、この幽霊の街で駆け抜けてくれそうだと思えたのが、この第3話であった。
 思っていたより令子が純白の魂から放つ光が、強く誰かの人生を照らして揺り動かすパワーを持っていたり、みゆきちゃんが抱える愛と陰りは爬虫類顔の悪役仕草を突き破って濃厚に匂い立ったり、「……このお話し、かなり大したものかも……」と、膝を正すには十分であった。

 

 こうして作品に前のめりになると、お話のことを考える脳の一部がガガッと活性化し、ミステリ要素もより良く染みた。
 ここで先読みしている要素はまぁまぁ真相と噛み合ってはいて、それは僕の読みの鋭さではなく、未だ賑やかで代わり映えのない日常を綴っているタイミングで、適切な陰りの印象を眩しすぎる光の中に作り出し、その差気にある真相を想起(つまりは期待)させる作家の手腕の証明だと思う。
 令子と工藤、みゆきちゃんとグエンくん(あとユウロン)が織りなす濃厚な感情の絵巻は、そういう確かな巧さによって成立し、下支えされ、あるいは関係性とエモーションの奥へと深く切り込む味わいの濃さによって、巧みで不思議な舞台づくりが活かされていた感じもある。

 ここで読んだ全体像を遥かに越えて、令子がジェネリックな己とそれを包む九龍、その根本に深く接続されたオリジナルに思い悩み、自分だけに掴める答えにたどり着き、色んな人の目を見てその輝きを伝えていってくれたのが、一番良かったなと思う。
 重たすぎる荷物を捨て去って、工藤とともに新しい世界で新しい生き方をする勇気がどうしても持てぬからこそ、己の命と工藤の愛を最後の賭けに擲った鯨井Bとは真逆の、何も背負わないからこその軽やかな強さ。
 それをブンブン振り回して、ひたむきに未来と希望の方へ、九龍の外側へ進んでいく令子の足取りがあればこそ、ノスタルジーの毒を知りつつ抱きしめてしまう僕らの愚かさを、まるごと慈しんでくれたかのような読後感も生まれる。
 九龍という極めて象徴的な場所が持つ、スラムツーリズム的消費と背中合わせな懐旧と、そこに収まらない危うさと滅びに、しっかりした視線を向け、その象徴として二人の令子を描いてくれていたのも、本当に素晴らしかった。

 大変面白い作品でした。
 原作漫画完結も間近ということで、心より応援しております。

 

 

 

 

・LAZARUS ラザロ

 ベストエピソード:第7話『Almost Blue』

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 まぁまぁ悩んだが、シンプルに一番好きな話なので。
 アクションも人情も特になく、スキナーの遺言に振り回されて青く沈んだ世界を巡る、フェティシズムに満ちた旅路。
 何も起きていないようでいて意味深で、しかしその見せかけの奥行はそれらしい蜃気楼でしかなく、スタイルの表層をなぞり続けて最後まで走っていく物語そのものが、当社されているかのような美しい青。
 凄く”LAZARUS ラザロ”らしいエピソードでもある。

 

 憂鬱からかすかな希望へ、青を塗り分けていくカラーコントロールの妙技に代表されるように、このお話の映像制作のクオリティはとても高い。
 その美しさや鋭さが、キャラとドラマのうねりにあんま深く食い込まず、心地よい映像や血湧き肉躍るアクションを浴びていても、このアニメが結局どういう物語なのか、芯の部分に染みてこない遠さはずっと続く。
 それでもこのエピソードの静かで陰鬱な美しさは、確かに何かを引き起こしてくれそうな期待感があって、結局のところそれが高く炸裂しきる納得のクライマックスに、作品はたどり着いてくれなかった。

 ある程度の諦めというか、「まぁこのくらいかな……」と自分で定めた期待感へのバッファを越えてくるほど酷くもなく、塗り直すほど凄くもなく、自作へのノスタルジーとか現実の問題への意識とかを、彼方にぶっ飛ばすほどの飛翔を見せてくれないスウィングのなさ。
 これが場面場面ごとのレイアウトの強さとか、ふと匂い立つ雰囲気の良さとかと混ざって、独自の臭いと可愛げがある、結構独特な歯ざわりの作品ではあった。
 同期にノスタルジーに対して独自の答えを手渡す傑作(”アポカリプスホテル”と”九龍ジェネリックロマンス”)があったので、もともと極めて相性が悪いその耽溺を振りちぎって、”今”このアニメだからこその独自の答えを聞けなかった無念は、中々深く刺さる。

 

 そこら辺を全部ど~でも良いよと思わせてくれそうな、双竜大先生の大暴れは個人的には評価したいところではあるし、強みの一つであるアクションの良さが終盤に暴れたのは、あの人が色々頑張ってくれたおかげではある。
 しかしまぁ、あのポッとでの超人病患者が暴れすぎたおかげで、ハプナとスキナーという話の中心軸…であるはずのものがブレにブレまくり、結局何の話だったのかさっぱり解んなくなったのも、功罪半ばするところか。
 でもあの人はいてくれたほうが、間違いなく話がオモロくなったわけで、俺としてはとても好きなキャラである。
 まぁ好き勝手絶頂やりすぎたから、関連エピソードをベストには選べないわけだけど。

 このエピソードに滲んだ静謐な詩情の方を、派手なアクションと炸裂ではなくクライマックスの推進剤として選んでいたら、作品全体の印象も、自分のノレなさも大きく変わっていたんだろうな、とは思う。
 しかしま、そんな夢想を引きちぎってお出しされたものが事実であり、現実である。
 好きな部分も結構あり、しかし耐え難い難点も随所に抱えていて、その凸凹ごと抱きしめるには可愛げが足りない作品と、なかなかうまく踊りきれなかったザラつきを抱えて、総評を終える。
 お疲れ様でした、ありがとう。