イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルーアーカイブ The Animation:第4話『覆面水着団☆』感想ツイートまとめ

 ブルーアーカイブ The Animation 第4話を見る。

 前回顔見世した便利屋68が、真のアウトローである主人公たちの生き様に惚れ込むまでを描くゆるふわPAYDAY回。
 もともと引き金の異様に軽い世界だと思っていたが、ネタだとばかり思っていたシロコの直情犯罪傾向が新キャラを巻き込み、あっという間にバラクラバ被ってブツを強奪するスピード感に、頭クラクラした。
 露天でAUG売ってる有り様もそうだけど、秩序が崩壊したアビドスの末世っぷりがマジ半端じゃなくて、なおかつ大人がほぼ大人の仕事を果たしてくれない感じなので、先生のやるべきこと、やらなきゃいけないことは多そうだ。

 困窮の原因になってる暗黒金貸しが、犯罪を助長する暗黒銀行とグルになって野放しなアビドスの現状を、キモい鳥のグッズ求めて迷い込んだだけなはずのヒフミが全部知っているのは、剛腕すぎてちと面白い。
 ブラックマーケット訪れるのも初めてだし、一番世慣れてる感じのホシノすら『学校の外には、水族館というものがある』という認識なので、対策委員会の子たちの世界は思いの外狭くて、それを拡げるチャンスも助力者もいなかったのかなぁ…と、かなり暗い気持ちになる。
 その結果がノータイムの犯罪遠足になるのは、生粋のアウトローたる”才”としか言いようがないけど。
 凄い女だ、砂狼シロコ…外付け倫理装置であるホシノがいないと、マジ取り返しのつかない大暴れしてそう。

 

企業主導のコーポレート・アナーキーな価値観が支配的なアビドスにおいて、不法を正すのは法ではなく、制御された不法でしかない。
 『いや止めろよ…』というツッコミも追いつかないまま、銀行強盗の片棒担いでる先生は、子どもらが本当は信じたいけどどこにもない”正しさ”ってのを結晶化させて、傷ついてる彼女たちを信頼させることが出来るのか。
 子どもらがアビドスのルールに流されて、無法者にならない最後の砦になってるホシノが、一番鋭く先生の言動を睨みつけている様子が幾度か描かれているのは、”大人”に相当手ひどく裏切られた反動なんかなぁ…と感じる。
 この不信は、後輩を守るためのホシノの盾なんだろうけど。

 ワイワイ楽しい犯罪DAYSに、どこか落ち着かない気配があるのは、発砲に強襲に、やっちゃいけないはずの事が当たり前になってる世界観と自分を織り合わせていく中で、結構大事な違和感だと思う。
 ジリジリ困窮の真相に近づいてはいるので、クソ金貸しをギャフンと言わせて学校に迫る脅威がなくなった後、正しいことを正しいまま行える落ち着きが、子どもらの周りに生まれていくと良いな。
 …でも世界秩序の中心が消滅し、各校好き勝手絶頂ぶっこいてる状況だと、また別の火種がボーボー発火するだけかな?
 皆根はいい子なんだが、銃が身近にありすぎる。シカゴのドリルラッパーが置かれてる環境みたーい。(分かりにくい例え)

 

 さておき、通りすがりの超参謀・阿慈谷ヒフミの情報分析に基づき、正義執行に必要な証拠だけを手にし、富を遠ざけ颯爽と去っていった本物のアウトロー達。
 彼女たちに比べ、アルちゃんは色々な勘違いと見栄が絡み合って、真に自由に生きるという夢がなかなか叶わない、可愛くも可愛そうなポジションである。
 つーかシロコの”暴”への導火線の短さは、生まれついての天性だと思うので、憧れてもあの領域に行くのはなかなか大変だろうけど。

 アルちゃんの憧れる”真のアウトロー”とは、ジョルノにおける”ギャングスタ”みたいなもんで、世を支配するくだらん抑圧を跳ね除け、思うがまま正しく生きる在り方だ。
 裏を返せばアドビス以外も、銭で雁字搦めの生きづらい場所だって話なんだろうけど、なかなか叶わないはずの自由への暴力的闘争を迷いなく敢行する主人公たちが、なかなか掬い上げられない凡人の苦労をチャーミングに体現してて、なかなか面白いキャラだった。
 明らか犯罪者向いてない彼女に、三人も仲間が付いてくる当たり、可愛げか土壇場での爆発力か、人を引き付ける何かがあるんだろ。
 そこら辺が今後、対策委員会に惚れちゃった彼女たちが事態に食い込む中見えると、さらに面白くなりそう。
 あとアル様アル様くっついてくる、ハルカって黒髪の子…かなり”匂う”んだよなぁ。相当重いんじゃないの?(期待まじりの推測)

 

 というわけで不法には無法で返す、砂漠のルールが凄い勢いで叩きつけられる回でした。
 観光客Aッ面してたヒフミが、背景情報から何から展開に必要なネタ全部差し出して状況が動くの、マジ面白かったな…。
 薄々感づいてはいたが、世界設定だけでなく話の転がし方もかなりトンチキっぽいので、そこら辺の飲み干し方を自分なり固めた上で、逆転の秘策を銀行から盗み出した主役たちの反攻を、次週も楽しみたいと思う。
 …どう考えてもこの末法世界、一番足りてないのは”教育”なので、先生は先生本来の仕事をしたほうが良いと思うのだが、銃撃戦食い込ます方に忙しくて、絵的に地味な人間育成はあんまやらない感じかなぁ。

