イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選

 

 

・はじめに

 気づけばあっという間に大晦日、日に日に時間の流れが早くなる一年のなか、今年もたくさんのアニメを見させていただきました。
 環境や内面の変化に翻弄されつつ、ここまで楽しく見届けることが出来たのは、とても嬉しいことだなと思います。
 一年間、アニオタとしての自分自身が何を思っていたかを照らす鏡としても、今年もベストエピソード10選、させていただきます。

 集計は aninado さんにやっていただいております。ありがとうございます

 

※ルール
 ・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
 ・1作品につき上限1話。
 ・順位は付けない。

※各クール総評
 四半期ごとのベストを記載した記事は、以下のとおりです。

春暖雷鳴を伴に疾駆す -2025年1月期アニメ 総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

遊糸彼方に揺らめく -2025年4月期アニメ 総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

蟋蟀涼やかに唄う -2025年7月期アニメ 総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

泥濘に霜根立たず -2025年10月期アニメ 総評&ベストエピソード- - イマワノキワ

 

 

・空色ユーティリティ:第9話『スペシャルなバズ』

lastbreath.hatenablog.com

 『可愛い女の子にオッサンの趣味をやらせる』という、あまりに擦られすぎたフレームにまたよくあるアニメが入ったか…とナメてたら、硬軟取り混ぜたパンチの強さと、ゴルフにも女たちにも真摯な制作姿勢がこっちの頭を殴りつけた、2025一発目のアニメ弾頭。
 競技の枠組みから外れ、あくまで生涯スポーツとしてのゴルフ……あるいはスポーツの枠から飛び出したとしても様々に面白い、ゴルフという営為の面白さを、実力もゴルフに求めるものも大きく異なる三人娘を主役に、見事に描いた快作であった。

 三歳ずつ歳が開き、見えてる景色も為すべきコトも違っている三人が、それでもゴルフを通じて笑い合い、時に重い荷物を分け与え、一緒に日々を過ごしていく。
 そんなライフステージに寄り添うかけがえない趣味としてのゴルフと、モラトリアムを終えた後の日々をどう過ごしていくか、決めなければいけない少女の真剣勝負を、ここまで底抜けに楽しくゴルフに夢中になってきた物語が描くエピソードである。
 「空疎なバズに振り回され、真実の生き方に目覚める」という安楽な類型に逃げず、彩花なりゴルフを仕事にしていく意味を自分なり探り、仲間に助けてもらいながら見つけていく歩みには、ポップな見た目に似合わぬ……あるいはだからこその真摯な重さが宿って、独自の見応えがあった。
 スコアの外側にも力強く伸びていく、ゴルフを通じた/ゴルフだからこその自己実現を、高校生”ではない”彩花だからこその陰影と重さをを込めて描けたこの話には、”空色ユーティリティ”の底力が色濃く弾けている。

 

 

 

 

・全修。:第12話『全修。』

lastbreath.hatenablog.com

 アニメについて語るアニメという狭い枠で終わらず、嘘っぱちの絵空事が人生の中にある意味と、それに取り憑かれ呪われそれでも生きる価値を、奇妙で美麗な異世界転生の中に刻み込む作品であった。
 過去の傑作作画をパロディし、奇跡の力を宿す説得力に活かした文脈の演出はインパクトが大きいが、滅びゆくフィクション世界を舞台に人がメシを食べる意味、運命を書き換える意味を時にコミカルに、時に切実に描き、とても心動かされるアニメだった。
 神アニメに魂揺さぶられ、まともな生き方出来なくなっちゃった若き天才が、自分の人生を変えた運命の一作の中への冥府下りを経て、迫りくる虚無を引き裂くに足りる、恋と創作の真価を掴むまでの旅路は、本当に素晴らしかった。

