イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

時光代理人-LINK CLICK- II:第1話『墜落』感想ツイートまとめ

 時光代理人 -LINK CLICK-Ⅱ 第1話を見る。

 衝撃の異能力人情サスペンスが帰ってきた!
 あまりにインパクトのあるヒキで終わった第1シーズンから、直接の続きでさてはてどうなる、ハラハラしっぱなしの二期第一話で大変良かった。
 スタイリッシュな映像と音楽、冴えの中に温もりと痛みを感じる語り口、見事にこちらを翻弄するサスペンスの作り方と、”時光”で味わいたかった栄養素が全部しっかり押し寄せてきて、前作のファンとしては大変ありがたい。
 トキだけでなく視聴者も騙しきる、情報戦の描き方の上手さにまんまと乗っけられて、全く同じタイミングで肩を下ろしてしまった…。
 え、刑事さん……?

 

 話としてはダイレクトに一期の続きであり、極悪人格交換殺人鬼が主役チームに長い手を伸ばしてきて、体も心も関係性もズタズタに引き裂かれ、どう反撃したものか…という展開。
 敵さんの傀儡でしかなかった青年が証拠隠滅のために自殺させられ、スーパーセクシー弁護士がそれを追って事件に首を突っ込んできそうな状況でもある。
 二期からの新キャラである銭弁護士、登場するなり半裸で超絶アピールブッこんできて、既に出来上がった男男関係に殴り込むためには何が必要なのか、良く理解っている動きで良かった。
 息子の死より携帯重視する、クライアントのヤバっぷりとかも、今後話が転がる中で色々掘り下げられるのだろう。楽しみ。

 異能力バディが因果改変能力を活かして、現代中国の諸相に切り込んでいく一期のトーンとは、結構毛並みが変わりそうでもある。
 僕は一期の一話完結、時間を巻き戻しても書き換わらない切ない運命と、それでもそこに何かを見出す人間の営みが凄く好きだったので、異能力を駆使しての知略戦がメインになっても、そういう味がどっかで顔出してくれると嬉しい。
 とはいえ、相棒が死んだと思いこんで泣きながら留置所飯をかっ込む時、一匙一匙がアイツを思い起こさせる思い出ボムの演出力とか、人間の機微を描く筆の鋭さは健在。
 どー考えても死んでる熱量の演出だったからな…綺麗にノセられちまった。
 容疑者として自由を奪われている現実を、胸からあふれかえる切なさが上書きして、ヒカルの思いが世界を満たしていく場面にスムーズに心が乗っかる、真っ直ぐな演出の強さ。
 複数の異能が複雑に絡み合い、血なまぐさい暴力が縦横無尽に暴れる展開の中でも、あるいはだからこそ、見ている側の感情を引き込む物語の腕力がバキバキに強いのは、大変に良い。

 一期からの思い入れもあるが、やっぱスタイリッシュな表現をただ描くで終わらず、その鮮烈さをある種泥っぽい友情や悲しみに上手く繋げて、物語へ体重を預ける足場として有効活用している所が好きだ。
 軽やかに最新鋭を飛びつつ、ベタにやるべきポイントは逃さない感じ。

 

 それにしたって話がヤバい方向に転がるにつれ、番外編だったはずの功夫修行編で身につけたステゴロの冴えがドンドン重要度を増し、本格カンフーアクションとして作画が冴えに冴えていくの、面白くてしょうがねぇ。
 ナイフを巡ってのせめぎ合いは、中国武術だからこその関節の制し方がめちゃくちゃ良い感じにアニメになってて、格闘表現としてスゲー良かった。
 人情とかサスペンスとか、アクションとか異能力とか、お話が触る色んな要素を全部手抜かりなく、良い感じの鋭さで的確に使ってくれている充実感が、二期でも元気なのは素晴らしい。
 どんな要素を扱っても上手くやってくれるので、ネタの混濁が少なくスッキリ見れるのは流石。