ヴァンパイア男子寮:第4話『美少年、友だちになる。』感想ツイートまとめ

 ヴァンパイア男子寮 第4話を見る。

 『これはHじゃなくて吸血だからセーフ!』とか『恋じゃなくて友情だからセーフ!』とか、ギリギリのトキメキ法解釈を積み重ねることでなかよしで連載されている、スーパーアモラル吸血鬼ロマンスも第4話。
 そのくせ登場人物たちは軒並み幼気でピュアなので、無垢なまんまメチャクチャ湿って熱い領域に頭から突っ込んでいく不思議な味わいがあり、門外漢としてはとても楽しい。
 多分ジャンル的にはあんま突飛ではない文法で、むしろスタンダードを全力でやりきってる感じなんだと思うが、外野から見えると全てが力んで捻れていて、そのくせ素直な真顔で…ヘンなアニメ!(ヘンなアニメ大好き)

 

 お話の方は外付け吸血鬼倫理押し付け装置である小森が、『貴族であるオメーは存在もしてない許嫁がいるので、それ以外に本気になるの禁止。全部遊び』と釘を差してきたので、開明派のピュアボーイであるルカくんが『コレは友情!』という理屈を貼り付け、美人ちゃんとの関係性を再定義する感じに。
 どんだけお子ちゃまで鈍感でも、心の奥底ではもう惹かれ合ってるズブズブな二人が、気持ちの導くまんま突っ走るとあっという間にカップル成立、吸血行為で収まらないイチャイチャネトネトを開始するので、小森が真祖の権威を盾にして、色々ワーワー言ってくるのは大事だ。
 見え見えなんだけど遠回りして、そのワチャクチャが可愛く楽しい。

 ストーリーラインの取り回しが、自分の中のスタンダードとはちょっと違っている所も、楽しく見れている理由だろうか。
 吸血鬼の定めとか男装女子への疑似同性愛とか、いろいろインモラルで一筋縄じゃない障害が用意はされてるんだが、そこまで本気で楯突いてこないというか、どこまでいってもお遊戯感覚というか。
 ルカくんと美人ちゃんの可愛いすれ違い(絶対Happy Loveに収まる)の火種でしかないアレソレがあって、物語が安易に決着しない状況が保たれているわけで、なかなか面白い。
 美人ちゃんがスゲー素直なので、彼女の外側に足止め要素置いておかないと、話は進みすぎるしキャラは捻れるし…なんだな。

 ルカくんの認識としては美人ちゃんは『血がクソ不味いけど、何故か大事にしたくなる禁断の少年』になるわけだが、何しろ吸血鬼なのでクソつまんねー人間の差別意識など蹴っ飛ばし、ダイバーシティに溢れた性意識をもって向き合っているのは、凄く良い。
 興味本位で更衣室に乗り込もうとする、治安最悪のモブ女子を蹴散らして、男だろーが女だろーが美人ちゃんが好きという、無自覚一途をぶっ放してくる姿は、流石闇の大貴族…なんてワルだッ!
 邪悪で貴族的な吸血鬼要素も、小森という外部に委託してルカくん本人は理想の”人間”なのも、面白い造形だ。
 宿敵たる吸血鬼ハンターも、めっちゃいい人だからなぁ…。

 

この透明度高いピュアラブっぷりと、隙あらばエロスを燃え上がらせる発情周期の短さのギャップも、また独特の味わいで面白い。
 『赤ちゃんはキャベツ畑で取れる』と無邪気に信じていそうな純朴な連中が、『コレ吸血行為だから! 合法だから!!!』と囃し立てられながら、メチャクチャエッチな表情で身体接触するの、独自の後ろめたさと興奮がある。
 自分たちがやってること、言ってることがどんだけヤバいか、まったく自覚せずボンボコ爆弾落としまくる無法が、妙に痛快なんだよな…。
 ここら辺の未熟で無邪気な感じが、話が煮込まれる中で同変化していくか…あるいは何かに守られ無垢なままかは、結構気になるね。

 いかに疑似とはいえ、あんだけHotに吸血行為を積み重ねていくと色々洒落にならんくなっていくと思うが、『愛されなかった子どもの血不味過ぎ問題』で上手く笑い飛ばすことで、えっちになりすぎないよう上手く制御してもいる。
 ここは『いちご味の美味しい血』という素敵なファンタジーが、エグすぎるエロスを上手くフィルターしている部分で、作品の強みである純朴な透明度を濁さないまま、皆が見たい(見たいだろッ!!)ドキドキを描く妙技を、巧いこと形にしている。
 本気になっちゃうその前に、キラキラなドキドキの段階で『クソ不味い~~』で笑い飛ばして、二人が心地よく距離を取れるしかけが、基礎設定に練り込まれてる感じ。

 

 このフェールセーフがあるので、性別バレやら恋心発覚やら、色んなピンチに接近しつつも軽やかに身を翻して、何もかもが心地よい宙ぶらりんの中気持ちよく踊っている現状が、見事に成立しているのだ。
 この精妙なフワフワ感は、ド本命のルカくんに純情LOVE捧げつつ、ときおりその宿敵蓮くんにフラフラする、愛されすぎ系男装女子の立ち回りにも通じている。
 友達というには向ける感情が熱すぎ親身すぎる、可愛い男の子たちの間でたっぷり愛され、両天秤に惑い、翻弄される気持ちよさ。
 美人ちゃんの立ち位置と立ち回りは、それを追体験したい視聴者の欲望を忠実に叶えてくれてる感じだ。
 ここら辺も、変に捻らず素直よね。

 『誤解あってこそ深まる愛にかぶりつきたい!』つうのも、ユーザーの大事な欲望なわけで。
 虚無から映えてきたお嬢様合コン部の面々が、場を引っ掻き回して火種を作るのであった。
 『ここで生まれたすれ違いが今後の燃料か!』と思ったところで、ラスト30秒で怒涛の蓮くん邪気眼発動で引いたの、あまりの牽引力で爆笑しちゃった。
 予想されていた新展開に、欠片も気配がなかった新設定開示を乗せて、異様な勢いをブーストしていくヤリ過ぎ感…たまんねぇな!
 キャラも展開も素直なのに、キラキラロマンス演出が明らかに法定値を超えて過剰なところとか、ヘンテコな部分はとことんヘンテコなアニメだ。
 好きだなぁ…。

