小説
八咫烏シリーズ第8弾。 前作で結末だけが明かされた弥栄なる絶望境誕生の推移を、美しき残酷とともに綴る第二部第二巻である。 まず、「なるほどなー」という感じではあった。 男女差別、階級差別、奴隷制度、イエ制度。 血縁が約束する地位に甘んじて、私利…
八咫烏シリーズ、第二部第一作。 前回より20年の時をぶっ飛ばし、山中のディストピアと化した桃源郷をその外と中から描く物語である。 構造自体は”玉依姫””弥栄の烏”二部作と似ているが、作家としての成熟を反映してか、半分のボリュームでより効果的に対称…
八咫烏シリーズ第5作・第6作であり、第一部完結編。 ”玉依姫”を読了したところで、「続刊まで含めて一つの話だな……」と感じて読み進めたので、二冊まとめての感想を書く。 というか”玉依姫”が第一部フィナーレ直前にして、相当な変化球というか魔球だったの…
八咫烏シリーズ第4作目、今度は学園モノだッ! ……っていうのは半分くらい煙幕で、とうに学生クラスの立場にいない雪哉が陸軍士官学校テイスト漂う親衛隊養成所に潜り込み、獅子身中の虫をひねり倒しつつ味方を増やす陰謀の真ん中に立ち、三年で形が整ったと…
八咫烏シリーズ、第三段である。 山内を脅かす”猿”が顔を出し、桜花宮のシンデレラ・サスペンスだの、朝廷の権力闘争だのにうつつを抜かせていた一巻二巻の状況が、若宮が直面している危機に目をつぶったある種の贅沢だったことが解ってくる巻である。 雪哉…
八咫烏シリーズの二作目であり、前作”烏に単は似合わない”と合わせて、八咫烏シリーズへの序章となる作品。 前作で華やかに積み上げられ、冷たい名探偵の乱入によってぶち壊しにされた桜花宮限定の世界を離れ、政治の世界で若宮が何をやっているのか、とある…
20話に渡るアニメがたいそう面白かったので、原作に手を出すことにした。 放送時は極力入ってくる情報を絞り、眼の前のアニメと向き合う楽しさを大事に視聴していたので知らなかったが、この第一巻は松本清張賞を史上最年少で受賞した、和風ファンタジーミス…
(渋谷、スクランブル交差点前。街を貫く大きさで立ち昇る女優”瀬田薫”の広告を前に) 「おっす、待った~?」 「待ったよ。マジありえんのだが…って、薫くんじゃん。デカくなったなぁ…」 「そういやアンタ、高校同級だっけ?」 「あー…懐かしいなぁ、無茶苦…
刀剣乱舞の夢を見た。夢の中で、私は少女であり審神者だった。麗しい青年たちに胸をときめかせつつ、歴史の整合性など守っていたが、戦いを重ねるうちにふと恐ろしくなった。私は彼らを複数のヒトガタと認識しているが、彼らは世界をどう認識しているのか。…
「(スポットライトが灯り、舞台袖から、アコースティックギターを持った多田が出てくる)あー、どーもどーも。アンコールありがとうございます、あざーす(鼻をすする音)(ざわつく観客席。「泣いてる?」「李衣菜ちゃん泣いてる?」という声がする) あー…