 ここまでトキとヒカリが常人の定めを越えて何かをなしうる、卓越した力だったはずの因果改変能力が、自分たちが犠牲者(容疑を押し付けられる側含む)になってみると一般的な正義に説明が効かない、ある種の枷になってきているのも面白い。
 シャオ刑事という協力者が身内にいるのでなんとかなっているが、その庇護を超える勢いで殺人鬼の長い手が伸びてきているのは、急に家族の話しだしてデケー死亡フラグをおったて、その通りに衝撃落下死キメたチェン刑事の有り様で良く分かった。
 ヒカルで一回安心させた上で、一気にこの展開に持っていく押し引きの上手さ…制作者の手のひらでブンブン振り回されている快楽を、今回も与えてくれそう。

 

 敵の手が長く異能が凶悪なほど、それを打ち破る爽快感は強い。
 そういう物語工学は理解しつつ、細かく人間が生きてる手触りを積み上げてくれる作風が、犠牲の苦しさ、血の赤さを見ている側に無視させない。
 このお話が沢山の死と不条理が描かれ、見ていて苦しい作品なのは、俺は凄く良いことだなと思う。
 因果を超える異能を持っていても、主役が”人間”であり続けることの意味が、その痛みには反射していると感じるから。

 ここら辺、異能で人間社会のルール全部ぶっ飛ばして絶頂ぶっこいてる、連続殺人鬼と主役を分ける一線でもあろう。
 何でも出来るからこそ、してはいけないことがある。

 しかし実際、因果を書き換えなければ乗り越えられない悲劇が起こってしまったのなら、愛すべき主役が異能の怪物に落ちる道をためらう理由がないことも、ヒカルの擬死を巡るサスペンスで示された。
 人でありながら、人を超えた怪物の悪意を乗り越え生き残り、為すべきことを為すためにはどうしたらいいのか。
 一期でヒューマンドラマをキャンバスに描かれた主題が、新たな角度から削り出さそうな予感が、落下の衝撃と共に良く伝わってきた。

 

 大変良かったです。
 OPバキバキにキマり過ぎてて、『やった時光だッ!』って心から思えたのも最高でした。
 そういう冴えを武器に、どんな地平を切り開いていくか。
 次回も楽しみ!

烏は主を選ばない:第2話『ぼんくら次男』感想ツイートまとめ

 烏は主を選ばない 第2話を見る。

 華やかな姫君たちの前哨戦が収まり、凶暴さを秘めたボンクラが運命に押し流されて主の元へとたどり着くまでを描くお話である。
 雪哉は敏い耳と苛烈な精神をヘラヘラ笑いの奥に隠し、クソ貴族をハメたり実力で解らせたり出来る存在だが、その奥には郷土への愛、家族への思いが確かにある。
 そういう柔らかなものを真っ直ぐ突き出していては、どうにも戦えない不定形の泥に、山内が満ちている現実を少年は既に知っていて、ボンクラ顔は魂を殺されないための鎧でもあろうか。
 しかし権力闘争のド真ん中、若宮側仕えに流されてなお、凡愚の仮面を貼り付け続けていられるのか。
 実態が見えぬまま噂だけが先行する若宮が、うつけと噂されるのと響き合って、なかなかワクワクする出だしとなった。

 身分差別と口さがない噂が蔓延る山内は、人間どもの浮世に同じくまったくロクでもない場所であり、清い志も燃え盛る愛もどこか、ねじ曲がっていってしまいそうな腐臭が華やぎに漂う。
 窓が小さく灯りが蝋燭程度なので、夜闇が濃い様子が丁寧に積み重ねられ、時代味を感じると同時に雪哉が飛び込み姫君たちが飲まれていく政治の闇を、ヴィジュアルで感じることが出来た。
 この濃い闇を切り裂く真の金鳥として、若宮が最後の最後光り輝いて立ち現れるのは、雪哉の運命が動き出した手応えを感じれて良かった。

 北家内部にすら、本家と郷士、宮烏と山烏の区別と差別があり、軋みながら蠢く身分システムは雪哉が本当に守りたい小さな幸せを、簡単に踏みにじっていく。
 家が栄えるための生贄として、姫君たちが若宮に差し出された様子も描かれ、誰もが顔の見えない大きな機構に食い殺されかけている状況が、ヒタヒタ静かに息苦しい。