 小森から注入される貴種要素が、いい塩梅にコク出してるルカくんに対して、蓮くんややキャラ弱い感じもあったので、ここで暗黒パワー覚醒するのはかなり美味しいと思う。
 そういやヴァンパイアハーフだったので、言うほどでも唐突でもないしな、吸血鬼ハンター闇の覚醒…。

 

 のんびりまったり純情可憐な、ほのぼのラブコメな部分も好きだけど、やっぱ”吸血鬼”タイトルに背負う以上、現代伝奇の暗い味わいも堪能したいわけで。
 そこら辺をどんくらい力強く描いてくれるのか、試金石にもなる展開だと思うので、次回どうなるか大変楽しみです。
 まーヘンテコなお話なんだが、真っ直ぐで気持ちいい部分が芯にあるのは強いね。

烏は主を選ばない:第4話『御前会議』感想ツイートまとめ

 烏は主を選ばない 第4話を見る。

 若宮を排除するための御前会議は、当人の乱入で華麗なる代替わりの現場へと変わった。
 四家の思惑渦巻く宮廷を、果断に改めんとする風雲児を良く思わぬ者たちが、差し向ける凶刃。
 既存勢力との激戦を前に、真の金烏は垂氷のぼんくらを懐刀と求めた…というお話。

 うつけうつけと侮られていた若宮が、何考えててどんな人なのかを一気に見せる回。
 チャンバラシーンの仕上がりが良く、生半可な圧力には屈しない力強さと、切り合いも当然と飲み込む覚悟の太さ…血なまぐさい危うさが、同時に感じ取れた。
 まぁそらー、華やかな婿取り競争だけが山内じゃないよね…。

 

 四家(皇后の出身である南家が主か)の傀儡であり、真の金烏へのつなぎでしかない現金烏を、御簾のこっち側に引っ張り出して玉座を手に入れた若宮には、ちと情に欠ける冷たい部分が見える。
 神託による継承権簒奪への反発より、ともすればこの冷たさが支持者の少なさに繋がっている感じもあるが、怜悧だからこそ当然視されている構造への疑問を抱え、社会を改革していく意欲も湧く…という話かもしれない。
 凡俗だからこそ担ぎやすかった、軽い神輿の真の姿。
 現金烏が御簾の奥の神秘性を引っ剥がされ、生身の感情むき出しに瓜実顔を曝け出していたのは、痛快と言うより哀れで痛ましい場面だと感じた。

 必要であれば実の父をも侮蔑の泥に叩き落とす、ある意味で山内政治の申し子のような容赦の無さ。
 深奥を切開しなくても大分腐臭がキツい、四家主導の山内政治に新たな風を吹かさんとするなら、その苛烈は強みであり武器だろう。
 ただどんだけ腐りきった体制も、弱さや醜さ含めた人間の本性から湧き出して生まれたものであり、しがらみや情を真正面から断ち切る正しさは、味方より敵を多く作るだろうな…とは感じる。
 薄汚れた打算で動くにしろ、理想を報じて清らかに生きるにしろ、八咫烏も人間と同じく感情を持ち、色々余計なものをくっつけつつもひどく動物的な、湧き上がる思いを燃料に自分と世界の位置を決めていく。

 この『動物でしかない人間』というものの本音に、汗の汚れをとにかくいとう貴族階級はちゃんと向き合っていない感じがあり、ギシギシ軋むキレイな建前を全面に押し出して、どうしょうもない己等の本性をどうにかしていく努力を、下層階級に投げ捨てている印象を受ける。
 まぁその一方的な業の投棄が、逆さまになると富の収奪となり、身分制度を成立させているんだろうけども…。
 そういう意味では、若宮が10年かけて作った『彼らに対抗する術』ってのが下層民との連帯っぽいのは、ちょっと面白いな。
 権力中枢に敵ばかりなら、そこからはみ出した場所に基盤を持つしか無いのは、結構納得。

 

 若宮を若宮たらしめる、真の金烏というオカルティックな政治存在。
 不幸を呼ぶと疎まれつつ、宗家が王たるべき根本がそこにはあるわけで、官僚身分制度が高度に発達した今の山内で、どんだけ信じられ畏れられているのか、気になる部分でもある。
 古臭い神話を持ち出さずとも、極めて人間的な欲望と権力装置を抱え込んだ今の烏共は社会を運営できており、その序列を乱す”真の金烏”は、若宮のような革命志向があろうがなかろうが、相当に疎まれるだろうなぁ、と思う。
 これが実効のない寝言なら排除しても実害は少ないんだろうけど、なにしろ烏が人間の格好している世界なんだから、オカルトがマジも大マジな可能性は結構ある。

 暗殺者差し向けられるほどに疎まれてる主上しか、迫りくる古き霊的危機に抵抗できないから、人柄だの実力だの血縁だの、人間側のアレソレを全部蹴っ飛ばしてでも”真の金烏”を時代が欲するのだとすれば、山内存続のためにはいけ好かない横入り野郎を真ん中に据えて、四家一丸となって危機に立ち向かう必要があろう。
 しかし若宮の怜悧な人格、人間を突き動かす情への無理解は、そういう理想を叶えるにはちと冷たすぎる感触がある。
 ここら辺、雪哉を隣において革新の道を進む中で、ちっとずつ変わっていくものか…はたまた時代の悪意に噛み殺されていく部分か。
 アニメの範囲だと、描ききれないスケールではあるか、ここら辺。

 色々ぶっ飛んだ部分はありつつ、若宮が真実自分を助けられる相手を求めて雪哉を試し、ぼんくらがそれに応えたのは間違いない。
 過重な仕事を押し付けられつつ、自力でこなして汚い横道にそれなかったのは、金烏側近という立場が生み出す絶大な権力に飲まれない、清廉な人格を示している。
 自分の宿命がどんだけ人間性を汚すのか、色々キッツい体験してそうな若宮にとって、身近に置くには実務能力以上に人徳が大事…なのだろう。
 ここら辺の潔癖性が、権力中枢に群がる魑魅魍魎をいとい、その外側に仲間を探す理由にもなっていそうだ。
 いやまぁ、クズ追い出すのにクズ使える道理もないから、当然の流れではあるんだけど。