 このエピソードを選ぶのは、兎にも角にも物語の総決算となるドラマの強さと、それを支えるだけの作画の暴れっぷり……が、「アニメのアニメ」であるこのお話が挑んだテーマを語るだけの資格を、力強く示しているからだ。
 このアニメ自体が異様な迫力を宿した神アニメだったからこそ、ナツ子が異常な情熱を傾けて救済に走り回る気持ちも、それが生み出した奇跡と絶望も、こちらの真に迫って届いた。
 長い旅が終わり、不思議なファンタジーを駆け抜けたからこそ手に入れた現実を生き抜く力をお土産に、現世にしっかり帰還する王道踏破も力強い。
 そしてラストカット微かに、ここまでナツ子とともに苛烈で美しい旅をともにした僕らの方に、優しくウィンクしてくれるまとめ方が、とびきりに美しく眩しい回でもある。

 

 

 

・小市民シリーズ:第22話『報い』

lastbreath.hatenablog.com

 

 かくして、獣たちの四季は幕を閉じる。
 ミステリの映像化という、どんな時でも難しい課題に誠心誠意挑み、一地方都市に押し込められるには卓越しすぎ、日常から飛翔するには尋常すぎる頭脳と、歪な性格を抱えた二人の名探偵。
 その旅路を分割二クールで描いたこのお話は、日常を飛び越え人の道を外れさせるほどの知的興奮を、ファンタジックな情景の飛躍によって描く演出が特に印象的だった。
 二人の獣は独善と業の牙を結局収めることも出来ず、真っ当で十全な”小市民”に収まれない自分たちを、他人をさんざん巻き込んだ迷い道の果てに認め、あるいは諦めて、番として三年間の終わりを過ごす。

 そこに描かれるのが幸せな恋人たちの時間ではなく、土手っ腹に恨みがぶち当たる危険な入院生活なところに、人非人が勝ち逃げして物語を終わらせることを許さなかった、米澤先生の真摯な姿勢を見て取ることもできよう。
 名探偵最大の武器たる知恵を、痛みと薬物で鈍らされて、限定された情報の中で危機を察し、過去の因縁を暴く究極の安楽椅子探偵劇……その最後。
 そこで描かれるのは犯人を暴き立てるサスペンスであり、獣が獲物の喉笛を噛みちぎる爽快であり、しかしそのどちらも、最も強く心を揺さぶるものではない。

 このエピソード……ひいてはアニメ・小市民シリーズの白眉はやはり、他人を大事にできなかった人非人達が間違えだらけの青春の果て、己の過ちに向き合い誰かを大事にできるようになる、とてもちっぽけで小市民的な勝利だ。
 全てが終わった後の日坂くんとの対峙、その後まどろみの中小佐内さんが手渡した小さな優しさにこそ、常軌を逸した青春の獣のようでいて、その実自分のあり方に怯え迷った、ごくごく普通の子供達の闘いが終わっていく。
 その極めて”小市民”的なフィナーレを、美しく静かに優しく描き切れたのは、とても幸せなアニメ化だったと思う。

 

 

 

・前橋ウィッチーズ:第10話『今日のこと、忘れても忘れないよ』

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 ”前橋ウィッチーズ”の年だったと、まぁ言ってよいと思う。
 日常から逸脱する魔法を扱いつつ、ルッキズムにバズの呪い、ヤングケアラーに性差の痛みと、極めて現実的で現代的な課題を解決……ではなく、隣り合って生きていくやり方を手探り探していく、令和の魔女っ子神話。
 そこに宿る鮮烈な問題意識は、しかしポップで可愛らしい華やかさに包まれ、彼女たちが商う花の色を宿して鮮烈だった。
 ステージ表現の力強さに後押しされ、複雑で答えが出せない課題にそれでも、彼女たちなりの答えを出そうとあがき、ちょっとずつ絆を強くし己を変えていく歩みは、奇妙だからこその豊かな魅力に満ちて、僕を強く惹きつけた。

 コンサルタントでありながらクライアントでもあった、五人が抱えたそれぞれの課題が一応の突破を果たし、よりエモエモな未来に向けて進みだそうとしたタイミングで、この話数は猛烈な横殴りをキメてくる。
 生っぽい毒と確かに活きてる痛みを宿して、それでも魔法のように綺麗な友情を衝突や言い争いや、そういうの避けようとしてもっとドツボにはまる今っぽさに翻弄されながら積み上げてきた少女たちは、その全てが奪われる瞬間を、ラストに迎える。
 その喪失がどれだけの痛みを伴い、それすらも忘れてしまう切なさに引きちぎられる体験は、異様な引力で見ている僕を作品に引き込む、最後の一発として見事に機能した。