 なればこそ、そういう重苦しさを払ってくれそうな革命児への期待は、現代的価値観を背負う視聴者…その窓となる主人公・雪哉には濃い。
 若宮と出会ったときの眩しい光には、そういう期待感が強く反射しているように思う。
 さて、うつけの社会認識やいかに…というところか。

 

 若宮は個人の色恋を越えて家の趨勢を担う、己の婚礼にあまり乗り気ではない様子だ。
 『テメーらキャピキャピやっとる余裕ねぇからな…どんな手段使っても、お家のために主上を射止めろよ!』と厳命されている、絹鎧の恋戦。
 その重たさを重々承知の上で、ハーレムに足を運ばず側仕えを皆追い出し、山内の中枢に相応しい振る舞いを全くしない若宮は、確かにうつけと呼ばれる男であろう。

 その裏に、一体何があるのか…。
 ここら辺は、雪哉が主を分かっていくドラマの中でより身近に、見ている側に迫ってくる部分であろう。
 明らか山内の軋み凄いので、そこに問題意識を持っての振る舞いだとありがたい感じねー。
 姫君たちのせめぎあいは、奪い取るべき玉がプレイグラウンドに降りてこないので小康状態。
 四神に対応したカラーリングでもって、着てる衣から室内装飾まで解りやすく塗り、陣営の色合いが可視化されているのは面白い演出だなー、と思った。

 東西南北、青朱白玄。
 土地と家に紐づいた華やかな鎖から、逃れ得る人はこの山内には誰もおらず、そこに立っているだけで否応なく色が乗る。
 一見華やかで美しいカラーリングにはそういう、息苦しい強要が静かな毒として埋め込まれているようで、良い感じにおぞましい中世の匂いがプンと漂う。
 それは人間性の墓場の匂いであり、システム無しで成立し得ない社会の死臭だ。

雪哉を若宮の側へ送り込んだ、兄君の強力な横車が一体、何を考えてのことなのかも気になる。
 クソ神託の横槍がなければ、序列も実力も天皇に相応しい存在だった彼は権力闘争に揉まれた挙げ句、僧衣を纏って身を引いた。
 未だ影響も人望も残っている様子が描かれたが、ボンクラの腹の底をどこまで見抜いて、楔ともなり得る存在を弟へ送っていったのか…読めないゆえに気になる。

 ボンクラ雪哉が本心では郷里と家族を思っているように、うつけ若宮も兄や山内に人間らしい情があって、なにか考えて非常識な態度を取っているのか、否か。
 雪哉の若宮参代は、そこら辺を探っていく旅ともなりそうだ。

 

 しっかし話数を重ねる事に、クソみてーな差別意識がブンブンブン回ってる山内の終わりっぷりが目に付き、『ナイス中世!』って感じでビリビリくる。
 馬の代わりにデケー烏が車を引いているけども、このお話の人間…に見えるモノは、人化の術を収めた化烏なわけで、あの連中も人化権を剥奪された最下層民とか言われても、全く驚かない。

 『やっぱ所詮は天皇の先達、霊鳥とか霊長とかほざいても救いようのない修羅餓鬼の類よ!』て感じだけど、長束が僧形であるってことは仏教一応伝来してんだよな…。
 この雰囲気だと教門の存在感はデカいのが普通だと思うので、そこが全然顔出さないのはあえてかなー、と思ってる。

 

 というわけで、差別と噂が空気に交じる山内に殺されぬよう、ボンクラを演じることで己を守っている青年のお話でした。
 屈折しているようでいて真っ直ぐで、優秀だけど世界を相手取るほどには強くなくて。
 雪哉の描かれ方はこのイカれた舞台にふさわしい、奇妙な爽やかさがあるとても良いものでした。

 話が転がるほどに『山内…ロクでもない!』という気持ちが強くもなっていきますが、そんな畜生末世に燦然と輝く日御子との出会いが、物語をどう照らしていくのか。
 あるいは山中異界の濃い闇は、”人間らしさ”を食いつぶすほどに濃いのか。
 心地よい王朝絵巻の匂いを堪能しつつ、次回も楽しみッ!