 

 婚姻と儀礼で雁字搦めに形を整え、堅苦しい外装に腐った欲望を詰め込んだ山内のシステムにおいて、出世するのはその毒を飲み干し、自身が毒となるクズばかりだ。
 ゴミばっかりが偉くなり、しぶとく生き延びるシステムを変えるとなれば、現状に適応した毒性生物どもは理想の清さに窒息しないよう、取れる手段全てを駆使して『美しい世界』を維持しようとするだろう。
 若宮排除に襲いかかった暗殺者と、彼を絡め取るべく四家から選ばれた美しい姫君たちは、同じ地獄の裏表。
 そこでは一個人の夢や願いなど、たやすく踏みにじられ微塵に砕かれていく。
 御簾を暴かれた現金烏の哀れさは、姫君たちの未来を示しているかもしれない。

 親にあんだけの所業ぶっこむわけだから、四家システムの尖兵として送り込まれた美しい姫君たちに、若宮が心動かされないのもまぁ納得ではあって。
 本来一個人としての恋情や慈しみを、育みながら紡がれるべき恋の綾糸は、こと権力中枢においては家と家の融和…あるいは衝突を駆動させる手段でしかない。
 甘っちょろい情だの思いだのを横に押しのけドブに沈め、婚礼によって天皇血縁となったイエに権勢をもたらす、現世利益のパイプラインとして、姫達の美貌と胎は黒い期待を寄せられている。
 …ここら辺の生臭さ、マージで若宮嫌ってそうだな。
 シンプルで直接的な分、暴力のほうが相性良さそう。

 姫たちの方もここら辺の生臭さを、腹に収めた上でキャッキャしとるのか、なーんも知らないおぼこちゃんのまんま蛇の巣に送り込まれてきたのか。
 それによって、次代の加害者であるか被害者かも分かれてくるわけだが、まだまだ笑顔の奥は見通しきれないからなあ……。
 今回若宮に向いた、秘めたる内面を明かしていくミステリの面白さが、姫たちに向いた時また面白くなりそう。
 なんだが山内の腐れ具合が暴かれてきて、『実は優しい子だったのッ♥』つう暴露より、どんだけの地獄秘めてたか、致死性の毒がぶっ放されそうで怖くはある。
 いやまぁ、その糖衣で覆ったロクでもなさを愉しみに、このアニメ食べてもいるのだが。

 

 ぼんくらを装いつつ、家族と故郷を強く思い世間に負けぬようツッパってきた雪哉は、うつけ顔の奥に苛烈と清廉を秘めた若宮の気性と、確かに相性が良さそうだ。
 敵の多い風雲児を間近に支える若き志士として、今後雪哉の宮廷無双が描かれるのか。
 どう話が動くにしろ、引き気味に障子の向こうに隠していた身体を、生身の若宮が見える庭へと乗り出す形で、雪哉は若宮側に運命を預けた。

 この引っ張り出され方は、激情のあまり御簾に神秘性を隠す皇ではなく、屈辱に震える一個人になってしまった現金烏の逆打ちだ。

 個人と個人の心地よい繋がりが運命を動かすのは痛快であると同時に、若宮は実の父を雪哉と同じ期待感で見てないと 切なくさみしくもなる。
 欲と業が煮立った権力のド真ん中、グラグラ揺れながらなんとか生き延びてきたと年経た傀儡に、世界を変えうる大望を共に駆けていく期待は、当然寄せられないだろう。
 しかし旧い時代の象徴を苛烈に追い出すにしても、確かにやり方ってのはあったはずで、しかし若宮は穏当で遠回りなやり口を選ばない。
 その湿って隠微なスタイルは、それこそ彼が嫌悪する旧いやり方であるし、彼自身の実直な気質にも合わないのだろう。
 主役たちを結び合わせるむき出しの正しさ、新たな時代を求める思いの強さが、何を引き裂き傷つけるのか。
 そこもちゃんと書いているのは、世界と人のあり方をちゃんと見る視線だろう。

 

 今後雪哉と若宮は、手に手を取って時代を変え、現金烏のような惨めな犠牲者を数多生み出していくだろう。
 腐ったシステムを変える大きな使命の前には、そういう木端共の無惨は必要経費…改革のスカッと感を盛り上げるための良い薪だ。
 しかしそこで震える個人の感情を、あえてしっかり変えてきたことに、ただ改革者が世界を変えて終わりではない、複雑怪奇な人間の業を見つめる視線を、僕は受け取った。
 主役たちの快進撃に、踏みにじられる者たちにも惨めな痛みが確かにあり、それは時に全てを殺しうる毒になる。

 さてそんなカルマを、意に介せず高く飛ぶか、噛み砕いて飲み干すか、呪われて死ぬか。
 どうとも読み切れなくて、烏達の行く先が愉しみだ。

 

 

・追記 人ならざるものしか人を統べれないが、人は人にしかなれないし、人にしか理解が及ばない。

 

ガールズバンドクライ:第4話『感謝(驚) 』感想ツイートまとめ

 ガールズバンドクライ 第4話を見る。

 鮮烈なデビューを果たした”新川崎(仮)”であったが、人にはそれぞれ事情というものがある。
 祈りと呪いの間で引き裂かれそうになりながら、なんとか立ってる難しさを、人生アクセルしか踏まない正論モンスターが学んでいくすばるちゃん回である。
 相変わらずパワー全開で状況を引っ掻き回し、事情を斟酌せず突っ走る仁菜が元気でウゼーが、だからこそ生まれる力強さと可愛げが何を生み出していくのか、改めて確かめれるエピソードになった。
 やっぱ桃香さんの後方姉ッ面が、暴走超特急を肯定的に見るためのスポットライトとして、有効に機能している感じだなぁ…。