 トンチキながら人生の問題集を一回も間違えない赤城ユイナが、一体どんな影を抱えて己の青春を歩いてきたのか。
 何を夢見、何を喪って、魔法が繋いでくれた友達を愛していたのか。
 最後の伏せ札が顕になるインパクトも最大限活かして、世界で一番大事なものが砕かれる痛みを描ききったからこそ、ここから奇跡の……否、魔法の大逆転がこのアニメらしいご都合とトホホ感でもって、最高に押し寄せるクライマックスが成立する。
 そういう構成の妙味も含めて、大変優れたエピソードである。

 

 

・New PANTY&STOCKING with GARTERBELT:第9話『昨日に向かって撃て!』

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 15年の時を経て奇跡の復活を果たしたNewパンストは、15年分年を取って無茶が出来なくなり、15年の長きに渡ってパンストを諦めなかった連中の愛と知恵が、あらゆる場面で暴れるシリーズとなった。
 15年間諦めなかった自分たちにとって、パンストとは一体何か。
 「頭の弱い金髪ビッチ」という類型を、令和の今弄ぶことの意味はなんなのか。
 あまりにもパンスト好きすぎて、戯れが出来なくなった連中の本気が山盛りたたきつけられ、多士済済な彩りの中で弾けまくるシリーズは、表現の上でもそこに込められたメッセージとしても、非常にバラエティに富んで素晴らしかった。
 TRIGGERが抱える才能が、それぞれの個性を思いっきり暴れさせるショウケースとしても面白かった作品であるが、多彩なイマジネーションとアイデアが乱舞するオムニバスとしてのぶっ飛び加減と、それを乱雑なカオスに堕させない作品への愛が、食あたりするほど元気なアニメでもあった。

 この第9話は長くはない尺の中、異様なテンポで多彩なアートが画面を飛び回り、時空と因果を越えたスケールまで話がぶっ飛び、しかし極めて”パンスト”であるという、なかなか破格の話数である。
 ”ファンタスティック・フォー”とアメコミへの異常な愛情を、超スピードなアップテンポでブン回しながら、物語は人間の枠組みを超えて秩序を守る側に立ってしまった英雄たちの悲哀と壮烈を、同時に描く。
 そしてそういうコズミック・ヒロイズムが、我らが愛すべきクソビッチにネタじゃない親和性でしっかり結びついていることを、奇妙な詩情で真っ直ぐ描く話でもある。
 俺はNewパンストを見る時、「俺達本当にパンストが好きです!」と30個のエピソード全部が叫んでいるのが本当に好きだけど、その声が一番大きくて、奇妙で、美しいのはこの話数かなと思っている。

 

 

・ぷにるはかわいいスライム:第24話『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ

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 「ぷにるがアニメになってくれて、本当に良かったなぁ……」と思える、幸せな年だった。
 色んな奇跡を乗り越え、分割二クールでアニメになった物語は、騒がしいギャグと人間性への豊かな思索と、思春期に変容していく人間と非人間のあり方について、真摯に考え抜いた意欲作となった。
 この輝きはもちろん原作由来のものだが、アニメだからこその表現に果敢に挑み、どうすれば”ぷにる”を視聴者に伝えきれるのか、アニメ制作者達が心血注いで作り上げてくれたものだ。
 実はかなり語り口が変わっている部分もあるのだが、それを選択した意図と意味をしっかり受け取ることも出来て、”アニメ化”だからこその面白さも分厚く受け取ることが出来た。
 とても、ありがたいことだ。