ガールズバンドクライ:第2話『夜行性の生き物3匹』感想ツイートまとめ

 青春に悩む赤ちゃん人間ども…軒並みロックをやれッ!
 ガールズバンドクライ 第2話を見る。

 状況の勢いのまんま、なんか良い感じの所までブチ上がった第1話の後始末、アドレナリンが引いた後のクラさで主人公の陰影を描く、とても良いエピソードだった。
 前回『中指立てればロックってなぁ…』とブツブツ言ったが、もうロックンロールをやる以外道がない仁菜の赤ちゃん人間っぷりが存分に発揮され、この作品なりのロックが高らかに鳴り響いて、大変良かった。
 ヨーグルトの乳房で仁菜を存分にバブバブさせる、桃香さんの抱擁力もズギュンとくる仕上がりで、三人目の女も顔見せこっから本番だ! ロックンロールが鳴り止まない!

 

 前回川崎駅周辺のモダンでアーバンな空気をキラキラ切り取ったカメラは、実際に生活を営んでいく矢向の地味~な空気に切り替わり、反抗したいくせに道が見えない仁菜のどん詰まりが、クラめに展開していく。
 上京直後のうわっついた空気が冷めて、アパートに家具なし飯なしヨーグルトのみの空虚に直面し、孤独の中でさぁどうするか。
 否応なく、仁菜は何者でもなく何者かになりたい自分と直面していく。

 ここで桃香さんが隣に立ってるのが効いてきて、虚しく暗いからこそハタチのお姉さんを太陽と求めてしまう、赤子のような甘え方がズブズブ女たちを繋いでいくわけよォ!
 お酒を飲めたり、軽トラ自分で運転したり。
 仁菜から見た桃香さんは自分が首までハマっている思春期の泥沼から、先に一歩抜け出して自在に生きている羨ましい存在だ。
 彼女が夢破れ故郷に帰る寸前だった、自分が戦いを挑まれてる顔の見えない的に負けた敗北者だったという事実を忘れて、仁菜は憧れの瞳で桃香さんを見上げ、しかし肥大化した自意識が邪魔してすがりつけない。

 赤子というには素直ではなく、大人というには弱すぎる。
 屈折を極めためんどくせー女は、負けてない自分を証明するために大検資格を得ようとし、それ以外にはなんにもない。
 何かあったはずなのに、家や学校が奪っていってしまった。
 なら奪い返すしかねぇだろ! って話なんだが…
 見知らぬ都会に一人ぼっち、背伸びしたってライトも取り替えられないちびっ子では、巨大な怪物との戦い方はわからないのだ。

 

 『そういう人間こそロックンロールをやれッ!』と、お話のテーマにバッチリハマった導きを、失ってしまった熱量を仁菜に重ねながら手渡す桃香さんの頼もしさ、正しさが、ズバズバ刺さる回であった。
 便座覗き込み健康法で二日酔いを追い出す、カッコ悪い大人から始まって、バブバブ言ってる後輩の面倒を見、思い出した夢に向かって立ち止まらずに動き直し、自分が見つけた才能にラブコールを送る、独立独歩の頼もしさまでじっくりギアを上げる。
 桃香さんの描き方がかなり計画的で良かった。

 思いの外クラい話であることが、陰気な影と瞳に滲む涙のクローズアップで理解ってくる話数なのだが、その影を振り払うように折り返しで仁菜が多摩川に叫ぶアカペラの強さが映える。
 やっぱ楽曲が強いのはこのお話の武器で、『このだけの才能、歌わせないのは損失だ…』と、無条件に納得させられてしまう喉があるのは素晴らしい。

 仁菜は賢くも優しくも強くもないクソガキであり、逃げ込んだ便所で桃香さんが諭してくれた、公平で客観的な視線ってやつを全く持てない。
 極めて主観的で身勝手で、ワケのわからねぇ傷だらけでしか生きられない、面倒くさくも嘘のない、赤ん坊の生き様を身にまとっている。
 それははた迷惑ながら面白く、ロックンロールというアダプターを通してようやく、社会と接合していける仁菜らしさだ。