 初ステージに浮かれ倒す仁菜は、すばるの脱退騒動にいちいち動揺し、自分の思いを叩きつけ、他人を振り回して突っ走る…つまりは子どもだ。
 バンドとしても人間としても経験値が太い桃香さんにとっては、”よくある事”なアレソレが仁菜には新鮮で、耐性もなく動揺し、だからこそ上手く乗りこなすのではなく思ったままんま生の意見が、ズバンとお出しされる。
 それは青臭くむき出しで、配慮と嘘がないからこそ力強く、ロックンロールを発火させていく一番プレーンでシンプルな燃料だ。
 そういうモンを主役が持っていると、事情ってやつに雁字搦めで、だからこそロックで弾けたいお姉さんたちと、絡めて描く回である。

 

 何事にも新鮮なリアクションを返す、素直で元気な仁菜の様子と、それを『うぜー…』という顔で見つつも微笑み楽しんでいる二人の姿が、三話構成のロック爆弾を正面から受け止めた後に、心地よく響く。
 仁菜が突っ込んで二人が見守る、”新川崎(仮)”の基本姿勢は、暴走ばっかの正論モンスターから力強い真っ直ぐさだけを取り出して、肯定する姿勢を僕らに伝えてくれる。
 仁菜を仁菜らしく暴れさせたまま、その余波を不快には思わせない魔法のタネとして、世慣れた二人が末っ子を愛しく見つめている様子、大人だからこそ囚われる影を仁菜が壊していく様子を積み重ねていくのは、とても有効だ。
 クセ強い仁菜のアクを抜かないまま好きになれるの、ホントデカい。

 同時にこの大暴走は力強くも当然間違っていて、仁菜はブレーキの踏み方も覚えていかなければいけない。
 フツーの青春物語で幾度もコスられた、『ありのままの自分に素直でいること』を上手く捻って、『複雑に折れ曲がった事情と情をそのまま飲み込んで、嘘っぱちの現状維持を続けること』を結論にしたのは、なかなか面白く、このアニメらしい選択だった。
 ある意味”ラブライブ!”以降のアニメだからこその展開と主人公造形というか、『既に鳴った音楽と同じフレーズ、奏でてもしょうがない』と、自作のポジションに極めて自覚的というか。
 仁菜が今学ぶべき答えとして、願いと願いが衝突する複雑さは適切で、とても面白い。

 世界が仁菜が思うほどシンプルではない事実を、メチャクチャシリアスな大問題で教えられると重すぎるわけで。
 仲良くコミカルな脱退騒動のなか、窮屈さと愛着を同時に感じているすばるちゃんの内面と重ねつつ、大人の複雑さを少し学ぶ展開はとても良かった。
 あんだけ良いデビューして即脱退なパンチもあるし、凸凹が噛み合った良い距離感を更に深めていく善さもあるしで、”第4話”に相応しい一手だったと思う。
 俺は”新川崎(仮)”の三人が既に好きになっているので、騒がしくイチャイチャしてもらえると…嬉しいッ!
 欲しい元気さと仲良しが、毎回特盛でお届けされるのは、欲しいところにタマ来てる気持ちよさがあるわな。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第4話より引用

 ノーブレーキで思いっきり突っ込む、仁菜の真っ直ぐ勝負。
 それはすばるちゃんにぶっこむ前に、桃香さんの過去へと切り込んでいく。
 二人の私的空間であるキッチンにおいて、桃香さんが隠したがっている(だから影になる)”ダイヤモンドダスト”の事情と感情。
 光と影を相手取り、二人がどういう距離感で立ち回るかが、過ぎ去った過去に当事者と今のバンド仲間がどう向き合うかを、明瞭に可視化していく。
 普段の騒がしい高速展開が鳴りを潜めて、メロウに鳴らす心理主義的描線が繊細で強靭なのは、やっぱこのアニメの強みだなーと思う。

 何気ない世間話を重ねている時はふたりとも、キッチンの明かりに照らされて、眩しく楽しく。
 そこから暗い影に逃げ込み、ギターの音で自分をごまかそうとした桃香さんへ、バンドの末っ子は真っ直ぐ踏み込む。
 上から興味本位で覗き込むポジションではなく、膝を折り曲げておずおずと、仲間だからこそ憧れだからこそちゃんと聞いておきたいと、桃香さんの陰りに共存する姿勢を見せる。

 そうして聞き届けた、終わってしまった過去は桃香さん自身が自覚しているよりもまだまだ輝いてて、青春を一緒に駆け抜けた仲間との笑顔は、思い出の中で何より眩しいままだ。
 この光は、影の中にうずくまる桃香さんの”今”からは見えにくい。
 当事者だからこそ、複雑な事情と感情が絡まるからこそ自由になれない、魂に癒着した思い出…あるいは想い。
 そこに無遠慮に切り込んで、本当の自分がどんな場所に立っているのか客観視するためのメスとして、青臭い正論モンスターはいい仕事をする。
 仁菜が踏み込み、語らせ、聞き届けたからこそ桃香さんは、クチャクチャに絡まっている自分の気持ちを見つめ直し、影の中に遠ざけて忘れようとしたズルさから、もう一度光の中に立ち直す事ができるのだ。
 その眩しさは、ただ真っ直ぐなだけじゃない屈折の若き鬼を、望ましい方向へ導くための力にもなっていく。
 この二人、結構お互い様なのだ。

 

 仁菜が溢れるパワーを正しく制御できない、暴走モンスター系主人公であるのは、二話でぶん回された川崎モーニングスターで良く解っている。
 自分を暗い場所に追いやったモノとなかなか対峙しきれず、弱くて身勝手な己とも向き合えていない未熟なボーカリストは、あくまで暗い影の中にいる。
 そっから既に抜け出して、青春の痛みから遠く大人びた姿勢で導いてくれる…ように見える桃香さんも、色々めんどくせーモノにアタマ突っ込んで、悩んでる当事者なのだと、このキッチンの語らいは上手く描く。
 そっから仁菜が引っ張り出してくれるからこそ、桃香さんは作品を支える”いい先輩”でいられるのだ。