 この最終話は色んな話数に飛び散っていた、恋と性と成長と人間性にまつわるシリアスな重たさを、バラバラになったスライムが一つにまとまるかのようにしっかり回収し、その上で「めでてーな」なコロコロイズムへコタロー達が戻っていけるよう、優しく背中を押す。
 ヒューマニティーSFとしてのシリアスでディープな思索を強く孕みつつ、ぷにるとコタローの日々は流れ行くときの中形を変えてなお幸せであり、幸せであるように失敗ばかりの劣等生が必死こいて頑張り続ける、タフな奮戦記でもあった。
 作品が切り捨ててきた陰りを一身に背負い、ジュレが暴走させた「男/女らしさ」の凶悪は結局、ぷにるも彼女自身も引き裂くことなく、幸せな日々は続く。
 しかしその脅威があればこそ炙り出された、女の子の形を選んだ親友に思春期の冴えない少年が抱く、燃え盛る思いの激しさは、絶対に嘘ではない。
 そう噛み締めて終われるクライマックスを、しっかり編み上げてくれたことにも、僕は強く感謝している。

 

 

 

・サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと:第8話『わたしの責務』感想ツイートまとめ

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 どうもチート無双な物語との、相性が良くない。
 卓越した強さで自分のエゴを補強し、卑近な夢を叶えて悦に入るインスタントな快楽が毒に変わる厄介さに顔をしかめつつ、手に取ったこの作品はしかし、才能を持つものの悩み、それ故アンバランスな人格を抱えた苦しみを色濃く描き、少女主人公の小さな冒険を美麗に描く、極上のファンタジーでもあった。
 卓越した能力で状況を制圧する爽快感と、その対価のように生きづらさの軛に引きずり回され、かなり洒落になんない温度感で悩むモニカの描き方は、濃縮された”快”ばかりを摂取する後ろめたさを綺麗に吹き飛ばし、咀嚼しやすい緩急と起伏でもって、どっしり腰を落としたビルドゥングス・ロマンを描いてくれた。

 そこに相当にどす黒く煮凝った差別と階級の闇が長く伸び、政治劇としての凄みまで宿しているのだから、大変贅沢な作品だったと思う。
 このエピソードでスケッチされる大きな社会構造の歪みと、国家最強兵力としてそこに取り込まれつつ、一学生として青春のやり直しに挑んでいるモニカの奮戦は、親友がテロリストに成る悲愴によって強い火花を散らす。
 共に黄金の夕焼けを見つめた思い出が、極めて美麗な描線で縁取られていたからこそ、それが嘘と裏切りによって打ち砕かれ、その痛みを噛み殺してでも為すべき使命を果たす決断が、より鮮烈に燃える。
 最初はコミカルなお約束とナメてた場面緘黙症が、悲痛極まる過去と絡み合って異様に重たい主役が、それでもなお当たり前の学生として友情に学び、決意と勇気で立ち上がる、極上のオーソドックス。
 その最高潮が、とてもまぶしいエピソードである。

 

 

 

・銀河特急ミルキー☆サブウェイ:第12話『マキナ死す』

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 間違いなく、ミルキー☆サブウェイ以前/以降という線引がされるだけのインパクトを、全力で時代にブチかました作品だと思う。
 何もかもが加速する時代の最先端に追いつくべく、プロモーションの回転速度も作品自体の尺も加速と圧縮を過剰にブチ込み、驚異的な情報量をギュッと押し込んだ結果生まれた、物語的な相転移
 「短いのにハイクオリティ」でも「短いからハイクオリティ」でもない、この尺で12話のストーリーを積み上げていくからこそ生まれる独自のグルーヴと奥行きが、SNSを筆頭に様々なメディアを駆使した情報提供によって更に拡大し、驚異的な破壊力を生み出す。
 あらゆる関係性萌えを内包し、分厚い背景設定を贅沢に蕩尽し、たった三分で全てを達成しようという貪欲が、形になってしまった奇跡は、劇場版総集編と更にその先へと、当たり前のごとくその身を進めている。