 中指そのまんまおっ立てたら、どんどん放送できなくなっていくヤバさにクッションかけるように、少女たちは世界への怒りを小指に宿して、二人だけの暗号を贈り合う。
 『理解ってねぇかもしれねーけどさぁ…仁菜ちゃんそれプロポーズだからね!?』と思わず突っ込む、無自覚の感情のデカさが”ももにな”にあるのも、GirlsがBandでCryする話には大事なことだ。
 キャッチーなヤバさをチャーミングに折り曲げて、自分たちだけの表現を掴み取ってきたのは、凄く良かったな、小指のファックサイン。

 

 思いの外暗い話だってのが良く分かった二話だったが、この質量と暴れっぷりを受け取った後だと、カトゥーンめいたコミカルな表現が日常でも元気なの、得心が行く。
 3Dアニメ制作会社としては後発になる、東映が独自の武器としてそういう表現を選んだ…つう部分も結構あると思うけど、コロコロ表情が変わり、漫符的表現がややクドい”陽”のシーンのわかり易さが、シニカルで湿った感情領域と心地良い対比を生んでいる。

 ああやって楽しく騒いでいたいけど、そうも行かない思いが胸の中に渦巻いてて、んじゃあどうやってスカッと呪いを晴らせば良いんだよ!
 ロックンロールをやれ!
 そういう問答が、選び取った画風から滲む。
 桃香さんに超甘えながら、ワーワーガーガー騒いでいる仁菜はとってもチャーミングで、泣くより笑い喚くより歌っていて欲しいと、素直に思える主人公だ。
 そんな子に桃香さんが優しいのが、見ていて嬉しいポイントでもあり、『そらーハタチにズブズブになっていくわ…』と、関係性構築に納得できる描写でもある。

 

 一人はいじめでドロップアウト、一人は成人済み、もうひとりは芸能学校。
 フツーの学校教育から軒並みはみ出して、タイトルから『スクール』を追い出している独自性が、ロックンロールをやるしかないはみ出しものセッティングと良い感じに噛み合ってる気配もある。
 まーこのスタッフで学校舞台だと、モロにアレだしな…。

 仁菜が赤ちゃん人間であるほど、ワケのわからねぇ衝動をロックへと導き、泣きじゃくる顔から涙を拭いてヨーグルト飲ましてくれる桃香さんの人間力が際立つわけだが、彼女もたった二十歳の、挫折を知った傷だらけの少女だ。
 叫ぶしかないモヤモヤはまだ彼女の中に残っていて、でももう無くなったと思いこんでいて、だから仁菜に構う大事にする。
 ここら辺の歪さを、俯瞰で見る余裕が仁菜に欠片もないのが、今後爆裂しそうな不発弾を僕らに教えていて、大変ワクワクする。
 『ママだって一人のロックンローラーだからッ!』と桃香さんが叫び、預けていた体重がすっぽ抜けた瞬間の仁菜の顔…見たいッ! そそられたぞストライダムッ!

 孤独な都会でたった一人、自分の傷を撫でてくれる桃香さんは独立した一人の人間であり、自分のバンドを再起動させる行動には手早く踏み込む。
 そうして選ばれた三匹目の夜行性、ぱっつんヘアーの安和すばるの素顔は、まだまだ見えない。
 現状ライトもくれるしいい人っぽいが、笑顔の奥から冷静に状況を見据えるクールさも感じられるし、『オメーの腹の奥、とっととかき鳴らせよ!』感が凄い。
 この話で暴れる以上、どっかにロクでもねぇ熱量があるとは思うので、そういうもんが爆裂して仁菜とワーワーガーガーやる瞬間、そうなっても大丈夫な信頼感がメンバーと構築された後が、なかなか楽しみだ。
 ゼッテーヤバいよなー…(期待)

 