 ここでの桃香さんの描写は、後々”ダイヤモンドダスト”と正面対峙する時への布石であり、まだまだ根治は先の傷なんだろうけど。
 頼れる先輩の奥に潜む難しさと痛さを、助けられっぱなしの仁菜がしっかり知って、同じ影を共有し送り出せる頼もしさを、バンドの末っ子がちゃんと持っていると書いたのは、今後効いてきそうな良い描写だった。
 仁菜の無遠慮な直線勝負が、時に迂回しまくりの大人に必要なのだと、暴走モンスターの強みと正しさをもう一回描いたのも、主役を好きになれる良い手筋だったと思う。
 色々問題山盛りのめんどくせー奴だが、仁菜には…仁菜だからこそ出来ることが確かにあるのだ。

 

画像は”ガールズバンドクライ”第4話より引用

 そう描いた上で、桃香さんの心に切り込んだ仁菜のスタイルが万能の解決策ではないと、すばるちゃんの事情に踏み込む物語は語っていく。
 唐突な脱退宣言に揺り動かされ、机の下の爆速タイピングで本音を隠していたところから、呼び出されてタワマンの一室。
 すばるちゃんは桃香さんとはちょっと違って、暗い場所から積極的に外に出て、大画面で自分の名前の由来、今感じていることを仁菜に曝け出してくれる。
 モノクロと天然色、過去と現在、祖母と孫、湧き上がる思いと押し付けられた嘘。
 色々違えど確かに重なって、そしてズレている思いの形を、仁菜は目を見開いて受け取る。
 こういう感受性も、確かにロックンロール・モンスターの中にあるのだ。

 家族が自分の味方になってくれなかった、むしろ率先して傷つけてきた仁菜にとって、憧憬と愛着と束縛が重なり合う家族の情景には、見知らぬ美しさがあったのだと思う。
 自分には縁遠いはずのものなのに、それは確かに嘘がない美しさを宿していて、でもそのままでは解決しない複雑さを持ってもいる。
 そういう世の中にありふれた難しさを、仁菜が自分に引き寄せて受け止められたのは、彼女がすばるちゃんのことが好きで、同じく仁菜のことが好きなドラマーが躊躇わず、自分の気持ちを伝えてくれればこそだ。
 そのための象徴装置として、綺麗で大きくてさみしいタワマンと大型ディスプレイは、大変いい仕事をしている。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第4話より引用

 お金持ちでお嬢様で有名人の孫であっても、だからこそ満たされないすばるの影に、仁菜の真っ直ぐな生き方は深く切り込む。
 お互いの事情と気持ちを、クッションに乗せてキャッチボールしたことで、仁菜は(桃香さん相手に良薬になった)自分の真っ直ぐさだけが、世界の正解ってわけでもないことを学び取っていく。

 嘘なく、ただ真っ直ぐに。
 屈折した嘘を重ねる”大人”だからこそ、仁菜の在り方に眩しさを感じているすばるちゃんが、憧れの星のように思いを伝え…ロックンロールの爆弾でなんもかんもぶっ飛ばそうとしたのを、仁菜自身が止めていく。
 そんなブレーキが今、すばると自分に必要なのだと思えたから、仁菜は大事な友だちの手を取って嘘っぱちの方へ、暗い影の中へと引っ込んでいく。
 正論モンスターらしくない、逃げた対応だ。
 でもすばるの中の祖母への思いが嘘ではないと、曝け出してくれた心の見つめて解ったなら、逃げることだって時には必要なのだ。

 この決断が、『演技をする』というすばるの現状(押し付けられた嘘っぱち)としっかり共鳴しているのが、とても良いと思う。
 押し付けられた仮面を引っ剥がして、自由に呼吸をしたいと暴れる気持ちと、その嘘を愛しく抱きしめる心は、引っ剥がしたら壊れてしまうくらい繊細に、確かに繋がっている。
 なら山盛りの嘘を貫き通して、優しく守っていくことも間違いではない。
 そう思い直して、すばるが役者として積み上げていく嘘もまた、誰かが自分の中の本当に出会うための、大事な光になっていくかもしれない。

 

 そんな風に複雑な色で明滅する世界を、バンドメンバーの影や光…それが入り交じる嘘のない気持ちを受け取る中で、仁菜は学び取る。
 ここまで3話、『こういうやつです!』と力強く描いてきたものを、あえて曲げることで変化や複雑さ、共鳴する人生を削り出していく、とても良いエピソードでした。
 いやー…確かに仁菜がモンスターなのは間違いないので、人間社会のやり方も学んで、変わってくれなきゃ困るのよ…。

 同時にあの暴走赤ちゃんが、くだらねぇしがらみ全部ぶっ飛ばして突っ走る爽快感が、作品最大武器なのも間違いない。
 ここらへんを肯定するように、すばるちゃんが底抜けの笑顔でニカーっと笑って話が終わるの、大変良かった。
 迷いも暴走も、間違いなんかじゃない。
 ロックンロールと青春を描く、作品全体を新たに照らし直すような前向きな顔は、正論モンスターと後方腕組み理解者顔が、いてくれたからこそ生まれたのだ。
 悪しざま内い草でドラムを叩いて、イイ話を濁しかねない身勝手をキャラクター自身がコミカルに指摘しぶっ壊すの、めっちゃ上手いよな…アップテンポな萌えコメディを暴走させているようで、相当テクニカル。

 

 間にデビューライブを挟み、前回Aパートと合わせて安和すばるがどんな少女なのか、仁菜と僕らに教えてくれる回でした。
 バンド仲間の過去や事情に踏み込むことで、仁菜が持ち前の暴走パワフルだけではなく、他の戦い方でロックしていく可能性が見れたのは、お話の横幅が広がってとても良かったです。
 でも大人しくまとまってしまうわけではなく、力強い爆走が作品と友達を引っ張ってくれる様子も、楽しく見届けられた。

 助けてられてばっかだった仁菜が、すばるちゃんの悩みをぶっ飛ばす手助けを確かに果たせていたことに、安堵と幸せを感じつつ、楽しい奴らの物語をもっともっと見たくなりました。
 次回も楽しみッ!