 そんな怪物作品の馬力がどこから出ているかといえば、結局は作品それ自体の仕上がりという極めてシンプルかつ、達成するのは難しい物語の根源だ。
 一秒一瞬すら無駄にせず、様々な仕草や目配せに異様な量の情報を圧縮しながら、銀河系の最底辺共がそれでもどっこい生きている意味を、最後の共闘に燃え上がらせる熱量。
 名曲”ときめき★メテオストライク”の音ハメも心地よい、映像の快楽原則を一息にすすり切るような三分間は、12話それぞれにしっかり魅力がある物語を下敷きに置けばこそ、大団円に相応しい満足をしっかり届けてくれた。
 そういうお話を、この形で語り切れるという実例が出てしまった以上、この後に続く物語たちのハードルは上がり……それ故のさらなる傑作が、この綺羅星のあとに続くのだろう。
 とてもとても、楽しみだ。

 

 

 

・私を喰ベたい、ひとでなし:第12話『愛し子』

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 「結局、深夜アニメっぽい深夜アニメが好きだ」ということに、気づく一年間だった。
 どれだけ異様で異質であっても、それを語りきらなければ満足できない奇妙な力みを宿し、バロックだからこそオリジナルな、トンチキでチャーミングな作品たち。
 マジョリティにはなり得ないクセと歪さをどうしても生じさせ、それこそが己の誇るべき業なのだと堂々胸を張り、使える武器を総動員して描くべきものを描ききる、愛すべき異分子たち。
 超絶クオリティを大資本に支えられた、最初っからホームラン打つ気まんまんでバッターボックスに入ってくる恐竜たちよりも、そんなお話が血に馴染むのだと思い知らされた。

 希死念慮というタブーを作品の真ん中に据え、女の形をした存在が隠微で繊細な心を触れ合わせ、アモラルでセンシティブなテーマを真摯に、嘘なく描ききったこのお話は、そういう僕の好みを鮮明に教えてくれた、ありがたい一作だ。
 死の淵に惹かれていく引力に己を委ねつつ、しかし生きているからこそ死にたくもなる人間の不思議、祈りが呪いへ時に変わってしまう世界の不条理に、歯を食いしばって真っ向勝負を挑む。
 そんな矜持を美麗な描線、精妙な映像詩学に乗せて紡がれた、少女たちの畢竟がこの砂浜には、非常に鮮明だ。
 その湿り気と暗さが、暴かれた嘘と偽れない思いが、真っ向からぶつかってなお正しい場所に行き着けない、人生迷子たち血みどろの旅。
 そういう厄介なものに、真正面から挑む時どんな血と涙が溢れ出すのか……この話数は見事にえぐり出してくれた。
 その芳香と臭気を嗅ぐのが、やっぱり僕はとても好きなのだ。

 

 

・羅小黒戦記:第13話

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 ずっと素晴らしかった作品の、一番凄まじい話数である。
 12話かけて平穏な笑顔に満ちた、子供達の幸せな夏休みを豊かに綴っていた物語は、全てのリミッターを解除した作画力の嵐によって一気に加速し、仮想現実だからこそ描ける凄惨な死の実相へと、シャオヘイを投げ込む。
 そこで説明なく描写される異能の暗殺者の、あまりに流麗な殺しの技芸は、ここまで彼の笑顔や優しさ、年相応の甘さや愚かさを慈しんできたからこそ、あまりに悲しい。
 本来興奮の火種に成るはずの超絶アクションに、これだけの悲愴を宿して駆動させることで、生まれる生きることと死ぬこと、子供が子供であることの意味。
 それを見届けて、13話の物語が何を描いていたのか、心の深いところで理解できた。

 ストーリーの構築、ジャンルの枠組み、アクションの作り方。
 どれをとっても日本製アニメとは別の呼吸とリズムを持っていて、それが作品独自の魅力をしっかり生み出している、エキゾチックな面白さ。
 総力を振り絞って殺し合う過酷さの中、超高速で展開する濃厚な描写には、このアニメの良いところが山盛り溢れていて、同時にそれはずーっと穏やかに理知的に、殺さず話し合って共に生きる日々を綴ってきたお話を裏切ってもいる。
 そういう相反と共鳴を同時に浴びせかけて、違和感より遥かに強い納得で物語をまとめきってしまった、腕力のある最終回であった。
 海を隔てた”ここ”に、確かに表現の最前線はあるのだ。