 というわけで、大変クラくて元気な回でした。
 第1話では掘りきれなった仁菜の幼さ弱さが、川崎の暗くて湿っぽい部分に上手く反射して描かれ、ロックンロールを主題にしたお話である必然が、良く伝わったと思います。
 あの暴れっぷりは、そらーロックをやるしかない。

 多摩川が目の前に拓けた瞬間、部屋で泣きじゃくってたら桃香さんが来た時。
 闇から光へと世界が塗り替わる瞬間もエモーショナルに演出されてて、そういう強さをだだ漏れにするのではなく、ダイナシなしょーもなさに輝かせるメリハリも力強かった。
 綺麗な涙もきたねー鼻水も、ダダ漏れで突っ走るロックンロール街道。
 どこに往くか、次回も楽しみッ!!

うる星やつら:第36話『みじめっ子・終太郎!!』感想ツイートまとめ

 うる星やつら 第36話を見る。

 OP・EDも最終クールっぽくなって一発目、面堂終太朗一本繋ぎでブッかますぜ! という回。
 普段よりバイオレンス5割増の仕上がりになっており、『やっぱ面堂家ってヤ…』という、長年の疑問を裏打ちするような回。
 勢い重視ギャグ作品とはいえ、武装の強度があまりに高く、暴力への引き金があまりにも軽いので、やっぱなんかこー、サンデーでは表立って言えないアレソレが設定に食い込んでそうな匂いが伝わってきた。

 お話としてはスナック感覚でタイムスリップして、面堂くんの人となりを掘ろう! という回。
 回想でも良さそうなところで、直接過去に戻るのがうる星イズムだなぁ…。
 面堂といえば令和のサンデー看板作品、”葬送のフリーレン”でもパロられた『暗いよ狭いよ怖いよ』であり、そんなキャラ記号のど真ん中に切り込んでいく…けど解決はせず、むしろ歪んだ時空が因果を繋げた決着が、最後の最後で投げっぱなしにされる展開がパワフル。
 つーか令和うる星が放送してる結果、フリーレンのミミック芸が古典からの引用じゃなくある種のアヴァンギャルドになってるの、放送時期の妙味だなぁ…。

 子供時代から相当イイ性格してイイ育ち方してた面堂が、自分自身とバチバチ騒がしくやり合う回なのだが、それより了子の動じぬ強キャラっぷり、暴力へのためらいのなさが際立ち、面堂家の序列を再確認する事になった。
 幼少期からあんだけイカれた環境で育てば、そらーすぐさま日本刀を取り出すヤバ人間にもなろうし、むしろあの異常家庭で育った割には、落ち着きのある好青年になったんじゃなかろうか。
 言うたかて極限まで追い込んで、バチ切れさせると自分自身に強烈なトラウマを刻み込む悪鬼にもなるわけで、そういうぶっ壊れ方含め面堂終太郎、面白い男である。
 やっぱマモちゃんが終太郎役で良かったし、その良さを引き出す作画と演出頑張ってくれて嬉しかったな、今回。

 

 話の流れははいつもと同じく…にしては”暴”の匂いが濃い回だったが、幼終太郎に無意識の牽制ぶっこむダーリンに、ラムがワクワクする様子が可愛く浅ましかった。
 

 めちゃくちゃメロウに、最終エピソードに注力して作り上げられたOP/EDを見ても、ラムとあたるの終わらない追いかけっこが思いの外脆くて、儚い非日常である事を、このクールは強調してくる感じがある。
 なのであざとくあたラム出来るタイミングで、グイグイ押し込んでくる形にもなろうよ!