ダンジョン飯:第17話『ハーピー/キメラ』感想

 生と死、禁忌と願い、人と怪物。
 様々なモノがぶつかりあって入り交じる、人間関係の大鍋。
 そんなダンジョン征くか戻るか、人生の交錯点に生命が瞬く、”ダンジョン飯”アニメ第17話である。

 

 というわけで、1クールを費やした大冒険の結末は、ファリンを人と魔物の混ざった”狂気の魔術師”の走狗へと書き換え、その異形の手のひらを血に汚させるという、なんとも残酷な色に塗り替えられた。
 ここまでも顔を出しつつ致命的な事態にはなっていなかった、ライオスの人間下手くそっぷりがシュロー相手に最悪の発火を遂げたり、一箇所に集った3パーティーがそれぞれの道へと進み直したり、まー色々あった回である。
 ドズドズド迫力で逃げていく様子含め、キメラ・ファリンの苛烈な戦いぶり、容赦のない殺戮がライオス達の選択が何を生み出したのか、説得力ある描き方で大変良かった。
 あんだけ血みどろの怪物になってしまうと、シュローのマトモな公平さも、カブルーの正しき殺意も道理にかなったものと認めざるを得ず、ではそういうマトモさから遠いライオスの私情は全否定されるべき間違いかと言えば、そうと言い切れぬ情も滲む。
 人と魔物が混じり合ったキメラとの対峙は、何が正しく間違っているのか、狂気の迷宮で人が人として生き抜くにはどうしたらいいのか、入り交じる難しさも描く。

 ここら辺、人の間を泳ぐ器用さ、不器用さにグラデーションがある男三人が一同に集ったことで、解りやすく可視化された部分でもあろう。
 激昂したシュローに冷水を浴びせるように、『ファリンを正しく殺す』という選択肢を言語化し彼に否定させることで、ギリギリ対話を維持させるカブルーの対人視力は、そのままキメラの膂力に鎧は無意味と、不意打ちの邪魔になる金物を脱ぎ棄て急所を刺し貫く腕前に繋がってもいる。
 しかしもはや”魔”の存在であるキメラ・ファリンの生命はそこにはなく、人間を殺すのがどれだけ上手くても、魔物を打ち倒しダンジョンを踏破する力……人間下手くそなライオスが得意とする領域には、なかなか手が届かない。
 生真面目に張り詰めすぎて、眠りも食べもしなかったシュローもまた、生きて何かを掴み取る逞しさとは上手く付き合えていなくて、三者三様、様々な正しさと難しさを抱えている。
 転移の掛け軸を抜けて、人の理屈が支配する地上へと戻る者たちと、無惨な失敗に終わった旅の先に、『迷宮の主を倒し、愛する者の魂を取り戻す』という目的を見つけ突き進む者。
 その別れが近いうち、またぶつかることを人をよく見るカブルーは確信していて、ぼんやりライオスは再会の約束に、全然ピンときてない。
 そういう幕引きも、また印象的な回だった。

 

 ライオスとマルシルが禁忌と知りつつ選んだ、ファリン復活の道。
 そこには未知の力学が働いていて、火竜の肉体を素材にしたことで彼女は”狂乱の魔術師”の下僕となってしまった。
 その存在がどれだけ強力で凶暴か、死力を尽くした大決戦……そこであっけなく死んでいく連中の血しぶきが、鮮明に教える。
 1クール、その苦労も笑いも特等席で見させてもらったライオス一行に肩入れしたくなる気持ち、彼らの私情に同調する心は見てるこちらにもあるけど、あんだけ大暴れされるとカブルーの『いい加減にしろよ……』が、上から目線の正しさの押し付けだけではないことも、認めざるを得ない。
 認めた上で、怪物の中に確かに滲む愛妹の涙に剣を取り落としてしまうライオスの甘さを、彼の人間味も、また否定できない僕らも、無明ながらも面白い”ダンジョン飯”のど真ん中へと、既に引き込まれているのだろう。
 シュローやカブルーがライオスの背負う価値観や特徴を相対化することで、主役に限定されていた視点が大きく広がり、多様な決断を飲み込む迷宮の複雑さ、面白さが、一気に際立った形だ。

 シュローに見えているライオスも、ライオスに見えているシュローも、二人の間にぼんやりと立ち上がり共有されていた”現実”とは大きくズレていて、妹と想い人、方向性は違えど大事なファリンの死と蘇生を境にして、激しくぶつかっても行く。
 1クールライオスの旅路に付き合ってきた僕らとしては、シュローが耐え難くイラつく程ヘラヘラエイリアンみたいな顔で生きているわけじゃないと擁護も……いやまぁ、やっぱヤベーんだけども。
 何しろ妹が自分の決断の結果怪物に成り果てての第一声『マジかっけぇ……』だからな……。
 しかしまぁ、あの魔物マニアにも情があり人間味があり、それが世間一般の常識と噛み合いにくく、極めて伝わりにくいものだということは解っている。

 

 そしてライオスは自分がそういう、社会に馴染みきれない異物である事を心底理解は出来ていなくて、島での初めての友達と思っていた男との間にある、越えがたい断絶と摩擦を理解しないまま、ある意味甘えた共感を押し付けて跳ね返される。
 この視力の悪さは、地獄を背負って魔物と闘っているカブルーに、魔物食を勧める意味を全く理解しないまま『すっごくいい人!』と思った(思わされてしまった)在り方と重なっている。
 人間の形をしたコミュニケーション不能な魔物と、切り捨てられかねない他人から見た危うさと、魔物への”好き”を隠すことなく、結構ナイーブな感性とどっかぶっ壊れた鈍感さを無理なく共存させている自己認識の、危ういキメラ。
 そんなライオスの現状も、またこの衝突から見えてくる。