 普段はすっとぼけられて逃げられてばかりの純情を、確認できそうなチャンスが来ると角引っ込めて、結構マジにドギマギしながらダーリンに近づいていくラムのあざとさ、大変良かったな…。
 そこに明確な答えを返せないあたるの半煮えが、最終盤をの大事な火種にもなろう。
 永遠に続くはずの狂った祝祭も、ふわり儚く終わる日が来る。
 今回描かれたようなワイワイ騒がしく、やり過ぎ感満載のドタバタを、何もかもが消え去った後で懐かしく思い返すような、”うる星”の終わり。
 新OP/EDは『うる星が終わる、ラムが消える』という必然にしっかり焦点を合わせてて、令和うる星らしい力の入り方だった。

 

 あの淋しくも美しい景色へとどう走っていって、その先にある自分たちの答えを、どう描ききるか。
 4クールの長きにわたって楽しませてもらったアニメの行く末はやっぱり気になるし、そうしてフィナーレが見え隠れしてくると、騒ぐだけ騒いでスカッと終わる『いつものうる星』味にも、微かな苦味が交じる。
 それは今本気で、”うる星”やったからこその味だ。

 既に結末を知っているはずなのに、騒々しい祝祭の先に待っている必然にしみじみ感じ入るものを受け取るのは、僕がこの令和のうる星が好きになれた、大事な証拠かなぁと思う。

 終わらず続いていく喜ばしさと、必ず終わっていく切なさ。
 その両方を色んな角度から、色んな面白さで描いてきた物語に残された話数は、実はそんなに多くない。
 つうか莫大な原作を抽出して令和に”うる星”再構築するには、そもそも厳しい紙幅ではあるのだ。
 しかし創作者達はエピソードを選び新たに書き直し、長く愛された古典がなぜ面白いのか、生き生きと新たな生命を吹き込んできた。
 そんな旅路が、どこに行き着くのか。
 次回も楽しみだ。

ダンジョン飯:第15話『ドライアド/コカトリス』感想

 ラスボスに目をつけられたり、花粉症になったり、石化して漬物石してみたり。
 色々あったけど、僕たち冒険者は元気です!! という、ダンジョン飯アニメ第15話である。

 妹復活の目的を果たして大団円……と思いきや急展開で大変なことになったり、別パーティーに視点が移ったり、色々起こってた最近のダンジョン飯
 今回は慣れ親しんだドタバタ冒険喜劇が久々に戻ってきて、美味そうな魔物メシもたっぷり食べて、『やっぱコイツラの大騒ぎ、良いわぁ~~』と思える回だった。
 このしみじみした手触りも全滅寸前の冷たいザラつきや、魔物より人間を見ているカブルー側を描いたからこそだと思うので、展開やキャラを拡げる利点を改めて感じられた。
 傍から見たらヤバくて問題だらけかもしれないが、ライオス達の食ったり戦ったりはやっぱり楽しそうで、そういう連中がどんどん距離を近くしながら迷宮の深奥へ突き進む歩みには、魅力的な吸引力がある。
 面白いから先が見たくなり、先を見るほどに楽しくなってくる心地よいフィードバックが、外部からの刺激を受けてより加速してきた感覚は、1クールじっくりトンチキ冒険者たちを見てきたからでもあろう。

 そんな連中が今回挑むのは、ドライアドにコカトリス
 花粉症に悩まされ、ツッコミついでに石化して大変に愉快ではあるが、戦い自体は命がけの激しさがしっかりあった。
 アニメならではの迫力で、魔物グルメが安楽なものではないと伝えてくれることで、負かした相手を食材に命を繋ぐ営みが、生活や人生と密着している様子も間近に迫ってくる。
 人間の形をしてるけど対話は見込めない、ドライアドとのバステ塗れ戦闘とか、ライオスが前線に立てない分闘士としてのセンシの頼もしさが際立つコカトリス戦とか、バトルのバリエーションが豊かなのは、このお話の地味に良いところだ。

 迷宮の主との激戦を経て、飢え死にしかけているパーティを包む闇は暗く、寒々しい感じがする。
 冒頭の色合いが一行の現状を上手く伝えて、『食わせねば……若いものには食わせねば!』とわななくセンシの焦燥、戦いの果てに作った独特の料理の温かみが良く分かる。
 マルシルの魔力切れを一種の”空腹”として生かすことで、それを満たし新たな可能性……ライオスのノーム魔法習得を開いていく起爆剤として、魔物メシが機能している様子も良く分かった。
 こういう欠乏と充足のバランスが上手いからこそ、食べても食べても腹が減り、だからこそ毎日の食事を美味しくいただける人間の面白さが、お話から逃げないのだと思う。