 そんなライオスこそが状況打破の鍵だと、冷静に俯瞰で睨んでいるカブルーであるけど、他人の懐に入り込むためには何でもする底知れなさは、”コミュ強”とかいう耳障りの良い長所を飛び越して、彼なりの秘めたる怪物性ですらある。
 個人的な感情を押し殺し、複雑怪奇な絡み方をする人間の感情と関係を興味深く見通して、悲惨な過去から生まれた悲願を達成するためなら、どんなことでもやってみせる。
 それはライオスとはまた別の、人と魔物……感情と理性の混ざったキメラであり、そんな彼がダンジョンに適応した魔物になれないからこそ、迷宮探索の先頭にはライオスが立っている。
 そしてそんな現実を、別に悔しい顔もせず静かに見据えて、この物語の主人公がどんな人物であり、彼が踏破していく道の先に何が待っているのか、主役ではない自分がそこにどう食い込めるのか、急所を観察し言葉の刃を突き立てるタイミングを、冷静に測っている。

 

 そんな雄体のキメラ達の複雑さに対し、シュローは強さも弱さもどこか真っ直ぐで、結構分かりやすい印象がある。
 良くも悪くも一本気、正しさと私情の間に揺られつつも”マトモ”な選択を選び取り、寝食を忘れて大願に邁進しても届かない、冒険ロマンスの主役になりきれなかった青年。
 彼はファリンとの再開に激昂し揺らぎつつ、だからこそライオスとの関係を(致命的な傷を生む太刀ではなく)拳で作り直して、マイヅル手作りの食事で魂を潤し、自分なり納得できる道へと堂々進み出していく。
 不良が河原で殴り合って解り合う、オールドスクールな友情バトルをダンジョン味に変奏したガキの喧嘩は、血みどろの惨劇(あるいはハーピー相手の激闘の真っ只中)とは思えないくらい爽やかで、実りが多い。
 クソムカつくライオスと殴り合い、結果勝てないことで、彼は過剰な精神主義に呪われ、食べなきゃ弱る生身を置いてけぼりに突っ走った過去を乗り越えていく。
 生家の地位をかさにきて振り回していた仲間にも、頭を下げれるようになる。
 『負ける=死ぬ』という魔物相手のルールが崩れて、殴り合うかからこそ解りあえ、そこから同じ釜の飯を食うことだって出来る人間の道が拓けていくのは、緊張感漂う展開の中、一筋の光に思えた。

 シュローは迷いも弱さも不器用さも人間的と言うか、解ろうとして解り会えないコミュニケーションの難しさを、体現するようなキャラだと思う。
 やり過ぎ感溢れる愛情の高まりっぷりとか、ライオスのヤバっぷりを認めた上で上手くやれなかった未熟さとか、白い魔物マニアと褐色の人間マニアに比べると、”魔物”の混合比率が少ない感じがある。
 そんな彼だからこそ、黒魔術を忌避し厳しい裁きを強いる地上のマトモさにも順応できているわけだが、果たしてそれは誰のための法であり、正しさなのか。
 死を否定し、人間の在り方が魔物と混ざって変容するこの迷宮において、長命種優位な政治力学を反映した倫理と正義は、どれだけの有効性をもっているのか。
 ここら辺は混じり合った3つの道が、一旦ダンジョンの奥と拓けた地上に分かれた後、問われ直す部分なのだろう。

 シュローもまた正しさの奴隷というわけではなく、思い詰めて視野が狭くなっていた自分をぶん殴られ、苦手意識と背中合わせ、確かにあったライオスへの友情を飲み干す素直さを、ちゃんと持っている。
 それは嘘偽りのない本当で、でもそれだけで何もかもうまくいくほど万能でもなく、混ぜ合わせてどうにか美味しく消化していくべき、ややこしい青春の食材だ。
 調理法はずいぶん荒々しくなったが、そういう子供じみた相互理解を許してくれる仲間(’パーティー)に助けられて、シュローは法を遵守しつつ私的な逃げ道を用意するという、自分だけの答えをライオスに手渡すことが出来た。
 あのある意味半端なケリの付け方は、飯も食わずに正しさに思い詰めていた時間が終わって、三食食って寝るからこそ戦える”人間”へと彼が戻ったからこそ選べる、もう一つの道だ。

 

 形や表れ方は違えど、迷宮に挑む人皆に譲れないものがあり、ぶつかったり混ざったりしながら形を変えて、新しい可能性へと繋がっていく。
 キャラを一気に増やして展開したこの数話は、そういう”ダンジョン飯”の描くべき物語を、より深く豊かに面白く料理してくれる、とても良いエピソードだった。
 臆病で手前勝手な我利我利亡者に見えるミックベルが、クロの死闘と散華を目の当たりにしてマジでパニクってるのとか、パッと見の印象以上のものが”人間”には必ずあるのだと教えてくれてて、好きな描写だ。
 マスコットに見えたクロが猛烈な闘志を剥き出しに、果敢にファリンに挑む様子とかも、色んな連中が色んな顔を持っているからこその”キメラ”な面白さを、良く描いていたと思う。
 こういう感じで、新キャラ投入して視座を増やす挑戦が意味をもってくるのは、話数重ねた物語だからこそ紡げる豊かさって感じで、やっぱ良いわな。

 そらーチルチャックもメチャクチャ文句言う、運命に導かれてのダンジョン踏破。
 『火竜を倒し、ファリンを救う』という物語開始時の大目的が最悪の形で破綻し、八方塞がりに思える状況を『”狂乱の魔術師”を倒し、ファリンを救う』という目的に書き換えて、ライオス達の旅はまだまだ続く。
 導くように、誘うように口を開けた下階への階段を進む四人を、待ち構えるものはなにか。
 新展開も、とっても愉しみですね!