 

 激戦を経て実力不足を思い知った一行は、情緒的な面でも能力的な面でもお互いの特質を混ぜ合わらせ、絆を深めていく。
 マルシルの特権だったはずの魔法をライオスは学び、魔力酔いに苦しみながら実地でし石化解除魔法を習得して、窮地を脱していく。
 あるいはコカトリスと戦う時、センシはライオス並の魔物知識を発揮して攻略の糸口を掴み、マルシルは彼女なりの迫力の出し方でかつてバジリスクを気圧した、トンチキ戦士の戦い方を真似る。
 花粉症でドワーフの眼が効かなくなったら、ハーフフットの優れた感覚を借りて戦い、パーティーはお互いの欠落を埋める一つの有機体として、だんだん機能しつつある。

 この喜ばしき混交は能力面だけでなく、情緒においても進んでいる。
 先々週顕になったチルチャックの情とか、なりふり構わず人頭(に見えるもの)にかぶりつくマルシルとか、狂乱の魔術師との激戦を経て、ちょっとよそよそしいところがあったパーティーの垣根が崩れ、お互いをお互いの中に招き入れてきている感じだ。
 シュローやナマリと混じり合いきれなかったからこそ、真っ当ではない手段でファリンを復活させる旅に出た彼らが、同じ釜のメシをかき込み、生きたり死んだりする中で距離を縮めていくドラマ、その結果仲間の”らしさ”を自分に引き寄せていく様子が、やっぱりこの話の見どころだなと思う。
 それはしみじみ心を打つ感動だけでなく、どーしょもない笑いとシニカルなツッコミにも表れていて、パーティーの紅一点が漬物石やら邪教の偶像やら、ロクでもない扱いされてるのも、深まった親しさ故だろう。
 回復魔法レッスンでドキドキとか、ラブでコメった香りのある描写とかもあったのに、結局すンゴイ顔で石になってんだから、マルシル……つくづく綺麗なままでは追われない女よ。(好き)

 

 向き合い混ざり合うのが味方との感情だけではなく、敵たるモンスターにも一種の敬意が向けられている。
 ドライアドの雌花はまだ未熟な仲間を育むためにライオス達と戦うが、これは若いものに過保護なセンシの様子と、奇妙な共鳴を果たす。
 人間とモンスター、安易な共存を阻む壁は確かにあるのだけども、響き合うものも確かにあって、奴らだって生きようとして必死にもがき、食って生殖して死んでいく。
 そこに経緯を持っているからライオスは魔物に興味を持って知識を蓄え、それがモンスター殺しの大きな武器となり、糧を得る助けになっているのだから、迷宮の輪廻はなかなかに不思議だ。

 ヒューマノイド同士だからって全部が解るわけでもなく、過保護ドワーフは眼の前のハーフフットが酸いも甘いも噛み合わけたオッサンだと知らぬまま、今更な性教育を真面目に始める。
 あるいはチルチャックが当て擦るのも当然の、激ヤバ黒魔術復活がどういう理屈で動いているのか、バチバチしつつも言葉で伝えていく。
 そういうすれ違いと触れ合いを笑える一幕と積み重ねて、知らない同士が解り合って、混ざり合っていける愉しさが、確かにこの迷宮には息づいている。
 人間が生きる場所、変わっていける現場として”ダンジョン”を描いていることが、冷たいハック&スラッシュの外側にお話を連れて行っているのだと、改めて感じるお話だった。
 待ってましたのドタバタ冒険コメディの合間に、マルシルの魔法と迷宮に関する講義だったり、センシが過剰に食と若者に思い入れてる様子だったり、今後に活きそうなクスグリが好きなく埋め込まれているのも、巧くて良いわな。

 

 自在に姿を変える迷宮に翻弄されつつ、しぶとく食って満たされて、まだまだ俺達負けてないぜ!
 好ましい逞しさで主役健在をアピールしてくれた物語は、こっからどう転がっていくのか。
 次回の冒険も、とっても楽しみです!